06 冒険者Aさんと野性味溢れるお昼ご飯
あらすじ:強敵は罠にはめて囲んで物理で殴れ
視点:Dランク冒険者 ファイターLv4 マイクさん
『』:アルファさん
(ジュワワワワワ・・・・シュオオオオオーーー)
二重に巻かれていた【聖鉄紙】を剥がすと、もうもうと吹き出る蒸気。
蒸気と共にガーリックと肉の脂の合わさった香りが鼻を直撃する。
もうこれだけで強烈にお腹が減ってきた・・・!。
蒸気の向こう側に徐々に見えてくる、ボリューム満点の骨付きの肉塊。
直火で焼いた時とは明らかに違う、きれいなピンクの赤身
さらに、その赤身を包みこむ脂の層がつやつやと光り輝く。
剥がした【聖銀紙】の上では、脂や肉汁が跳ね
バチバチと拍手のような音色を奏でている。
こびり付いたタレの焦げ目からは、香ばしい匂いが漂い
溢れる涎に背を押されるように、熱々の骨付き肉にかぶりついてみる。
「(がぶっ!)あちっ・・ほふっ・・ほふっ。
(ジュワワッ)・・・・・・うまーーーっ!!!!!!?」
・・・!!?
こ・・・これが【ワイルドボア】の肉・・・。
「(むぐむぐ、ジュワアッ)噛むと肉全体から肉汁が溢れてくる!?」
「こ・・・これって【ボア】の肉なんだよな?
【ボア】なのに!(むしゃっ・・・)こんなに!!
(ジュワアアアア)柔らかくて!!!
(もぐもぐ・・・じゅるるる・・・)肉汁たっぷりなのか!?」
「ぬふふふ、肉汁だけじゃないんですよ~?
【ボア】特有の獣臭がしないのに気付きましたか?
ご主人様~、この風味は粉末の乾燥ニンニク以外にも
色々と香辛料使ってますよね?
(クンカクンカ)そしてこれは、【フソウ】の米酒ですね。
食べる前から、良い香りがふわっと突き抜けてきますね!!」
『お、やっぱわかるか?
調味用に持ってきた酒の瓶、丸々1本ぶっかけてるからなあ。
香りもそうやけど、肉も柔らかくなって2重にうまいんや。』
モンスターの【ボア】の肉と言えば、【シカー】や【ラビット】と並んで
保存食用の干し肉として冒険者の間では定番中の定番なんだけど。
筋張ってて硬いとか、ちょっと獣臭いというイメージが強い。
でも、この肉は獣臭いどころか、むしろ良い香りがする。
ニンニクってのは【フソウ】のガーリックの事だよな・・・
細かい事はわからないけど、色々な香辛料で食欲が刺激されすぎて
次から次へと涎が溢れてくる・・・と、止まらないっ!!?
・・・うん!? あれっ!? 一般的に食べてる豚とか鶏なんかだと
肉部分と脂身部分は別々って感じだけど、この肉!!?
コレは肉全体からスープみたいな濃厚な肉汁が溢れてくる。
すごい濃厚! まさに圧倒的・・・!! でも脂っぽくは無い感じ。
サラッとした舌触りで喉にスッと入っていく・・・。
肉を食べてるはずなのに濃厚なスープを飲んでるみたいだ!!
だけど、ちゃんと肉のしっかりした歯ごたえもある!! 不思議!?
「(むしゃむしゃむしゃ! ジュワワッがぶがぶがぶ)
(・・・トロロロッ)あれっ? ご主人様
このお肉の中、というか間に何か仕込みましたか?」
た・・・確かにミケニャンさんが言うように
肉の間? に何か黄色っぽいトロッとした物が入ってる。
液体でもないし、下の上でとろけて伸びるコレは??
チーズっぽい?
でも卵の黄身を濃くしたようなすっごい濃厚な味がする。
うーん・・・何かは分からないけど、口の中で肉汁と溶け合う。
噛みしめた肉に纏わり付くように絡み合って
もう口の中が凄い事になってる!!
『あーそれな、【ワイルドボアの乳】で作ったチーズに
【バジリスクの卵】と香辛料を混ぜた特製のやつなんや。
普通の料理やと、コクも風味も強すぎて使いにくいんやけど
【ワイルドボア】同士やからよう合うやろ?
あれをこう・・・
骨の周りにぐるっと交互に層になるように巻きつけて
さらに、その周りを【聖鉄紙】でくるんでな。
直火やのうて、熱々の石の上でじわっと火を通したんや。
いわゆるフソウ料理の【マンガ肉】のアレンジ版やな』
「ああ、なるほど! (がぶがぶ、ジュワッ! むぐむぐ)
どっかで(がぶがぶがぶ)食べた事あると思ったら
(じゅるるるる)アレでしたか!
・・・・・・・(ごくんっ)えっ!?」
なるほど!! 僕はどっちも聞いた事ないですけど。
凄くおいしそうな・・いや!?
絶対においしいって事はわかります!!
普通、コレだけ濃いチーズ? とか
絶対に液体と混ざらないと思うんですけど
すっごい柔らかく伸びたチーズが
口の中で熱々の濃い肉汁と溶け合って
肉の味を引きたてた上で、さらっとのどを通っていく。
口が! のどが!! 胃が!!! 満たされていく感じ。
そして、その後に突き抜けてくる旨みと香辛料の風味!!!
ガーリックと荒挽きのペッパーの風味も後を引く・・・。
「ふぁーーーーーーーーーーーー!!?? ΣΣ(゜ロ゜lll) 」
「(はぐはぐっじゅるるる)はぐはぐ! むしゃっ!?」
「(もぐジュワッもぐジュワッ)ほへ?」
「(トロッ・・むぐむぐ・・トロロッ)・・・んまーい」
とつぜんさけびだしてどうしたんですか、みけにゃんさん。
にくじる! にく! ちーず! にくじるっっっっ!!
うま、うま、たまらない、とまらない。
「【バジリスクの卵】って、前にオークションに出てた際、
1個が金貨10枚だったやつじゃないですか!!?」
「ふぁっ!?」
「き・・・きんか・・・」
「うま・・うま・・(ジュワアアッ)」
ああなるほどたまごとちーずがまざったあじだったんだ!
(むしゃっ・・・じゅるるるるるるる・・・)
だからいわかんなくまざりあうんだねすごい。
(ごくん!)さすがきんか!!(ぷはーーーーーー)
・・・き・・・きんかかぁ。
きんかはもっとこう、きらきらーってかがやくもんな。
きんかって・・・1まいがぎんか100まいぶんだったよな。
で・・・銀貨1枚は大銅貨100枚分。
ということは大銅貨10000枚!! それが10枚!!!
あ”ーーーー!? 飛んでた意識が戻ってきた感じがする。
僕達がいつもクエストで稼いでるのって
1件辺りで大銅貨数枚なんですけど・・・。
大銅貨1枚で、今拠点にしてる宿の
宿代と食費で大体3日分ぐらい。
そ、それでも同ランク帯ではまだ稼げてる方なんですけどね。
「おまけに【ワイルドボアのチーズ】も
原料の【ワイルドボアの乳】自体が入手困難で
【ドラント王国】の畜産家の・・
確か1軒の牧場だけが成功したって言う
何ヶ月も予約待ちの超希少品でしたよね!?」
「はああああ!?」
「超希少品!??」
「(むぐむぐむぐ)んま・・(じゅるるっごくん)んま・・」
『え? そうやけど?
それがどうかしたんか?』
どうかしたんか・・・じゃないですよー。
ぼくたちはいったいなにをたべてたのか。
だめだあたまがまっしろだ・・・。
「まあ、いつもの事ですね」
『せやろ?』
「「!!!??」」
「うま・・うま・・」
あ、はい。
いつもの事なんですね。
そうですか、わかりました・・・わかりませんよ。
あ、何か逆に落ち着いてきた。
あと、ケベックはさっきからある意味無反応っぽいけど
お前も意識飛んでるんだな、いいかげん戻ってきてくれ。
・・・よし! もう気にせず食べよう!!