37 冒険者Aさんと町の服屋事情
あらすじ:ゴージャスホテルでは、ランチやディナーなどお料理だけのお客様も歓迎しております。
視点:町民の幼女 テンさん
『』:アルファさん
テンはちょっと前にとーちゃんとかあちゃんと一緒にこの町へひっこしてきた。
前にすんでたところでは、父ちゃんはもんばんのおしごとをしてたけど
今はこの町でえーへー? よくわからないけど町のちあんを守ってるっていってた。
この町は前にすんでたところよりもおもしろい。
町のおおきさは前にすんでたところよりもせまいけど
どこへいってもおもしろい、何を見てもおもしろい。
あっ! おっちゃんと耳のねーちゃんだ!
・・・お!? ・・・・おさかなだーーーーー!!!!!!!
でっかいおさかながあるいてる!!!
おさかなってあるけるんだ! 知らなかった!!
どこへ行くんだろう? あっ! お店にはいってった!
あそこは知ってるぞ! 服やさんだ!
前にとーちゃんとかーちゃんがおしごとでつかう服を作ってもらったところだ!
(ギーーー、パタン)
「いらっしゃーい、おや? お嬢ちゃんどうしたんだい?
ん? 確か・・・フォティさんとゴルフさんの娘さんだっけ?」
「服のおっちゃん! おさかな! おさかなこなかった!!!?」
「お魚? ああ、サーバクン君なら、(くいっ)ほら、そこだ。
奥でアルファさんと一緒に{吊るし}の服を見てるよ。」
「ほんとうだ! なあ、服のおっちゃん! おさかなってあるけるんだな!!」
「いや、彼はそういう種族なだけで、海に居る普通の魚は歩けないからな?」
「しゅぞく? ・・・なんかわからないけど、すげーーー! とくべつだ!!」
そっか、ふつーのおさかなはやっぱりあるけないんだな!
そうだよね! いままであるいてるの見たことないもん!!
『なんやー? えらい騒がしいけど、おっ!? テンちゃんやないか。
どした? お使いにでも来たんかー?』
「おっちゃん! おさかな! でっかいおさかな!!」
「あー、なるほど。
大方、町中でサバミソ見かけて付いてきちゃったんじゃないですか?
好奇心の塊みたいな子ですし。」
「?」
「まあ、そんなところでしょうね。
それよりアルファさん、どうでしたか?
{吊るし}の服で合いそうですか?」
『いやー、さすがに頭から被るタイプのは無理やしな。
今は俺の浴衣着せとるけど、あんな感じに羽織って
前か横で留めるやつの方がええやろ。
とりあえず、女性用のやけど薄手で横留めできる肌着があったから
あれを5枚ほどと、丁度ええジャケットが2点ほどあったから、それやなぁ。
後は新規注文で作ってもらうわー。』
「女性用のコーナーでも気にせず入っていって手に取れるご主人様!
すごいです! さすがです!!」
『やかましいわ。
んなもん堂々としてたら別に恥ずかしくも何もないやろ。
女性が着てるとかならともかく、ただの売りもんの服に照れるとかないわー。』
「あ、ところで下着とかはどうするんです?
見たところ、パンツは問題なく穿けそうですけど。」
『パンツ・・・なあ・・・・うーん・・・。
いるんかな? あいつ付いてないしなぁ。』
「まー、あの子、元々は全裸でしたしね。
最初見た時、真っ先にチ『おっと! 言わせんよ!』付いてないか確認しましたもの!」
「(すたすたすた)うおっ?
僕がどうかしましたか? アルファさん、うおっ。」
『あー、丁度ええとこに来たサバミソ。
ちょっと聞きたい事があるんやけど、ええか?』
「うわ! おさかなだ!! すっげーーー!!!」
「な、なんでしょうか? うおっ。」
『聞くの忘れとったんやけどっていうか、すっごい今更やねんけど。
お前って、トイレというか排泄物ってどうなってんの?
恥ずかしかったら俺にだけ聞こえるように耳に小声で言うてくれたらええし。』
「えっ、恥ずかしい・・・ですか? うおっ。
よくわかりませんけど、僕らの肛門ってここですよ、うおっ。」
「えっ!!? それヘソじゃなかったの!?」
『あーーーー・・・確かに魚やったら位置的にその辺になるな。』
「確かに、魚のお腹側捌く時って肛門が目印ですしね。
なるほど! そこからウ『やらせはせん!』出すとして
チ『やらせはせんぞー!』はどっかに付いてるんですか?
生殖器ですよ生殖器。」
「うんこ!? ちんこ!!? あははははは!! きったなーい!!」
『しまった! 子供がおった!! ガードが間に合わんかった!!!!』
「ふふ・・・子供って妙にウ『なんとー!?』とか、そういう言葉好きですしね。」
「あの・・・お店の中であまり連呼しないでくれませんかね?」
「あっ、それはですね、ここです、うおっ。」
『おいっ、ミケはたいがいにせえよ。
ん? え? そこ? 太もも?』
「えっとですね、『おっと! お嬢ちゃんにはまだ早いからお外に出とこうな!!』
こう・・・(めりめりめり)・・・(しゃききーん!!!)」
「な・・・!? 何だと!? 両太ももで2本・・・!?」
おっちゃーーーん!!?
何も見えないよ! 何でテンをお店の外につれだしちゃうんだよー!!
なかまはずれ!?
そうか! なかまはずれにするきだな!!
ところでにほんなのか、そうなのかー!!
(ガチャッ)
『ふうっ、危ない危ない。
危うく幼女にえらいもん見せてまう所やったわ。』
「アルファさん、勘弁してくださいよー。
色んな意味で社会的にピンチになるところだったじゃないですか。」
「・・・まあ、絵面で言えば、店に幼女を引っ張りこんで
ダブルチ『まだ言うか!』を見せつけようとしたわけですしね。」
「あ、あのー? すみません、僕何か悪い事しちゃいましたか? うおっ。」
『あーー、いや、こればっかりは習慣と言うか環境というか
文化や常識そのものが違うからしゃーない、あんまし気にせんでええよ。
えっとやな、サバミソ。
後で帰ってから詳しく説明するけど
今はとりあえず、生殖器は人前で出したらアカンって事だけ覚えておいてくれ。
店長もすまんかったなあ。』
「あ、はいっ、うおっ。」
「ええ、まあ、今後気をつけてもらえれば大丈夫ですよ。
少しびっくりというか{男の尊厳}的な意味でショックは受けましたけど。
・・・それで、どうしましょうか?」
「パンツは必要ないんじゃないですか?
長めの襦袢でも着ておけば肌着も兼ねる事できますし。
もし問題があるようでしたら腹巻でも巻いてればいいですしね。」
『せやなあ、まあ、買うてくもんは変えんでええな。
あとは、ゆったり目の麻のズボンでも3着ぐらい買うてくか。』
「了解しました。じゃあ、採寸しますので、サーバクン君は奥へ来てください。」
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▽
「それにしても、この店も2年で随分品揃えが変わりましたよねー。」
「そうなんですか?
僕、服屋って初めて見たんですが、どう変わったんです? うおっ。」
「まあ、【リューグー】は【キノト様】と【乙姫様】ぐらいしか
服着てないでしょうし、当然、全部{仕立て品}でしょうしね。」
「そうですね、2年前は普通に{仕立て品}だけの服屋でしたし。
そこから{古着}販売を行うようになって
さらに今では{吊るし}の商品まで売るようになりましたから。
・・・まあ、売上げのほとんどが{古着}か{吊るし}というのも
仕立て職人からすれば寂しいというか残念というか。」
「そーなのかー、おっちゃんざんねんなんだなー」
「そうなんですか? ところで{仕立て品}と{吊るし}というのは
どう違うんですか? うおっ。」
「それはですねー、着る人の採寸を図って、反物や生地を使い
一から縫い合わせて作り上げた服が{仕立て品}で。
不特定多数の人が着る事を前提として作った既製品の服が{吊るし}です。
まあ、{古着}もああやってハンガーに吊るして販売してるので
アレも{吊るし}の範疇内ですかね。」
『元々な{服屋}って言ったら{仕立て屋}の事なんやわ。
それは、この国は元より【フソウ】だろうが他国だろうが変わらん。
まあ、{古着屋}を指す場合もあるけどな。
基本的に{新品の服}って言ったら{仕立て品}の事を示してるんや。』
「だけど、アルファさんから、他国や別の大陸の話を色々と聞いてね。
{ある程度サイズで分類した既製品の服を販売する}方法が
あるって事を知ったんだよ。
・・・で、今はすっかりそうなっちゃったんだよね。」
「そーなのかー、そうなっちゃったんだなー。」
「行事とか祭事とかの場合は{仕立て品}で良いとして
普段着る分には、大きさがぴったりじゃなくても問題ないですしね。」
『特になー、冒険者の傾向として、新品のゴワゴワして固い服よりは
柔らかくなった{古着}選ぶしな。
値段も{仕立て品}より断然安いから、汚れたり破けたりしても問題ないし。
何より{仕立て品}やと作るまでに時間かかるからなぁ・・・。
{古着}にしろ{吊るし}にしろ、冒険者が増加してるなら
それだけ需要は増えると思うし、実際増えとるんやろうしな。』
「{吊るし}はある程度サイズが合うのがあれば、後は見た目で選ぶ事が出来るので
町の女性なんかだと、見た目で思わず買っちゃう人も居るでしょうしね。
あれ? そういう意味では既製品でも作り甲斐は有るのでわ?」
「あるのかー? 服のおっちゃん。」
「まあ、確かに自分の好みで作った既製品を気に入って、買ってもらえるのは
嬉しい事は嬉しいんですけどね・・・。
何と言うか、{達成感}とでも言ったら良いんでしょうかね?
そういうのが違う・・・としか言い様が無いんですが。」
『んー、店長の言いたい事は何となくわかるかもなー。』
「と言いますと? うおっ。」
『えーっとやな、例えば料理なんかもそうやねんけど。
{これから食べてもらう人を想って、色々趣向凝らして作る料理}やったら
食べてもらった時に、作った側も{満足感}というか{充実感}が有るけど。
{誰が食うか知らんから、てきとーに作った保存食}を露店で販売したとして
有り難がって買うてくれたとしても、微妙というか何か味気なくてなあ・・・。
{ふーーーん? うん、良かったなあ}って感じなんやわ。』
「「あーーー。」」
「な、なるほど、そうなんですね、うおっ。」
「なるほどなー、そうなのかー。」
『っていうか、さらっと混じっとるけど、いつの間に戻ってきたんや。』
うん! きょうはいいことをいっぱい知ったぞ!!
かえったら、とーちゃんやかーちゃんにもおしえないと!!
服やのこととか! おさかなのこととか!!
とくに、おさかなはちんこがにほんなこととかなー!!!




