50 冒険者Aさんとクラス変更と神様グッジョブ
あらすじ:パーティに新たな光、ロバートェがくわわった!
視点:冒険者ギルド 受付嬢 リマさん
『』:アルファさん
『・・・って事で、リッちゃん、悪いんやけど
さっきの指名依頼に、もう1人事前手続き追加してもらいたいんやけど。』
「・・・・・・まあ、手続きの精査中ですし、それは構いませんよ。
ところで、こちらからも先程のやり取りは見えてましたけど
結局、ロバートさんはどのクラスへ変更されたんですか?」
そう、手続きがあらかた終わったかと思ったら
いつの間にかアルファさんがあの子の窓口に移動してたのも。
ロバートさんが怒鳴られていたのも。
ロバートさんを巻き込んで賑やかに騒いでたのも。
その後で、こっちではなくあっちで変更手続きした事も。
ぜーんぶこちらからは見えてましたよ?
いえ、特に何か思うところがあるわけでは無いんですよ?
ええ、そうです、特に無いんです! ありませんったら。
『まあまあ、そう機嫌悪うせんといてや、リッちゃん。
これはな、まあ、今後の為にしゃーないねん。
それはそうとしてやな、ロバやんは【ポーター】にクラス変更してもらったわ。』
「別に私は機嫌悪くはないですっ。
・・・【ポーター】ですか? 珍しい。」
「いえ、珍しいって、それはこの町での話ですよ?
【ドラント王国】なんかでは人気のクラスで、どのパーティにも引っ張りだこですし。」
「そうなんですか? ミケ姉さん、うおっ。
ところで、【ポーター】ってどんなクラスなんですか? うおっ。」
「まあ、一言で言うなら{運搬人}ですね。
それ関係に特化したスキルが大半で、戦闘系のスキルはほとんど無いです。
ローは冒険者になる前は商隊で、荷運びとかをやってたそうですし
まさに適任でしょ?」
なるほど・・・【ポーター】ですか。
私もデータでしか知らないけど、確か【クラス補正】は{生命力}{力}{耐久}。
それなら、ちょっとした壁役戦士の代わりが出来そうね。
魔法使い系のサーバクンさんと組むのなら、確かに相性は悪くない・・・のかしら?
でも、そっか・・・【ドラント王国】では人気なのね。
何でなのかしら。
『何~でかってゆったら、理由は簡単やな。
何よりもスキルが便利って事や。
俺もここに拠点の再登録した時、ついでにクラス変更したんやけど
正直【レンジャー】と【ポーター】とどっちにしようか迷ったもんなー。』
「そういえばそうでしたね、ご主人様。
結局、2日間ぐらい悩んで、野外特化の【レンジャー】選ばれてましたし。」
えっ!? そうなの? 私知らなかったんだけど?
・・・・・・あっ・・・そうだわ、思い出した。
アルファさんがこの支部へ来た時って
いきなりギルド長を指名してたわよね。
知り合いだから呼んでほしいって。
手続きも全部ギルド長が行ったそうだし・・・。
そういえば{登録支部の変更}は、Cランク未満だとFランクに戻るのよね。
そして、累計ギルドポイントも0になるから
つまりは、本当に0からの再スタート。
対して、Cランク以上は・・・BランクやAランクでも、Cランクからのスタート。
だけど、累計ギルドポイントは持ち越しなのよね、確か。
その時に{クラス変更}もしたって事なのかしら?
えっ、でも{クラス変更}は、前のクラスから何一つ引き継がないはず。
【クラス補正】も【クラス専用スキル】も残らず、等しく0からの再スタートなはずよね?
・・・一体、何のクラスから変更したのかしら?
『わはは。
予想通りに疑問だらけのハテナ顔やな、リッちゃん。
何事にも例外っちゅーのはあるんやで?
例えば{クラス変更}しても【コモンスキル】は残る・・・とかなー。』
「えっ!? そうなんですか?」
「せやでー。
消えるのは【クラス補正】と【クラス専用スキル】だけ。
つまり、【コモンスキル】なんかは例外なんやなー、これが。
ま、この辺はギルドの規定書とかに載っとらん情報やし。
そもそも、{クラス変更}自体やるもんあんまりおらへんしなー。」
そ・・・そんな裏技みたいな方法があったのね、知らなかった。
・・・まあ、それをする意味自体、有るのか微妙なんだけど?
「と、ところで、アルさん。
おで、言われるがままに【ポーター】に変更してもらったけど
どんなスキルを取っていけば良いだ?」
『せやなー、【ポーター】のオススメなスキルってゆーとやな。
まあ、【マジックリュック】っていう代名詞みたいなスキルがあるでー。
そのスキルはな、{背負ってるリュック}の中に物入れると
魔法のリュックみたいに、入れた物が縮小されるんや。
実質的に積載容量が増えるようなもんやし、冒険中ではすっごい便利って訳や。
当然、【ポーター】選んだ冒険者はみんな真っ先にコレ取りたがる。
確かに、コレは便利やし、ロバやんにも取ってもらうのは間違いないんやけど
実はスキル取る時にちょっとした落とし穴があってやなー。』
「お、落とし穴?」
『なあ、ロバやん。
・・・さっき、最初の1つは【リュックガードⅠ】を取ってもらったやろ?
アレも{背負ってるリュック}に作用するスキルなんやけど
こっちの【リュックガード】系ってのはな
その名の通り、{背押っとるリュック}自体を保護してくれる。
んで、こっちは背負ってない状態での持続性があってやな。
リュックを降ろしても、規定の時間中はリュックに保護が残るんや。』
「・・・えっ?
降ろしてもという事は、アルファさん・・・もしかして?」
『おっ! さすがは俺のリッちゃんや!
やっぱ気付いたか。
さすがやな! 俺のリッちゃん!!』
「・・・どんな時でもご冗談でからかってくるアルファさんも
ある意味さすがと思いますよ?」
『えー・・・冗談ちゃうのにー。(しょぼーん)』
「? え、えっと、つまりはどういうことなんだな?」
「それはですね、ロー。
【リュックガード】系の基本的な保護効果っていうのは
{防耐}に{付与奇跡継続}なんです。
つまり、リュックの耐久度が上がって、内側・外側共に破けにくくなる上
【クラス専用スキル】でかかっている【神様の奇跡】が継続するんですよ。
・・・このスキルが無いまま【マジックリュック】系を取った場合
冒険中や冒険後にどういう結果になると思いますか?」
「・・・・・・えっと、降ろすと縮小してた効果がなくなる?」
・・・縮小されるからと、通常の積載量を超えて中に詰め込んだ積載物が
休憩や帰還後に降ろした瞬間、元に戻ってリュックが破裂・・・と。
確かにとんでもない落とし穴ね。
つまり、これはセットで取得するべきスキルという事よね。
うーん・・・ギルドで職員を10年やってても
知らない事が本当まだまだあるわね・・・。
まあ、今知っておけて良かったと前向きに考えておきましょう。
『せやな。
調子んのってホイホイ詰め込んで、帰ってから降ろしたら
リュックがみるみるパンパンなって、ボーン!! ってな。
いわゆる、ルーキー時代に経験したもんが多い笑い話ってやつや。』
「うわぁ・・・ボクだったら普通にそれやりそうです、うおっ。」
『ちなみに【リュックガード】も【マジックリュック】も
他のスキルと違って{習熟度}は無くて、性能は固定値なんや。
だから、幾ら同じスキル使ってても性能は変わらんのよ。
そんで、其々{Ⅰ}~{Ⅹ}まで、ランクで性能が決まっとる。
つまり、【リュックガードⅠ】⇒【マジックリュックⅠ】と順番に取っていけば
お互いの限度値超えんようになっとる訳や。
これ、固定値やなかったら、途中で変動してややこしい事になりそうやし。
ホンマ、神様は使用者の事考えて、上手~いこと設定してくれたって感じやな。』
「ちなみに、このスキルって上の方のランクになるとですね。
【リュックガード】は{防耐}{付与奇跡継続}の強化だけでなく
{防刃}{防火}{防水}{防風}とか、壁戦士系も真っ青な防御効果があって。
【マジックリュック】も{積載量増加}だけでなく。
{重量軽減}や{防腐}、{保温}や{保冷}とか超便利な効果だったりします。」
何それすごい。
戦闘では活躍できないかもしれないけど
冒険という分野では、それを補って余りある便利さよね。
確かに、パーティで大人気なのも頷けるわ。
でも・・・引っ張りだこという事は
ソロではキツイから、成り手が少ないって事よね?
逆に固定でパーティが決まっていて理解されているなら、その点は解消できるわね。
今度、最初からパーティ決まっている新規の冒険者登録があったら
私も勧めてみようかしら。
・・・よし! このギルドでは人気の無かったこの手のクラス。
まだ幾つもあるし、空き時間に色々調べてみよう。
もちろん、見落としがちな落とし穴も含めてね・・・。




