64 冒険者Aさんと素朴な疑問④
あらすじ:こんがり黒こげ素材とか持ち込みNGなのです
視点:元は一流の鍛冶職人のおやっさん トウタロウ
『』:アルファさん
「(がつがつがつ)なー、トータロー。
【メイス】って作るのにそんな時間かかるのかー?」
「(もぐもぐ、ずずずっ)あん?
(ごくんっ)おお、うめえなこの蛇肉。
【メイス】だぁ? そりゃお前ぇ・・・っていうか
それをドワーフのお前ぇが聞くのかよ」
「ドワーフだからって皆が得意な訳無いだろー?
ボクは鍛冶が苦手なんだよ! えっへん!!」
「いや、逆に何で威張ってんのかわかんねえが。
ま、そりゃどうでもいいか。
そうだな、まあ【メイス】に限った話じゃねえが
全部、金属製にするかどうかで製作時間は結構変わんだよ」
「(もぐもぐもぐ)ふぇんぶ?」
ドワーフっつったら、武具や装飾の専門家として有名なんだが
まあ、全員が全員できるわけじゃねえって言われりゃ
確かにそりゃそうだな、人族だろうが何族だろうが
得意なやつも居りゃあ苦手なやつも居るわな。
こいつみたいに食っちゃ寝ばっかりのやつも居る事だしな。
「(ずずずずずずっ)お~、汁も良い出汁出てんな。
・・・あーーっとだな、武器にしろ防具にしろ
鉄製の鍛冶ってのは基本的に2種類なんだよ。
溶かした鉄材を型に流し込んで冷やし固める【鋳造】と
熱した鉄片を叩き伸ばして固める【鍛造】だな。
お前ぇでもそんぐらいは知ってるだろ?」
「・・・・・・?(もぐもぐもぐ)」
「だめだこりゃ。
ま、そこら辺の細けぇ話は、後で向こうで聞けや。
んでだな、【メイス】の頭部分は【鋳造】で作るんだけどよ。
柄の部分も鉄製にするか、木製にするかで
作る時間がかなり変わってくるんだわ。
ぶっちゃけ、木製の方が早ぇ」
「(もぐもぐ、ごっくん)だから、それが何でなんだー?」
「・・・おっと、もう汁が無くなっちまったか。
お前ぇ、食うの早ぇえんだよ!
早ぇ理由か? そりゃ簡単だ。
頭部と柄を別々に【鋳造】して、両方固まってから
接合部分に金属板貼って溶接しなきゃなんねえ。
金属ってのは冷えて固まったように見えても
時間たたねえと完全には固まらねえからな。
おまけに、せっかちになって馴染む前に動かしたら
接合した部分が簡単にポロって取れるんだぜ?
そりゃ時間もかかるってもんだ」
「あっ! そういえば。
ボク武器やで、一体型になったやつって見た事あるけど
あれって、また違うの?」
「あ? あー、頭部も柄も一緒くたになったやつか。
一体化した型に溶かした鉄材流し込んで
冷やせばできあがりってな。
ありゃ、見た目だけの大量生産品ってやつだぜ?
ただの【メイス】の形をしてるだけの鉄塊なんだよ。
重量バランスとか無視で、柄もすぐにひん曲がるし
ありゃ、職人からすれば武器とは呼びたくねぇなぁ」
「ふーん・・・じゃあ木だと何で早いのさ?」
「そりゃあ、柄を木製にした場合ってのは
金槌とか工具作るのと同じなんだよ。
固まった頭部にスポッと柄を通してから
接合部の隙間に詰め物してから金具で留めりゃあ
はい、出来上がりってな」
「なるほど!(がさがさ)
よく分からなかったけど!
なんとなく分かったよ!(ぱくっ、もぐもぐこりこり)」
「何かお前ぇにまともに説明するのが
バカバカしくなって・・・ん? そりゃ何だ?
お前ぇ、何を食ってんだ?」
「ん? コレ!?
コレは心友がさっきの蛇肉と一緒にくれたおやつだよ!
あっ、そういえばこれもトータローに渡してくれって
言われてた様なもぐもぐ(くにゅこりくにゅこり)」
「あんだと!? おい、俺にもよこせ!」
「えーーー!? もう! しょうがないなあ!!」
「何がしょうがねえんだよ、全く。
どれ(もぐもぐ、くにゅっこり)・・・んんっ?」
これは・・・砕いた軟骨か。
でけえ軟骨部分を砕いてから、素揚げ・・・か?
いや、違ぇな、軽く粉まぶして唐揚げっぽくしてんのか。
(もぐもぐもぐ、くにゅっこりくにゅっこり)
・・・うめぇなこれ、軟骨周りの身の部分も
一緒に混ぜ込んであるから、肉の旨みもしやがる。
いわゆる、噛めば噛むほど~ってやつだな。
何かわかんねぇが、多分香辛料とかも混ぜてあっから
噛んでると、ぴりっと引き締まった味もすんだよな。
アレだな、軟骨多目のつくね団子。
アレ食ってるみてぇだわ。
酒の肴にもってこいじゃねぇか。
「・・・おい、エッセン。
その袋、俺に渡せって言われてんだろ?
ほれ、こっちに寄越しな。」
「やだ!!! これはもうボクの!!!」
「・・・・・・おーおー、そうかよ。
せっかく、これに合う酒があるんだがなぁ。
そーか、そーか、それは残念だな?」
「え!?
う、うーーーー!!! ううううううーー!!!!」
「・・・そんな悩むようなもんなのか?」