45 冒険者Aさんと町の薬草小屋
あらすじ:ジンギスカン鍋とテムジンさんの関連性は、羊肉って事以外はほとんどないらしい
視点:町の猟師で薬師 トロットさん
『』:アルファさん
アルファのやつも変わった小僧を連れてきたもんじゃのう。
・・・小僧・・・小僧なんじゃよな?
見た目が魚じゃから、よーわからんが。
ワシもこの開拓村で長いが、魚の人? ってのは見た事がないわい。
「で? 頼んどった薬草はもう届いとるぞ。
他に何ぞ用でもあるのかのう?」
『「見学です。」』
「・・・お、おう?」
「【リューグー】から来ましたサーバクン・ミーソットといいます。
よろしくお願いします、うおっ。」
『ちなみに俺らはサバミソって呼んどるんや、トロットじーさん。
いやな、サバミソを冒険者登録したから
初心者冒険者として必須の、薬草の種類と使い方を簡単に教えとこうと思ってな。』
「・・・えっと、必須なんですね、うおっ。」
「むふふ、サバミソ~、あなた今少しだけがっかりしたでしょう?」
「え? いえ、僕は冒険者のお仕事自体よくわかってませんし、うおっ。
昨日、ゼークスさんの鍛冶工房で色々見てもらってましたので
あれはいつ使うのかなとは思いましたけど、うおっ。」
「・・・あー、小僧。
サーバ・・・なんじゃったっけ、まあ、ワシもサバミソでいいじゃろ?
こういう作業が初心者冒険者に必須ってのは本当の事なんじゃ。
若い冒険者連中は、こういう作業や知識をすっ飛ばして
剣を振り回すことしか頭にないみたいじゃがのう。」
「ちなみに、サバミソ、町長がやってる雑貨屋さんで扱ってる薬草って
山で採取した物を、一旦この薬草小屋に集めてから
ちゃんと一定の効能が出るように選り分けて、束にした物なんですよ。」
「な・・なるほど! うおっ。」
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(ザッザッ、ゴリゴリゴリゴリ、ペタペタ)
「ほれ、こんな感じじゃな。
これを傷口に塗って布かなんか当てとけばええ。」
「なるほど、刻んだ薬草に水を少し混ぜてすり潰すんですね、うおっ。」
「サバミソ、屋外でこういう器具が無い場合は
洗った石同士を使って薬草をすり潰すと良いですよ。」
「そういえば、この薬草って塗って使うんですね、うおっ。
飲んだりとかはできないんですか? うおっ。」
「ほう、小僧ええとこに気付いたな。
飲んでもちゃんと効くんじゃぞ、(にやりっ)飲んでみるか?」
「えっ、飲めるんですか? ちょっと試してみたいかも、うおっ。」
「まあ、一般的な飲むタイプの【ポーション】って、この薬草が原料ですし。
飲めないことはないんですけど・・・ねえ。
ま、百聞は一見にしかずって言いますし、何事も試してみなさいな。」
(トクトクトクトク、カチャカチャ、ホワ~~~~)
「ほれ、できたぞ、薬湯じゃ。(にやにや)」
「あ、はい・・・では頂きます(ずずずずずっ)うぼっおっぼぼ!?」
「・・・ぶっ、わあっはっはっはあっは!
どうじゃ、苦いじゃろう!?」
「あばばばばば(にがー)」
『でもなサバミソ、飲んだ方が即効性があって効果は高いんやで。
特に薬湯にするとな、傷の回復が早まるだけやのうてな
体力と疲労の回復にも効果があるから
ベテラン冒険者なんかは冒険中の休憩の時にこまめに飲んどるんや。
{ハチミツ}や{果汁}なんかを混ぜると、飲みやすくなるだけやなくて
効能も上がるから、独自のレシピで作る人もおるな。」
「ご主人様は{おろしリンゴ}とか{濃縮ブランデー}とかお好きですよね。
あと、{おろし生姜}と一緒にお粥に混ぜたりもよくやりますよね。」
「薬湯はともかく、鍋に混ぜるやり方はのう。
そこら辺は、冒険者の・・・というよりは
ワシらみたいな、猟師とか山に生きる人間の知恵ってやつなんじゃよな。
ここの近辺で採れる薬草はのう、元は猪や熊みたいな獣の臭味抜きとか
山菜やキノコなんかのアク抜きに使っとったんじゃよ。
ワシも、肉とか魚とかの鍋に一緒に放り込んで、よく食ったもんじゃわい。」
「まあ、この町は別ですが、他の町なんかでよくあるパターンがありましてね。
結局、薬効が強いってことが分かって
【ポーション】の原料にもなるのが判明したらしたで
冒険者達が大量消費、そして何も考えずに乱獲しまくって群生が全滅。
やっぱり、薬草も山菜も取り尽くしちゃぁダメですよねー。」
確かにのう。
この開拓村・・・あ、いや、もう町じゃったんじゃな。
実はこの町の周辺も、昔に比べたらかなり薬草の群生地が減ってきたんじゃよなー。
山菜やキノコも減ってきておるせいか、獣も少し奥地へ行かんといかんしのう。
まあ、開拓初期の頃みたいに、ホイホイ町中へ入ってきてもらっても困るけどのう。
『ま、そこら辺も含めての、今日の見学ってとこなんやし。
実際の所、【冒険者ギルド】の{薬草採取}ってクエストはやな
{初心者向けの超定番}って言われとる。
この町やと軽視されとるせいで、不人気のクエストやけどな。』
「定番なのに不人気なんですか? うおっ。」
「クエストとしては地味ですし、他と比べると報酬も高くないですしね。」
『でもな、このクエストって{地形を覚える}って事や{旅に慣れる}には最適でな。
そっから{発見し辛い対象物の探索}に{対象物の採取}の練習ができて。
それに{採取した対象物の扱い方や保管方法}にも気を使わなアカンし
何よりも採取中には{周囲の警戒}も忘れたらアカン。
その上で{緊張しすぎない程度に緊張する事}に慣れる事ができるからな。
まさに{駆け出し冒険者}にうってつけってわけや。』
「まー、その辺りは意識してやらないと意味ないんですよね。
サバミソ、あなたは多分理解はできてると思いますけど
意味を考えながら、実地でゆっくり体験していきなさいよー。」
ふうむ・・・アルファのやつも、狸の嬢ちゃんも
よっぽどこの小僧が気に入ったんじゃな。
こんなに世話焼いとるのは見た事がないしのう。
『あ、そういや、トロットじーさん。』
「ん? なんじゃい。」
『【ポーション】って、薬草やらキノコなんかのエキスを抽出して作るやんか?
それやから、濃縮されて薬草よりも怪我の治りが早いのは分かるんやけど
体力とか疲労の回復には効果ないのは何でなんやろな。
俺は葉っぱ自体か、熱を通してないのが理由かと思っとるんやけど。』
「うーむ、ワシもそこら辺は専門外じゃから詳しくは分からんが
多分、薬草のアクというか、あの苦味の成分じゃないのか?
葉物や根菜なんかの野菜もそうじゃろ。
皮や茎の根元、根っこなんかの苦くてちょっと食べにくい部分の方が
滋養強壮とかの効果が高いし、栄養もあるようじゃしな。」
『あーーーー、なるほど。
そう言われたらそうやな。
今度、料理感覚でそこら辺も全部使って作ってみるわ。』
「おう、上手くいったらワシにも教えてくれい。」
そういや、こいつは【ポーション】作れるんじゃったのう。
・・・アルファのやつも地味に多芸じゃのう。
冒険者としては超平凡! とかぬかしとるが、ちょっと話したら
経験の豊富さに知識と技術が平凡どころじゃないのが、すぐわかるじゃろうに。
あんまり他の冒険者達からは評価されとらんようじゃが、何でじゃろうな。
「あ、そうじゃ、この間獲った鹿肉がまだ余っとるがいるか?」
『「ぜひとも!」』
お前ら、ひょっとしてそっちが目当てだった、とかじゃないじゃろうな?




