60 冒険者Aさんと男三人寄れば
あらすじ:ユミネさんは、新称号【おナス小町】を獲得してしまいました!
視点:疲れたヘタレ侍 ジン・クロガネさん
『』:アルファさん
『(すたすたすた)よっしゃー、片付け終わり終わりっと~。
あれ? ゲンさんと姫さんは?』
「あ~~、アルファのにーさん、お疲れさんです。
ご隠居様は用意してもらった部屋にもう行っとりますわ。
んで、お嬢はミケのあねさんが介抱しとってくれてます。
いや~、ツリーはん! 急やったのにえらいすんまへんな。」
「(すたすた)いえいえ、既に片付けてある部屋でしたので
ゲンジロウさんはそのままお休みになりましたよ。
さすがにお疲れになったようですね。
むしろ、丁度部屋が空いておりましたし
お泊まり頂きありがとうございます(にこにこ)」
『わはは、ジンくん今日は散々こきつかって悪かったな!
宿代は俺が出すから、ゆっくり休んでってや』
「いやあ~、にーさん、さすがにこっちから押しかけて
晩飯食わせてもらっただけでも御の字なのに
そこまでして貰ったらいくらなんでも悪いですわ!!
ちゃ~んと自分達で出しますんで!!
あ、ツリーはん! すんませんついでに
明日の朝飯もお願いしたんやけど、いけますやろか?」
「ええ、今晩は食材をほとんど使っていませんし大丈夫ですよ。
朝食3人分追加ですね、承りました(にこにこ)」
ワイらも半年前にこの町へ来て、しばらくの間は
ギルド御用達の総合宿に泊まっとったんやけど
にーさんに勧められてからは、他んとこにも泊まるようなって
この【樫の木亭】にも何度かお世話になっとるんやわ。
ここは相変わらずの良き宿、良きご主人って感じやね~。
この間までは、ホテールはんの高級宿にも泊まっとったけど
ワイとかは、個人的にこっちの方が落ち着くわー。
ご隠居様もこっちへ拠点移してくれはったらよかったんやけど
今更っちゅーか、今は既にってやつやしなー。
『そーいや、ゲンさん達って
今はホテールさんとこ泊まってるんやったっけ?』
「いや、それがやね、にーさん聞いてくださいよ!
今ってゆーか、来週から役場近くの家を借りて住む事になったんですわ。
なんや町の拡張に、とりあえずで新築を4軒程建てたらしーんですけど
まだ、入居が決まっとらん空家が2軒も有るってゆーて
この間、フォックスはんがご隠居に会いに来たんですわ」
『ほう・・・・・・は? 家借りたん?』
「ええ、そうなんですわー。
入居希望が出るまで住んでもらわれへんかって相談されて
結局、格安で家を借りる事になったんですわー。
まあ、掃除なんかは、2日に1っぺんぐらいで
家政婦の人が来てくれるとは聞いとるんですけどね?」
『あーーー・・・この間フォックスくんがゆーっとったのはそれかー。
そーいえば俺も聞かれたなー。
そん時は、俺もずっとこの町におるわけやないし
家借りてもしゃーないしなーって、断ったんやったわ
そっかー、ゲンさん達にもしっかり声かけとる辺り
やっぱ、やり手やね、フォックスくんも』
「ははは、そうですね、実は私もそうなんですよ。
私が妻を連れて【フソウ】からこの町へ帰ってくる前に
兄夫妻には手紙を出していたんですが
どうやら、その時にはもう兄夫婦は役場で働いてたらしく
その経由で現状と帰還日時を知っていたそうなんですよ」
『あー、ツリーさんの兄夫婦ってゆーと、エイトちゃんの親御さんか。
確か、役場で仕事しとるのはよー見るけど
そーいや、ほとんど話したことないなー。
何か、事務的でめっさ仕事人間って印象やったし』
「そうですね。
町へ到着した時には、すでにこの建物が完成していたんです。
私は【フソウ】へは料理の修行に出ていましたので
この町では料理屋を営もうと思っていたんですが
当時、この町にはまだ一般の方向けの宿が無いという事で
これなら料理も作れるから問題ないだろう?・・・と
ゼーロさんとトロットさん、フォックスさんに頼まれまして」
『わはは、あの3人が押しかけてきたわけやな。
頼まれたっちゅーより、有無を言わせずに
勢いで押し切られたって感じなんやろーなー』
「あーーーーー、そういや、この前
町中の散策しとる時に、ご隠居様が感心しとりましたわ。
予め、拡張可能なように広めの環境を整えてから
建物を先に作って、他所や旅のお人を勧誘する方法で
町の住民を増やしとって、先見の明が有るとかなんとか」
この町って、元は開拓地やったんやろ?
大都市みたいな人口過密しやすいとこやと
有効な方法やってご隠居様から聞いたけど
そこまで見越しての事やったら
ホンマ、大したもんやな~。
「ええ、そのようですね。
王都の役場でも募集をかけているそうですし
【冒険者ギルド】へ周辺の集落に募集を通達する
{配達クエスト}も依頼してるそうですよ」
『ほーーーーーん。
やる方も、それが分かる方も、どっちもたいしたもんやな!
俺はそうゆーのはよーわからんしな。
ま、それはそうとして。
2人共、ちょいとえーもんがあるんやけど
まだ腹に入りそう?』
「お!? ワイはまだまだいけますよ、にーさん。
特定の部位使った珍味かなんかでっか?」
「うーん、私はそれほどではありませんが・・・。
せっかくですし、半分の量でご相伴に預からせて下さい」
『よっしゃよっしゃ!
そしたら2人共、ちょいまっとってや~』
(すたすたすたすた、ギーーー、バタン)
「・・・・・・なー、ツリーはん~。
気に障ったらごめんやけど、ちょっと聞かせてや。
・・・ツリーはんって再婚とか考えたりせんの~?
後妻って別に悪い事やとは思わんのやけどなー。
前妻は前妻ってことで、別に忘れる必要も無い訳やし」
「いえいえ、気にはしてないので大丈夫ですよ。(にこにこ)
・・・まあ、【フソウ】では割と普通の考え方だそうですし
こちらでもあまり変わりませんよ。
兄夫婦や周囲の人達からも散々似た様な事言われてますしね」
「あーー、こっちでもやっぱそうなんや。
みんな、ツリーはん見とったらもったいないって思うもんなあ。
確かツリーはんって、年齢はワイより少し上やろ?
でも逆に、落ち着いた雰囲気のナイスミドルって感じやし。
町の人らの反応見とる限りやったら、ツリーはんって
ご婦人方だけやのうて若い娘衆にも好かれとるしな。
正直、ちょっとええなあ、うらやましいなあとか思ったり。
・・・それやったら、何か別に理由でもあるんでっか?」
「えっ? 理由ですか? ええと・・・。
そうですね・・・・・・・?
うーーーん・・・?」
「(あっ、これひょっとしてまずかったか?)」
(ガチャッ、すたすた)
『おいお~い、ジンくん。
ツリーさんに無茶振りして困らせとんのか~?
せっかく用意したコレあげへんで』
「いえいえ、困らせられてはいませんのでご安心を。
・・・ははは。
私自身、その辺りに深く考えがあるわけではありませんので
逆に自問自答してしまったんですよ(にこにこ)」
あ、あぶなっ!?
何気にとんでもない落とし穴踏み抜いたか思ったけど
にーさんが、ええタイミングで戻ってきてくれたおかげやわ。
まあ、多分話は全部聞こえとったんやろけど
・・・まさか、にーさん出待ちしとったんやないやろな。
にしても、ええ匂いすんな~、これって調味料の匂いやろか?
「に、にーさん、それって、内臓か何かでっか?」
『ん~~~~、内臓というか心臓・・・【核】の部分やな。
剥ぎ取った後、特製のタレに漬け込んどいたんや。
それを七輪でじっくりと炙ろう思ってな!』
「・・・えっ?
モンスターの【核】って食べれるんですか?
・・・あっ、でも魚系のモンスターは食材になると
料理修行時代に聞いたことがありますね」
『せやね、魚系みたいな水生は普通に食材になるんやけど
実は蛙や蜥蜴、蛇なんかの両生のモンスターも
取れたてやったら柔らかいから食えるんやで?
まあ、取れる量がめっちゃ少ないのが問題点やな
あの大きさから取れたんって、たったこれだけなんや』
「・・・・・・あーー。
それで、今食べるんでんな?」
そりゃそうやんなー。
お嬢もまあそうやけど。
それ以上に、あのヒゲの嬢ちゃんがなあ・・・。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
(チリッ、パチパチパチ、ジュウッ)
「(もぐもぐもぐ、ごくん)・・・うん。
なるほど、独特ですけど良い香りですね。
晩御飯に食べた濃い味の蒲焼とは対照的に、タレの味は最小限。
これは・・・米の強いお酒ですか?
【米焼酎】に、たっぷりの生姜とニンニクを少々・・・。
素材の味を引き出す下処理、という事ですね?
はは、これはこれで食欲が沸く香りですよね(にこにこ)」
「(はぐっはぐっ)ひゃふがツリーはん!
よー、そこまでわかりまんなー。
ワイには(もぐもぐ)ただただ、ウマイとしかわかりまへんわ!」
『おー! ツリーさんにも認められる味なら成功やな~!
そーいや、話は変わるけど。
さっき、ツリーさん再婚せんの~とか話しとったけど
ジンくん、お妾さん貰うんやって? (にやにやにや)
この間、広場でフォウちゃんといちゃこらしとったって聞いたで?』
「んぐっ!? げーっほげっほげほっ!!!
な、なっ!? ななななななな!
いや!? ちゃいまっせ!! ちゃいますで!
ちゃうんやって!! アルファのにーさーーーん!!!」
「ふふっ、そうだったんですね。(にこにこ)
いや、遂にフォウさんもお嫁に貰われる・・・感慨深いですね。
・・・あっ、それで私に話を振ってきたんですね?」
「いや!? ちゃいますよ!?
ちょ、にーさんもツリーはんも、ホンマ堪忍してくださいよ!!
只でさえこの間、嫁はん怒らせてもうたばっかりやのに!!
あれは酔っ払いに絡まれとっただけで!!」
『(もぐもぐもぐ、ごくん)・・・あー、はいはい。
わーっとる、わーっとるで~?
絡まれただけなんやな、うんうん。(にやにやにや)』
アカン! これ以上、変な噂立てられたらえらい事になるわ!
ってゆーか、お嬢! どんだけの人にしゃべったんやろ!?
ホンマ、勘弁して欲しいわ。
ぐぬぬぬぬ、ここは何とか話そらさんと!? 何かないか!?
話逸らせたついでに、にーさんに反撃の一手とかあれば!?
・・・・・・あ! せや!!
「そ! そんなんゆーたら、ワイなんかよりも
にーさんの方こそ何で結婚せんのです~?
ええ人や、慕ってくれとる人も結構おるんでしょ~?」
(くんくん、ゴソゴソ、ガサガサ)
「・・・ふむ、それは私も知りたいですね。
冒険者の方達は私には分かりませんけど
町の市場や商店でも、アルファさんを慕ってる娘さんは
何人かいるようですよ?」
・・・あ、これってツリーはんも便乗してくれてはる?
ちょっと、予想外におもろい方向に話の流れが行ったかも?
『わはは! マジで? 俺ってモテモテやったんやな~!
そやけど、俺は冒険者であり、商人でもあるしな。
どーせ遠くない内に、また旅へ出るやろうから
町の娘っ子を嫁さんに貰うのは無理っちゅーもんやで。
好いてくれる事自体は嬉しいけどな~』
(ぷるぷるぷるぷる)
「(ふふっ)それに、見間違えでないのでしたら
そちらのお連れのお嬢さんも・・・」
(びくっ)
「アルファさんを慕ってらっしゃるように見えましたよ?
もしよければ、お聞かせ下さいよ(にこにこ)」
(びくっ、ガタタッ)
!?
ちょ、ひょっとしてツリーはんも少し酔ってはるんか!?
えらいとこ切り込んできたというか
この話の流れって、気付いてゆってはるんか!?
・・・・・・ええい!! しゃあない!
こんなに早く機会来ると思っとらんかったけど
ここは腹くくって、少しでも援護をせんと!!!
「そ、そーそー! アルファのにーさん!!
そこら辺どうなんでっかー?
お嬢をお嫁に貰ってはくれへんのですか~~?
【弁才天様】お墨付きの天才少女でっせ?
おまけに器量良しで性格も良い子なんは知ってはるでしょ?
お買い得やと思いまっせ!」
(ぐっ!)
『(ぐびぐびぐび)ぷは~~~。
あーー、お姫さんね~~。
そやな~、確かに3拍子も4拍子も揃ったええ子やん。
そんな子がホンマに好いてくれてるんやったら
そりゃ、嬉しいことには違いあらへんな』
(ぷるぷるぷるぷる)
『(ごきゅごきゅ)・・・でもやなー、だからこそや。
だからこそ、こんなダメな放蕩もんに惚れたらアカンねん』
(びくんっ)
・・・あ、やってもうたかも。
この流れはアカン、アカンって。
いや、アルファはんも
もう、わかっててやってはるやろコレ!?
ストップストップ!!!
それ以上は辞めて~~~~!!!!?
「いえいえ、ダメだなんてとんでもない。
私から見たらアルファさんは立派な方だと思いますよ。
冒険者でありながら、粗暴ではありませんし
他の冒険者の方達とは違って、老若男女問わずに
町の人達とも和やかに接してらっしゃいますし。
そういう雰囲気ってありますよね?(にこにこ)」
(ぐっ、うんうん)
おおっ! ナイスフォローでっせ! ツリーはん!!
ここは、今度こそワイが!!!
「せやせや、ワイみたいな粗暴な侍崩れでも
嫁はん貰えてるぐらいなんやし
真っ当な商人で冒険者のアルファはんやったら
問題ないと思いまっせ!?
あ、もしかして、年の差とか気にしてはるんですか?
いや、お嬢もそんなん気にしてませんって!!」
(うんうんうんうんうんうん)
『(もぐもぐ、ごくん)・・・あ、年の差かーーー。
確かに、そうゆーのもあったなあ(ぐびぐび)
いや、確かに、確かになー。
多少ならともかく、親子ほども離れた年の差ってのは
さすがにまずいやろ~?(へらへらへら)』
(ぶぶんぶぶんぶぶん、ぎろぬっ!!)
あれ!? そこ気にしてはるんやなかったんか!?
アカン、これは余計なことゆったかもしれん!!
ああっ!? そないに睨まんといてっ!!
「(ずずずっ)うん、このお茶もおいしいですね。
・・・旅をされるから町の定住者は無理。
確かにそれは当然ですね、理解できます。
はは・・・、私の場合は、妻が行者でしたので
それほど問題がありませんでしたが
それでも色々ありましたしね。」
「なー、アルファにーさん。
年の差の事は一旦置いといてやな。
お嬢が好みや無いってわけやないんやろー?
お嬢やったらまあ、行者や冒険者になったとしても
やっていける才能も度胸もあるやろし。
外の世界へも出ても、多分やってけるやろ?
にーさん的には、何や別の問題があるみたいやけど
良かったら、具体的に教えてくれまへんか~?」
(ぐっ、うんうんうん)
『(ごきゅごきゅ)せやなー。
ま、一言で言えば立場・・・立場とゆーか
立場に対する責任と義理を果たしてへんってとこやな』
「へ? ・・・立場でっか?」
(!????)
『姫さんて、あれやろ?
小っちゃい頃から、英才教育受けとって文武両道。
んで、【弁才天様】の巫女として期待されとって
政界でも既に期待されとるわけやろ?』
「ま、まあ、にーさんのゆー通り
お嬢は確かに【弁才天様】の巫女としては巫女長に
政界でも【高家衆】の幹部入りはほぼ決定事項やろね」
『せやろな。
んで、聞いた話やと、そこら辺の打診自体は既にされとって。
待って貰ってる状態で、ゲンさんに着いてきとるらしいやん?
それ放り出して自分の好きな事ばっかりってのは
そりゃ我儘ってもんやろ。
色んなとこへの義理も欠いとるし影響もでかいやろしな。』
(・・・・・)
「・・・ああ、なるほど。(にこにこ)
確かに、大人として自分の意思を主張したいのであれば
その辺りはちゃんと清算しないとダメですね。」
「あーー、そやな・・・そうやった! そうでした!!
そりゃ確かに、にーさんのゆー通りですわ。
お嬢の今の立場って、役職に着く前に
{見識広める為の留学}みたいな形で
ご隠居様に着いて来とるんでしたわ。
まあ、そのまま全部放り投げてドロンはあきまへんな」
『せやろ?
自分の意思で好き勝手したいんやったら
最低限、そこら辺にはちゃーんと貢献してやな。
期待させて、待たせた分の責任を果たしてからやろ。
その後は、まあ好きにしたらええんちゃうかな。
それこそ、冒険者でも食道楽の旅でも、個人の自由やろし』
あーーーーー、なるほど。
さすがは、アルファのにーさん。
お嬢の事、ちゃーんと気にしてくれてはったんやな。
気付いてや!? お嬢!
つまり、それって条件次第では許可してくれる。
・・・脈はあるって事なんやで?
「(にこにこ)はは、実は私にもそういう予定がありまして。
幸い、可愛い姪っ子が宿を継いでくれそうですので・・・。
いえ、どうやら単純に継ぐ以上の目標があるみたいですしね。
数年の間はあの子に教えられる事を教えて
後はあの子の目標の足がかりにして貰えればいいかな・・・と」
『わはは、そういや、エイトちゃんはノースちゃんと組んで
{打倒【ビアー】!}って野望掲げて、張り切っとったなー。
そしたら、その譲った後、ツリーさんはどうするつもりなん?』
「(にこにこ)はは、私はまた旅に出ようと思ってるんです。
今度は料理修行ではなく、ゆっくりと観光の旅ですけどね。
アルファさんから聞いた話で、他の大陸にも興味でましたし」
『お! そりゃええね!
そん時来たら【ショクドーラクの会】に伝えて貰えますかね?
俺らと一緒に旅するんであれば迎えにくるし。
一人旅がええなら、旅のサポートもやってますんで!』
(とととととと・・・・)
「(にこにこ)おや、それはありがたいですね。
その時が来ればお願いするとしますよ。
・・・さて、どうやらユミネさんも部屋へ戻られたようですし
私も軽く明日の朝食の仕込をして休ませて貰いますね。
あ、アルファさん、夜食ごちそうさまでした。
食器はこちらで片付けておきますね(カチャカチャ)」
『ほーい!
寝る前にしっかりと火の始末はしとくんで安心してなー!
それじゃツリーさんお休み~! また明日や!』
「あ、ツリーはん!
お嬢の事で気を回してもろて、えろう助かりましたわ!
ゆっくり休んでください!」
「(にこにこ)いえいえ、私も色々話できて楽しかったですよ。
では、お2人共、お休みなさい」
(すたすたすた、ギーーー、パタン)
「・・・にーさん、えらいすんませんでした。
何か小芝居させてもうたみたいで」
『(ごっきゅごっきゅ、ぷは~~)・・・へ?
俺は小芝居なんかしとらんで~。
聞かれた事に答えて、思った事を言っただけやしな。
むしろ、何か俺がでしゃばったみたいでスマンなー』
「いやいやいや!? ホンマはご隠居様も含めて
ワイらが言わんとアカン事やったのに
にーさんに任せてもうた形になって、すんませんでした!」
『わはは、まあ、俺は気にしてへんし、それでええやん。
・・・あ! ミケ、もう出てきてええで?
エッちゃんの抑えごくろーさんやったな!』
(カチャッ、ギー、パタン)
「(すーーーーっ)ぬふふ! さすがはご主人様っ!」
「(もがもが)むーーーむーーーーー!!」
「ふぁっ!?」
こ、これって【隠形の術】かいな!?
ミケのあねさん、忍者!? 忍者やったんか!?
ああ、いや、ちゃうちゃう、あねさん妖怪やったわ。
そんなことより、全然気付かんかったわ!?
姿はともかく、気配どころか声や音も完全に消せるとか
本職の忍者顔負けやん! コワッ!!!?
ってゆーか、ヒゲの嬢ちゃんは縛られとったんか!?
『まあ、お姫さんやエッちゃんらが食べたら量足らんからな。
ミケ、エッちゃん連れてく前に頼みたいんやけど
今やったらまだ、台所にツリーさんおるはずやから
(ごそごそごそ、ぽんっ)この袋の中に
残った【核】と最上級の【ガチョーンの卵】入っとるし
コレを持ってって、朝飯用に~って渡してくれるか?
きっと、明日の朝飯にうまいもん作ってくれるやろ』
「(もがもがもが)!? むーー!! むむーー!!」
「えーーー!?
ここは、ミケを誉めて甘やかせてくれる場面じゃないですか!!
ミケにはご褒美ないんですか!? ご褒美!!」
『まあ、ご褒美は明日や。
俺は今日はゲンさんの部屋行って寝るしな。
もうちょい話しときたい事もあるし。
あー、あとエッちゃん達には、コレ食わせといたらええ。
(ごそごそ)ああ、これやこれや【アヒィ肉の燻製】
この袋に入っとるのは全部食ってええからなー(ぽんっ)』
「むむむ! むーー! 仕方ないですね!!
ミケはご主人様への忠誠度がMAXな
気遣いの出来る良い女!! ですしね!!
ほら、行きますよワンコロ!!(がしっ)」
「むーーー!! むむむーーーー!!!」
(どたどたどたどた、バタン)
『わはは、賑やかなもんや。
{女三人寄れば、姦しい}ってのは
よー表したもんやなー』
「それやったら、にーさん。
男三人が寄ったら、何て表すんでっか?」
『あん? それはな{たばかる}や』




