46 冒険者Aさんと指名依頼
あらすじ:薬草をそのままムシャムシャ食って怪我が即時に治るとか・・・無いです
視点:冒険者ギルド 受付嬢 リマさん
『』:アルファさん
『・・・って事で、リッちゃん。
明日ぐらいにトロットじーさんから【指名依頼】入る予定なんやけど
内容が{猟師の護衛}と{薬草採取}なんで
サバミソ連れてく為の事前手続きよろしく頼むわー。』
「えっと、アルファさん、それは・・・どちらがメインになる感じでしょうか?」
『メインは、後者の{薬草採取}やね。
だから報酬とかもそっちに合わせといてー。』
「それは・・・確か【徒弟制度】でしたよね?
それを利用されるという事でよろしいでしょうか。」
【徒弟制度】・・・有るのは一応知ってたけど・・・。
実際この支部どころか、この国で使用したのは初めてのケースじゃないかしら?
『おっ! さすがはリッちゃん、こんな制度よー知っとったね!?
うーーん! 優秀な上にべっぴんさんとか、ホンマもろ好みやで!!』
「・・・それでですね、サーバクンさん。
本来、【冒険者ギルド】の規定では、受けれるクエストのランクというのは
{現在のランクの前後1つまで}と決まってるのですが
実は2つの制度を使えば、受けることができるクエストを
{現在のランクの前後2つまで}広げることが出来るんですよ。」
「な、なるほど、そういう制度があるんですね? うおっ。」
『・・・(しょぼーん)』
「1つは【後援者制度】です。
これは、高ランクの後援者によって低ランクの冒険者を引き上げる為の制度で
低ランク側が2ランク上の依頼を受けることができます。
ですので、{報酬}も{取得できるギルドポイント}も、高ランク側に寄せられる訳です。」
「【後援者制度】というんですね、はい、覚えておきます! うおっ。」
「こちらの制度は、短期間で一気にランクを上げる事ができますので
貴族や騎士、軍人などの出身者で、高ランクの冒険者に伝手を持ってる人達に
よく使われてますね。」
「この国は特に王都の方だと、王族や貴族の影響力が大きいですしねー。
身内の箔付け等に丁度良いってわけです。
それが、いわゆる{パワーレベリング}ってやつですよ、サバミソ。」
アルファさん、また大げさにがっかりしたフリしてる。
いっつもそうやって私をからかって遊んでるのよね・・・。
そういえば、この間、アルファさんにお願いして
臨時PT組んでもらった時は、この制度を使ったのよね。
あの時のお礼は何が良いかしら。
・・・それにしても【後援者制度】に【徒弟制度】か・・・。
昔、王都で冒険者してた時にそういうのはたまに見かけたけど
私達には・・・私には全く縁がない制度だったわね。
そもそも、そういう制度があること自体
こっちでギルド職員になるまで知らなかったんだけどね。
そういう相手がいれば私も冒険者を続けていたりしたのかしら?
ふうっ・・・まあ、今更よね・・・。
『・・・・・・(じーーーー)』
「そして2つ目が【徒弟制度】ですね。
こちらは、高ランク側が2ランク下の依頼を受けることができるようになります。
ただ、{報酬}も{取得できるギルドポイント}も、低ランク側に寄せられますので
高ランク側からすれば、内容的にはかなり低くなってしまいますね。」
「・・・? 聞いてると【徒弟制度】って利点が少なくないですか? うおっ。」
「だから、こっちの制度は不人気なのだわ。
まあ、当然といえば当然なんですけどね。
ですが、今回みたいに駆け出し冒険者に実地で教えるのには向いてるんですよ。」
「な・・なるほど? んん? 何だかよく分からなくなってきました、うおっ。」
「そうですね、簡単に言いますと
序盤の過程を短縮できて報酬も多いのが【後援者制度】。
序盤の過程を鍛える事が出来て報酬が少ないのが【徒弟制度】と
覚えておけば大丈夫ですよ。」
「あっ、はい! わかりました! うおっ。」
うん、【リューグー】から来たというサーバクンさん。
素直そうだし、どうやら良い子みたいね。
アルファさん達が特に目をかけてるのも、何となく分かるかな。
「でもねサバミソ、この制度って【指名依頼】でしか出来ないんですよ。」
「あれ? そうなんですか? ミケ姉さん、うおっ。」
『せやでー。
冒険者側の都合で変則パーティを組むわけやしな。
しかも、その目的が実力以上の実績を得る為やったり、修行の為やったり。
前者はともかく、後者はな~。
極端な話、クエスト達成の是非は問うてないわけやからなー。』
「クエストの大半は、住人や商売人、貴族などの個人や
国や組織、周辺の村や町などから受けた形の{外部からの依頼}です。
その他は{指定モンスター・害獣の駆除}や{素材の納品}など
【冒険者ギルド】が情報を元に定期的に発行しているクエストもあります。
そして、{外部の依頼}というのは基本的に緊急性が高いんですよ。」
「・・・な、なるほど? うおっ。」
「まー、こう言う事ですよ、サバミソ。
{達成可能な人なら誰でも良いから早く何とかしてくれ~!}って依頼してるのに
{こっちの都合で変則パーティで挑んで無理でした、すんませ~ん}ってなったら
そりゃ依頼者もブチキレますよ。
さすがにそれはダメってもんでしょー。」
『ギルド側にも信用度ってもんがあるからなー。
だからその為に、この大陸の【冒険者ギルド】では、冒険者をランク分けして
クエストも{~ランク推奨}って、難易度と報酬でランク分けしとるんや。
ちなみに他の大陸やと、ベテランも初心者も全部一緒くたのとこもあるけどな。
・・・んで、【指名依頼】やったら、内容だけやのうて
期限や報酬なんかもかなり融通利くからなー。
そういう理由で【指名依頼】だけで出来る制度なんやな、これが。』
・・・・・・ここまでギルド側の事情を知っていて
尚且つ、ギルド側に考慮までしてくれる冒険者ってどれぐらい居るのかしらね。
元冒険者の私が言うのもどうかと思うけど
どの冒険者もそんな事お構い無しよね。
自分の勝手で、ギルド側には文句だらけの注文し放題。
そのくせ、自分の都合であっさり責任放棄するとか、本当、好き勝手しすぎ。
本来は、どちらも利用し利用される関係のはずなのだけどね。
「あ! そうそう・・・。
サバミソ、ついでに何かスキル覚えていきましょう!
登録時に1つスキルを覚えれるのだけど、すっかり忘れてましたわ。」
「えっ? スキル・・・ですか? うおっ。」




