表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の冒険者Aさん  作者: ミの人
48/401

48 冒険者Aさんと新人受付嬢のぼやき

あらすじ:ポンッ ピコーン! テッテレー! サバミソは新たなスキルを覚えた


視点:冒険者ギルド 新人受付嬢 インディアさん

『』:アルファさん


(ザワザワ、ガヤガヤガヤ)


「インディちゃ~ん! クエストの報告に来たよ~!!」


「あ、は~~い! 今行きますね~!

 ・・・おまたせしましたぁ~~!」



わたいは・・・あたしは、インディアは、今この【ナフォード王国】で受付嬢をやってる。


自分で言うのも何だけど、客観的に見ても


今のギルドの受付では、新人のあたしが1番人気がある。


理由は簡単、冒険者って基本的に男の人が多いから。



「わあ~! ○○さん、このクエスト達成できたんですねぇ~! すっご~い!」


「えへへへ、そうだろ? インディちゃんの為に頑張ったんだぜ?」


「○○さん、ありがとうございます! じゃあ、手続きしちゃいますねぇ~!」


(ガヤガヤ「次は俺だ」「いや俺が」「お前ら押すなよ」ガヤガヤ)



本当、男の人って、単純でお手軽よね。


愛想振りまいて、甘ったるいしゃべり方で応対してればこれだもの。


今までは同期のデルタが居たし、あの目立ちたがりは相手の事なんか見てなかったから


面倒そうな冒険者は、不自然にならない程度に押し付けてたのにね。


結局、何度もミスやらかして、受付降ろされちゃってるし・・・。


でも、それでもクビにならない辺り、さすがは親御さんの強力なコネの力よね。


あ~あ・・・丁度良い隠れ蓑が無くなっちゃったせいで


デルタ目当てだった男の人達がほとんどこっちに来て、忙しいったらないわね。


それにしても、こういう媚びた態度って、女性からは当然好かれないから


普通は嫌われて、嫌がらせされたり陰口叩かれる所なんだけど・・・。



「ノ・・・ノーヴェさん、受付お願いしますわ。

 こ、これ、クエストの納品分です。」


「○○さん、お帰りなさい。(にこにこ)

 達成されたんですね、さすがです。

 今回のクエストはどうでしたか?

 お怪我もされてないようで安心しましたよ。

 ああ、すいません長々と。

 それでは、報告書を作成しますね。」


(ガヤガヤ「次は私よ」「いや私が」「あなた達押さないでよ」ガヤガヤ)



あの{さわやかなイケメンオーラ}を身に纏ってるノーヴェ先輩。


デルタが言う所の{さわメン先輩}が、正式に受付嬢・・・。


ん? 嬢は違うから・・・受付係?


とにかく、受付係になってくれたおかげで


女性冒険者からあたしへの当たりが少なく済んでるのよね。


あたしなりに感謝してますよ、{さわメン先輩}。



「なあなあ! インディちゃんってどこの出身なの?

 インディちゃんって、お洒落で都会っ子ぽいし。

 やっぱ、王都?

 そんだけ可愛かったらモテモテだったんじゃない?」


「え~~? 違いますよぅ~。

 あたしなんて、田舎者だから地味でセンスも無いですしぃ。

 全然可愛くなんて無いですよぅ。

 あ、そういえば、○○さん、この間王都に行ったんですよねぇ?

 何かオススメのお店とかあったらぁ、ぜひ教えてくれませんかぁ?」


「でへへへ、そうだなぁ、例えば~・・・。」



・・・この人達、あたしが本当にドが付く田舎の農村出身で


ず~っと、強者や権力者に媚びてきた嫌われ者だったって知ったら


どう思うのかな・・・やっぱり態度変わるのが普通よね。


あそこで、リマ先輩相手に盛り上がってるおっちゃんぐらいでしょ。


態度が変わるどころか、逆に推奨して色々コツを教えてくる変人は。


初対面に関わらず一発で見抜いてきたわよね、あのおっちゃん。


そういえば、わたいの時もそうだけど、デルタの事も一発で見抜いてたし。


最初はわたい達にアレコレ忠告してくれたんだよね。


でも、デルタは・・・あのオツムの弱いお嬢様は、それが癪に障ったんだろうね。


忠告を聞く所か、おっちゃんの悪口を広めて、結果ミスして再教育だもの。


わたいも・・・あっと、いけないいけない、気を抜くと戻っちゃうわね。


あたしも、あのおっちゃんは全く好みじゃないし、むしろ苦手だけど


忠告は忠告として聞く耳は持ってるもの。





△ △ △



△ △ △ △ △



△ △ △ △ △ △ △



『なるほどなるほど。

 なあ嬢ちゃん、猫かぶるんやったら、忠告ってゆーか

 気をつけなアカン事がいくつか有るんやけどな。』


「え~~? 何のことですかぁ?

 いきなり何ですぅ?」



何? なんなのこのおっちゃん。


世間話し出したかと思ったらいきなりすぎるでしょ。



『うんうん。

 まあ、俺は勝手にしゃべるだけやから、こっちに合わせんでもええよ。』


「はぁ~? いえ、あの、仕事の邪魔になりますので・・・。」



これは・・・面倒臭いパターンかな。


どうせ、人の気も知らないくせに、そんな事は辞めろだの、猫被るなだとか。


一方的に叱り付けて、お説教垂れて満足するタイプ。



『え~っと、まずやな、言葉にする際は口先だけの嘘は言ったら絶対アカン。

 それやってもうたら信用無くすし、周囲が敵だらけになるからな。

 これは絶対やから注意し~や~。』


「あのぅ~? すみませんが、こちらも忙しいんですのでぇ。」



ほら来た。


どうせ、この後は一銭にもならない自己満足な説教が来るんでしょ?


あーーーもう! まだ業務二日目なのについてないなあ。



『次にやな、誰にでも同じ媚び方はあかんでー。

 何種類かパターン作っといて、相手によって合わせたらええわ。

 媚ってのは、人によっては逆に怒りの導火線に火ぃつける事になりかねんしな。

 あと、会話に半分くらい本音も混ぜたったらええわ。

 その方が、ぐっと信憑性が増すし、親近感覚えてもらえるようになるで。

 一石二鳥やな!』


「・・・・・・。」



・・・あれ?


説教じゃ・・・ない?


何種類か・・・パターン・・・導火線・・・。


本音と信憑性に親近感・・・?



『そうそう、口先だけの嘘はついたらアカンって言ったけどなー。

 拒否したい、返答したくないけど、それができんって時もあるやろう。

 そういう時はやな、あやふやに誤魔化すと余計悪化する事がほとんどやから

 その事には気付かん振りして触れんと、全く違う話振ったればええ。

 時には押して、時には引きながら、上手い事うやむやにするんやで~。』


「・・・・・・・・・。」



・・・えっと・・・何でこのおっちゃん、こんなに媚び推しなの?


普通は否定してくるんじゃないの?


しかも妙に詳しいし。


それにしても・・・そうか、確かに今まではそれで何度も失敗したよね。



『勘違いしとる人間多いけどな。

 {媚び}はな、決して悪い事とちゃうで~。

 あくまでも会話や交渉を優勢に持ってく為の手段の一つなんや。

 でもやな、だからこそ、{媚び}に嘘を持ち込んだらアカンねん。

 自分が利益を得る時は、相手にも何らかの形で有益であるべきなんや。

 最低限、相手に損させたらアカン。

 ちなみに、【フソウ】では【情けは人のためならず】ってゆーてな。

 {恩}を売れば{恩}が回り回って自分に返ってくるって考え方や。

 で、それと同じ様に{害}も回り回って自分に返ってくるってな。

 まあ、そういうもんなんやなーと、心の片隅んでも残しといたらええ。』



媚びは悪くない・・・初めて言われた、そんな事。


そっか・・・会話や交渉の為の手段、そういう考え方で割り切ればいいのよね。


一方的ではなく双方に利益。


確かにそれなら罪悪感も持たなくて済むよね。


は・・・はは、何か心が少し軽くなった気がする。


・・・それにしても、このおっちゃん何者?



『おっと! 忘れとった。

 コレは実はすごく重要なこと何やけどな。』


「・・・・・・(ごくりっ)」


『媚び売るからには、仕事は手ぇぬいたらアカンで。

 周りが何思おうが何言おうがな、実績で黙らせたればええ。

 そーすれば、多少の事は笑って見逃してもらえるもんやで~。(にやりっ)』



▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽



▽ ▽ ▽ ▽ ▽



▽ ▽ ▽





・・・で、あたしはデルタと違って、表向きは媚び媚びしてるけど


仕事だけは手を抜かないで、きちっとやってきた。


仕事の細かい所は、リマ先輩やエコー先輩に聞きに行って、色々教えてもらってる。


まあ、見た目の地味さとか婚期の遅さとかは、全く見習う気はないけど


何だかんだ言っても、あの先輩達の仕事ぶりは凄いと気付かされたよね。


ただ、それはそうとして、今現在というか最近悩まされてる困った事が1つ。



(ザワザワザワ)


「おい! おっさん! お前全然役に立たねえじゃねえか!」


「そうだそうだ! インディちゃんがどうしてもっていうから連れて行ってやったけど。

 剣はまともに当てられない、ダメージも与えられない。

 オマケに敵のモンスターの攻撃は避けられないわ、防げないわ!

 ただのお荷物って言うんだよ! てめーみたいな奴はな!!」


「あ・・・う、うむ、足を引っ張ってすまない。

 今回、俺の報酬はいらないから。」


「あたりめーだろ! 散々足引っ張っておいて報酬なんざ小銅貨1枚もやるかよ!」


「ったく、{ノロマのロバ}が! もう二度と頼まれても組む事はねーよ!」



・・・これが、困った・・・いえ、困ってる事。


名前はロバートさん。


44才のおっちゃんで、登録してから、まだ2週間のFランク冒険者。


この人、デルタが応対して、前職とか、性格や能力の向き不向きとか聞かず考えずで


適当に【ファイター】で登録しちゃったらしいのよね。


それでも、何とかソロで頑張ってみたらしいけど


早ければ1週間かからずに脱出できるFランクのまま2週間経ってる点でお察しよね。


・・・で、あの困ったちゃんな同期が窓口から消えて、その担当があたしに回ってきた。


適当に登録して、その後は放置して、さらには使えないと悪口広めた結果。


{ノロマのロバ}や{役立たずのロバ}と呼ばれるFランクのおっちゃんが誕生してしまったと。


本当・・・碌な事しないわねあのお嬢様、どっちが役立たずよ。


はあ・・・困ったわ、とりあえずリマ先輩の真似で、Eランクのパーティにお願いして


臨時パーティに組み込んで貰ったけど、余計悪評が広まったかもしれない。


これは・・・困ったわ。



『せやなー、困ったなー、インちゃん。(にやにや)』


「・・・・・・。

 あっ、こんにちわぁ。

 今日はクエストの報告ですか~?」


『ええで、ええで。

 心の中で焦っても、そ知らぬ顔で別の話題を振る。

 中々うまくなったやん。(にやにや)』



おっちゃん、あなた、さっきまでリマ先輩の窓口に居ませんでしたっけ?


何さらっとこっち来て話しふってるんですか。


っていうか、心の中読まないで下さい、そういう所、本当にキモイ。


・・・それにしても、初対面でアレコレ言われた時にも思ったけど。


あたしも腹黒だ何だと言われてますが


おっちゃん程じゃないよねって、そう思いますよ。


あなた絶対悪党ですよね?


あと、インちゃんは辞めて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ▽ 並行して連載中 ▽
↓ こっちも開始しました・・・開始しちゃいました。
猟団の団長Bさん
こっちはチートや変態成分高めの傭兵稼業です。



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ