39 冒険者Aさんと町の農園
あらすじ:「サバミソー! 新しいお水よ!」(ザッパーン!)
「元気100倍!「それ以上はいけない!!」
視点:農家の娘 市場では野菜の売り子 リースさん
『』:アルファさん
「お~、お帰りな~リース。
急な配達すまないな~。」
「ぜーー、はあ、はあはあ、ぜいぜぃ、はあ。」
「何故かは知らないが、今日は屋台の売り上げが好調すぎて
食材がなくなったらしくてな~。」
「っひぃ、っふぅ、ふうふうふう・・・・。」
「で、行きはともかく、何でそんな急いで帰ってきたんだい~?
うん、とりあえず、レモン水が入ってるから、この水筒を飲みなさい~。」
「あ・・ありがひっふ(ごくごくごくごくごくごくごく)ふはぁ!!」
ふう、はあ、ひい、父さん、な・・ナ~イス、タイミングぅ。
・・・ま・・・・・・間に合った!! のかな?
さすがに、つ、疲れ、た~~~~~。
足もパンパンだよ、も、もう無理、もう走れない~~。
「と、父・・・さん、ぜぃ・・あり、がとう、水筒、返すね。
そっ、それ、より・・・も、ひぃひぃ。」
「まあ、とにかく落ち着きなよ~。
何をそんなに慌てて・・・おや~?
あれはアルファさ(バビュンッ!!!!)んかね~?
・・・あやや?」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
「アルファさん! 待ってましたよ!!」
『おー、リースちゃん、さっきブリやねぇ。
相変わらずの、元気いっぱい愛嬌いっぱいさんやね!
うんうん、ええこっちゃ。
さっすが、この【コンビ農園】の看板娘っ!』
「えへへっ! ありがとうございます!(にぱー)
それで、市場で言ってた野菜なんですけど!!」
『まあ、それはチョイ待ってなー。
先に、サバミソに【コンビ農園】を軽く案内しときたいんやわ。
それからでもええやろ?』
「もちろんですよ! 良かったら私が案内しますね!(にぱー)」
「(ボソッ)チッ・・・土臭い小娘め、ガッツキすぎなんですよ。」
「(ボソッ)ハッ・・・獣臭いバーサン狸はひっこんでてくださいよ。」
この、いっつも邪魔ばかりしてくるガラの悪い害獣が
知的で優しいアルファのオジサマの従者だなんて世の中間違ってるよね。
ああっ!? 西日が当たって目を細めて口元はニヒルに笑ってる姿・・・イイ!
やっぱり、オジサマは{渋イイ}!!
同年代の男子とか浅くて浅くて・・・とてもじゃないけど比較にならないわね。
でも、友達とかに話してもこの魅力が伝わらないなんて・・・不可解だわ!!!
ま、これ以上ライバルが増えられても困るし。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
『というわけでサバミソ、この広~い農園がこの町1番の農園【コンビ農園】で
この、作業着と麦わら帽子が似合うニコニコ顔のおじさんが、園長のフックさんや。』
「何だか斬新な紹介だね~、アルファさん。
やあ~、僕はフック。
ここの農園で野菜を作ってるんだ。」
「フックさん、初めまして! 僕は【リューグー】から来ました
サーバクン・ミーソットと言います、うおっ。
よ、よろしくお願いします、うおっ。」
「はい~、よろしくね~、サーバクン君。
いや~、僕もお魚の人ってのは初めて見たよ~。」
「動じませんねー、さすがは菩薩園長。」
「サーバクン君、私は娘のリースって言います!
さっき、市場でも会ったとは思うけど、改めてよろしくね!
アルファさんは、うちの農園と懇意にしてもらってるし
困った事とか相談事があったら、サーバクン君も気軽に頼ってね!
遠慮なんか要らないんだよ?(にぱー)」
「あ、はい! リースさん、ご親切にありがとうございます、うおっ。」
『ちなみにな、サバミソ。
さっき昼飯食った屋台広場のな、ワンくんとツーくんは、フックさんの息子で
リースちゃんのお兄ちゃん達ってわけや。
ワンくんは肉料理の屋台、ツーくんは魚料理の屋台やねんけど
両方共、野菜はここの農園の物使ってるんやで。』
「・・・あっ! という事はお昼の天丼に使われていた野菜も
市場でリースさんのお店で買ってましたし
あれもここの農園の野菜なんですね?
あの緑色の野菜もお芋もタマネギもとってもおいしかったです、うおっ。」
『せやでー。
ここの野菜・・・というかやな
フックさんが世話して育てた野菜は一味も二味もちゃうんや。
完全に想定外の事やったんやけどな、
正直、この町へやってきて1番の収穫やったと思うわ。』
「あははは、そんな大げさな~。
僕はただ、少し丁寧に世話してるだけですよ~。」
「いえいえ、ご謙遜を~。
その{少し丁寧}というのが農作業では実に難しいんですよね。」
『せやせや。
少し丁寧に堆肥で土壌改善して、少し丁寧に土を耕す、少し丁寧に畝を作る。
そして、少し丁寧に種を蒔いて、少し丁寧に水をやって、少し丁寧に中耕する。
さらに、少し丁寧にわき芽を取って、少し丁寧に虫除けをする。
単純に言葉にするとそんな感じやけど、その{少しの丁寧}に
どれだけの{労力}と{時間}と{腰の痛み}を費やさなければあかんか。
ちょっとでも農業かじった事ある人間やったら
それがどんだけ大変なんかは、よーく分かりますって。』
「ふわー・・・す、すごいんですね、フックさん、うおっ。
僕は農作業はほとんどやったことが無いので、実感はありませんけど
どれだけすごいのかはなんとなく理解できます、うおっ。」
「うふふ、さすがおじ・・・げふんげふん、アルファさん!
それだけ理解して頂けてると、こちらも頑張り甲斐がありますよ!
ね? 父さん!!」
ふわー・・・、さ・す・が! オジサマ!!
冒険者の人は問題外として
町の人ですら、ほとんど理解してくれてない
農作業のキツさをアレほど理解してくれてるんだなんて!!
ああ! もう! (くねくね)ぜひとも冒険者なんて辞めちゃって
この農園に!・・・いえ! 看板娘の所に永久就職して欲しいわー!!!
「(ボソッ)考えてる事が見え見えなんですよ、このあざと娘。」
「(ボソッ)なんです? 若さに嫉妬ですか? あざと狸さん。」
「(このお二人、仲悪いんでしょうか? 何かギスギスしてるような気が)」
『じゃあ、フックさん。
手ぇ止めさせてもうてすんませんでした。
ちょい農園ぐるっと回って、借りてる農地でちょろっと収穫したら
今日はそのまま帰りますんで。』
「うん、了解だよ~。
それじゃ~・・・。」
「はい! はい! 私もご一緒します! いいですよね? 父さん!」
「え? あ~、うん~、行っておいで~。」
『そうそう、明日また牧場の方の見学へ来ますんで。
奥さんのトレートさんにもよろしゅう言っといてください。
そんじゃ、またー。』
明日もまたアルファさんが来てくれる・・・ですって!?
・・・そうだ! 明日は母さんの手伝いに行こうかな!
あっちも手が足りなくて大変そうだしね! うん、たまにはいいよね!
市場の方はまあ、他の人に任せようかな!
うん! 手伝いだし!! 仕方ないし!!!




