374 冒険者Aさんと悶える職員
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あらすじ:完璧な報告書の他に、別の報告書も
ギルド長には渡されていたようです。
視点:ひとっ風呂浴びてから帰宅した リマさん
『』:アルファさん
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《創世新暦1665年 前秋 第2週 木曜日》
◆職員寮 自室の中◆
「絶対、アレってわざとよね…」
休憩中、最後に1つ残ったおやつ。
奪って逃げるミケニャンさんを追って
派手に争うアルファさんとミケニャンさん。
その巻き添えで、なぎ倒される周囲の木々。
躊躇無くアルファさんが攻撃したものだから
皆、びっくりしちゃったわよね。
サクちゃんなんか涙目でアワアワしちゃって…。
「(クススッ)ふふっ…」
…でも、それをあっさりと避けて弾いた
ミケニャンさんも大概よね。
ま、アルファさんもそれがわかってるから
あれだけ容赦なくできるのよね、多分。
信頼? ……いえ、違うわね。
単にじゃれ合ってるだけよね、アレ。
本当にお騒がせな人達。
(カチャカチャ、コポコポコポ)
「……バレバレなのよ」
そのじゃれ合いの被害規模が大きいから
私がやらかしちゃった事なんて
些細な事……とか思えるけど。
それって絶対、印象操作してるわよね。
ミケニャンさんを利用してって所が
実にあの人らしい……。
自然に演出してるつもりなんだろうけど
本当にバレてないと思ってるのかしら?
……いえ、それも込みなのかも?
はあ…全く、どこまでも食えない人よね。
(ズズッ…、コトリ)
「ふう……うん、美味しい」
もっと草っぽいかと思ったけど
花の香りもして、後味もスッキリ。
良いお茶……お茶で良いのよね? コレ。
調査のついでに詰んでたらしくて
帰る頃にいっぱいくれたから
寮母さんにもおすそ分けしたけど…。
何の花と草なのかしらね?
ま、まあ、大丈夫よね…きっと。
サクちゃんがくれたものだしね!
「………それにしても」
例のアルファさんの飛び道具攻撃。
あんなに威力が出るものなの?
何を飛ばしたのかはわからないけど
単発で木をなぎ倒すって……。
しかもスキルで追尾してるんでしょ?
発動に溜めも要らないし、速度も速い。
単純な攻撃スキルより威力もあるし
何よりも汎用性高すぎじゃない?
この前みたいに、トリモチ玉だっけ?
それとか、丸めた投網なら捕獲もできる。
それこそ…瓶とか袋とかに詰めたら
何でもいけるんじゃ?
例えば、そういう液体や粉末使えば
目潰しでも睡眠でも毒でも麻痺でも
状態異常とか簡単に狙えるわよね?
……あっ、そう言えば。
【グラップラー】のクラスにも
【フィンガー・バレット】…だったっけ?
確か、指で小物を弾いて飛ばすスキル…。
アレでも、似た様な事できるんじゃ?
…そうよ、スキル単独では無理でも
他のスキルと組み合わせ───。
「(ブンブン)いやいやいや!?
何で私、そんな現役冒───んんっ!?」
(ジ──────ッ)
「…………りょ、寮母さん?」
「ああ、ごめんよ。
お茶のお礼にって思ったんだけどねえ…。
もちろん、ノックはしたわよ~?」
「あ、え……と」
「(ニマ~ッ)うんうん! どうやら
今日はすごい楽しめたんだねえ?
あのリマちゃんがねえ…ウフフフ。
おっとっと、ごめんね~!
お邪魔虫は退散しますからね~」
「ええっ!? いや!? ち、ちがっ…!」
(パタンッ、スタスタスタ…)
「……違う…違うんだから───」




