405 冒険者Aさんとアリ討伐隊 ⑤
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あらすじ:チョークアップさんは
何かに気づいてしまったようです。
視点:アリ討伐隊の副隊長の1人 アルフェルさん
『』:アルファさん
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《創世新暦1665年 前秋 第3週 水曜日》
「ふぅ…」
(ザ────)
いやいやいや。
まさかまさかのまさか…。
討伐で遠征中にシャワー浴びられるなんてね。
しかも、【結界】付きで安全な状態って
本っ当にまさかよね?
仮拠点…話としては事前に聞いてもいたわよ?
排水の関係で湯船は処分したらしいけど
それでも屋根とと衝立があって
安全にシャワーが浴びられる場所がある。
それだけでも十分すぎるわよね?
「は───っ!! 気ん持ちぃー!
ここイイっすよね!? アルフェルさん」
「ヒャ───ッ!!」
「マジでマジで!!
穴に籠りっぱなしだったから
すっごい開放感!!!」
「ははは…本当、その通り」
今、女性陣が占領してるシャワー所の他に
整地されてて設置し易いテント設営場所。
周辺も草が刈られてて見渡しは良いし
飲み水として使用できる水源もある。
前段階の調査で来てくれてた子達が
その辺りも報告書にまとめてくれてたから
拠点の再構築が凄く容易にできたのよね。
その子達に仕事ぶりに感謝だわ。
…それにしても、一応聞いてはいたけど
菜園に残り物があるのも凄く助かるわね。
個々の携帯食料なんてほとんど残ってないもの。
「おっ? これは美味そうだな」
「こ、このキノコって食べれるんです?」
「ああ、すげえ色だけど実はそれは食える。
しかも結構うまい」
「おーい! こっちにまだ結構残ってるから
こっちも採らせてもらおうぜ」
……大丈夫なの? あいつら。
採取は許可貰っているって言っても
何か壊したりしないでよ?
…私も使って初めて気づいたけど
このシャワーにしてもそう。
コレって【ビアー】にあるのと同じよね?
見た目は普通だけど性能は多分同じ。
(キュッ、カチッ、キュッ、カチッカチッ)
…うん、やっぱりそうだ。
蛇口部分を回す方向と回数で
熱さも冷たさも変えられる優れ物。
以前、自分用に欲しくて探した事あったけど
買おうと思ったら値段高いのよ、かなり。
コレってマジックアイテムの一種で
熱いだけか冷たいだけならともかく
どちらも切り替えられるのって
付与できる人が少ないって聞いたんだけど?
何でこんな所に、こんな高級品が……。
「あれ? どうかしたんすか? アルフェさん」
「あはは、何でもないわよ。
さ、もう少ししたら出るわよ?
他の人にも代わってあげないといけないし
何よりお腹減ったしね!!」
「「は~い!!」」
…うーん、町に戻ってから聞いてみよう。
案外、安く売ってもらえるかもしれないし。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
「………!」
「………っ」
「~~~!! ~~~!!」
(ガツガツ、モシャモシャ)
(ズズズズズッ、バクバクバク)
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
「はああぁぁああ~~~~!!」
「んあ~~…」
「ふひぃいい…」
「……美味しかったぁ」
は、はは……食べた食べた。
全員、思わず無口になっちゃって
ひたすら夢中で食べ続けちゃったわね。
まあ、疲れてたってのもあるんだけど
それ以上に美味しかったのは間違いない。
ここの菜園で採取した物の他にも
エクスさんが預かってたっていう
何かの調味料に漬けこまれた食材の数々。
そのまま直火で焼くか、鍋で煮れば
直ぐに食べれるって話だったんで
とりあえず人数も多いから鍋で煮たんだけど
……正直、美味すぎた…美味すぎました。
肉に野菜にキノコに、あと何か色々。
多分、食材自体も良い物だったんだとは思う。
でも、それ以上にタレが美味すぎたのよね。
この町で最近よく出回ってる、味噌だっけ?
そこに細かく刻まれた色々な何かが加えられてて
塩っ辛いよりはむしろ全体的に甘目だけど
ピリッとした香辛料がまた癖になる味で
すごく後を引くというか、食欲がモリモリ沸く。
そして、香りがまた良かったのよね…。
鍋で煮てる時から妙にお腹が空く香りで
皆、お腹グウグウ鳴らして
待ちきれなくなってたものね…。
もちろん、私も!!!
いや~~、討伐遠征に出てからというもの
まともな食事できなかったから、特にね。
まあ、準備されてた携帯食とかも
普段のよりかなり良いやつだったから
アレはアレでありがたかったんだけど…。
やっぱり、食事はこうでなくっちゃ。
…ま、ここまで待遇良いのって
今回だけかもしれないけど
それでも、王都じゃ絶対ありえないわ。
無い無い。
そう、つまりはそういう事なのよ。
この町に永住決めた私の判断は
間違ってなかったって事なのよ。
うんうん。




