54 冒険者Aさんとや~~まだ!
あらすじ:アルファさんのツッコミはブッチャー級の地獄突きなのでダメージが発生します
視点:町の猟師で薬師 トロットさん
『』:アルファさん
『ってな訳で山だ。』
「山だぁああああああああああ!!!!」
「・・・あ、はい、山ですね、うおっ。」
「う、うん、山なんだな。」
「・・・この流れは何じゃい?
まあ、ええ。
お前ら、もう準備はできとるんじゃよな?」
何か1人増えたようじゃが、払う報酬は変わらんしのう。
護衛もアルファと狸の嬢ちゃんがおれば問題ないじゃろうし。
・・・まあ、開拓初期の頃はともかく
今はモンスターですら麓にあんまり降りて来んようになったしのう。
大丈夫じゃろ。
『さーて、準備は完了! と言いたい所やねんけど
トロットじーさんちょっとだけ待ってなー。
サバミソとロバやんに、渡す物とやらせる事があるんやわ。』
「あん? なんじゃい。
そういう事は前もって済ませとかんか。
・・・まあいい、ワシはちょっと道の様子見てくるでな。」
(ザッザッザッザッ)
「でしたら、一応ミケが付いて行きますね。」
(すたすたすたすた)
『あいよ、すまんなー。
さて! キミらに渡すのはコレや。(パサッパサッ)』
「あ、はい、これは・・・山の・・・絵ですか? うおっ。」
「い、いや、これは多分、地図なんだな。
(きょろきょろ)・・・うん、この山の全景だと思うんだな。」
『お! すごいやんロバやん、よーわかったな。
山の形とか麓からでは分かりにくいのになー。
正解や、これはこの山の全景を大雑把に書いただけの未完成地図や。』
「う、うん、おでは山岳の高地にある村の出身だから
ちょっとは山の見方は慣れてるんだな。
ま、まあ、おでの村は岩山だったから勝手は少し違うんだども。」
『ほうほう、今度また、その辺りもじっくり聞かせてもらおかー。
んでやな、こっちの2枚目も渡しとくわ。(パサッパサッ)』
「あ、こっちは白紙? いや、何本かの線だけ? なんですね、うおっ。」
「(きょろきょろ)・・・う、うん。
こ、これも一応地図なんだと思うんだな。
さっきのは全景で、こっちのは多分拡大図だと思う。
ほ、ほとんど書き込まれてないけども、こ、この線がそこの小川で。
こっちの途切れてる所はあそこの遠くにある崖の事なんだと思うんだな。」
「えっ!? (きょろきょろ)・・・・あ、なるほど、うおっ。
確かに、この線がずっと伸びてて、そこに繋がって・・・。
という事は、この辺りが上の方の木々が開けた所? うおっ。」
『ほーーーー、いや、ロバやんマジですごいな。
山ん中の拡大図って目印少ないから、かなり分かりにくいんやけど
ホンマよーわかったなー、大したもんやわ。
んで、サバミソも理解早いとゆーかなんと言うか・・・。
うんうん、ええでええで。
これやったら問題ないやろ。
はい、これ特製のペンな。(ポンッポンッ)』
「え? あ、はい、ペン・・・ですか? 特製? うおっ。」
『せやで、特製や特製!
そんで、これは2人への課題みたいなもんやねんけどな。
今日の採取の間に、この地図を完成させてほしいんや。』
「お、おで達でこの地図を完成させるんだか? アルさん。」
「えーと、はい! そういう訓練なんですね? うおっ。」
『そうそう、そうゆー事や。
昨日言いそびれたけどな、冒険者ってのは自前で地図が作れて一人前なんや。
とゆーかやな、地図も書かれへん奴が旅なんてできんて。
採取だけやなくて、討伐とかダンジョン攻略なんかでも必要になるしなー。
自分のおる位置、向いとる方角、目測での距離感覚。
そっから部屋の大きさや全体の構図を把握したりする訳でな
そこら辺の感覚は、慣れて鍛えんと無理なんや。
たまーに勘だけで把握しとる天才くんもおるみたいやけど
ま、勘だけやったら長生きはでけんやろな。
例え、長生きできたとしても、クエストの達成率とかボロボロになる。』
「そ、そういえば、商隊では専用で地図を作る人が居たんだな。
あと、地図って言うのは高額で売り買いされる商品にもなるって
聞いた事があるんだな。」
「な、なるほど! これも冒険活動の一環なんですね! うおっ。」
(ザッザッザッザッ)
「何じゃ、アルファ、まだ終わってなかったんか?
・・・ん? ああ、なるほど、地図も作らせようって事じゃな。」
「地図ってのは冒険者に限った話じゃなく
商人や旅人にとっても必須ですしね。
それを自前で作れば訓練にもなりますし
上手く作成できた地図なら【冒険者ギルド】が買い取ってくれますから。
しかも、結構高値なんで、一石二鳥ってやつですよ! うはうはー!!」
『せやなー。
特に低ランク冒険者にとっては、地味においしい儲け方やねんな、アレ。
{地域調査}とか{地図作成}とかそういうクエストが普通にあるしな。
ちなみに【マッパー】っていう地図作成に特化した
サポート系の専用クラスがあるんやで。
成り手はめっさ少ないけどな。』
「【マッパー】ですよ!? {真っ裸ー}じゃないですよ!」
「え? あ、はい・・・・?? うおっ。」
『・・・何を盛大に滑っとんやミケ、フォローせーへんからな。
そんでやな、その特製のペンには中にインクが入っとってな。
縦に振るとインクがペン先に滲んでくるんや。
それで書き込んでいったらええわ。』
「あ! はい! うう・・・何かドキドキする!
し、失敗しないようにしなくちゃ・・・、うおっ。」
「お、おで、頭が悪いし不器用だから、こ、こういう細かいの苦手なんだな。」
「まー、予備は一杯ありますんで、失敗気にしちゃダメです!
こういうのは手本になるやり方って無いですし
むしろ、今の内にガンガン失敗して、自分なりのやり方を見つけるんですよ!」
『俺も、完成させろとは言ったけど、いきなり完成できるとは思っとらんよ。
まずは、とにもかくにも慣れやな、慣れ。
一応、今日の目的は採取やからな。
山歩きと採取ついでに、徐々にでもこっちも慣れてもらおうって事や。』
他の国ではどうか知らんが、この国では地図の作成は力を入れておらんのよな。
この町で流通してる地図も、その大半はワシらが開拓時代に作成したやつじゃし。
外から住みついたもんの方が、地図の重要さを知っとって
その作成を担ってくれとるっちゅうのは実に皮肉なもんじゃのう。
・・・それにしても、サバミソの小僧が被っとるのって・・・。
こんもり頭で、裾にヒラヒラが付いとって、あごひもで結んどるな。
アレ・・・って、よくご近所の婆さん達が被っとるアレ・・・じゃよな?




