36 冒険者Aさんと町一番の豪華宿泊施設
あらすじ:町の未来は明るい・・・・・・多分?
視点:ご主人様>お酒 大妖狸ミケニャンさん
『』:アルファさん
・・・どこかで、報告で一時帰国した際に、浮気にも満たないほんのスケベ心を
奥さんにバラされてボコボコにされた挙句、娘さんからの信頼も少し減少した
ヘタレ侍の悲痛な叫びが聞こえた様な気がしましたけど、きっと気のせいですね!!
「まあ! あの時の報告は、ミケがしっかりとお伝えしたものなんですけどね!!
我ながらいい仕事しましたよ! うんうん!!」
『は? いきなり何の話や?』
「いえいえ、何でもありませんですわ! ご主人様! ぬほほほほほっ!」
(スタスタスタスタ)
「? ・・・うおっ!?
何だかすごい立派な感じの建物が見えてきたんですけど!! うおっ!」
『あーーー、あれはやな、朝言ってた{この町の宿屋}最後の1軒なんや。
宿の名前は【ホテールのゴージャスホテル】って言うんやけどな
まんま、経営者のホテールさんの名前が付いとるわけやわ。
名前が長いから、俺らは{ホテホテ}って呼んどる。』
「{ホテホテ}ですか、面白い名前ですけど
意外に、こう・・・落ち着いた雰囲気? の建物ですよね、うおっ。
「そう! よく気付きましたね、サバミソ。
名前は確かに面白いというか、むしろふざけててムカつく名前ですけど
このホテールさん、意外と有能・・・というか
このドが付く田舎の国の商売人にしては、目の付け所が良いんですよね。」
「はあ・・・目の付け所ですか? うおっ。」
『せやな。
このお宿ってな、一番安い部屋の1泊で大銅貨20枚ぐらいなんや。
んで、一番高い部屋は・・・確か銀貨1枚ぐらいやったっけな。
まあ、金額で言ってもサバミソにはピンとこうへんかもしれんけど
簡単に言うなら、中流階級から上流階級向けって言った感じやな。』
「この、微妙なラインが上手いんですよねー。
例えば、貴族や大商人みたいな、超お金持ちだけにターゲットを絞ってる
{キンキラキンの悪趣味な高級宿}ってのは、割とどこ行ってもあるんですけどね。
あれって、やっぱり利用客を限定しすぎですし、何より高すぎて回転率悪すぎるんですよ。
初期費用額とか尋常じゃないですしね。」
『まー、結局ん所、商売なんてのはどこまで行っても{客数x単価}なんやわ。
んで、そっから初期費用と維持費さっ引いたのが利益ってもんでなー。
そこが難しいところなんやけど、この{ホテホテ}は面白い層を狙っとる。
{決して安くはないけど頑張れば平民でも利用可能}な線を突いとってな。
建物とか家具や店員の接客なんかもそうなんやけど
{品質>金額}を売りにしとるわけや。』
「?? えっと、アルファさん、それを売りにする利点って何なんでしょうか うおっ。」
『まあ、単純にやな。
見た目だけ{無駄に貴族趣味}の豪華な建物とか家具とか調度品とかは
揃えるのも維持費もそうやけど、やたら金かかるんやわ。
扱いも難しいし、すぐ壊れるしな。
だけど、しっかりとした上品質なだけの物なら、そこまで高くは無いんや。
何より丈夫で長持ちするし、壊れても修理も可能やしな。
それで、別に品位という意味では劣ってるわけやないから
客層かて{王族}や{貴族}だけやのうて{他国の外交官}やったとしても
問題ないっちゅうわけや。
しかも{ちょっと贅沢したい一般民}かて泊まれるしな。
利用客の幅が広い分、回転率も十分すぎる程やろ。』
そうなんですよねー、そこら辺を勘違いしてる経営者が多いですけど
貴族はともかく、王族とか他所の外交官が
わざわざ、無駄に豪華なキンキラキンに泊まりたがる訳ないんですよねー。
特に仕事で来てる場合なら、落ち着ける雰囲気の方が胃にも優しいでしょうし
観光や静養に来てるなら尚更ですよね。
英気を養ったりストレス発散するのは、食事や外出して行えば良いわけですし。
寝る所ぐらいは、静かにゆったり過ごしたいと思うのが人の性ってもんですよねえ。
(バーーーーーーーーーン!!!!)
「そうデースネ! さすがのご慧眼デース! ミスター!!」
「はわわっ!? うおっ!」
「いきなり出てこないで下さいよ、ホテールさん。
っていうか立ち聞きですか? ご趣味が悪いですね。」
「いえイエYEAHーー! たまたま耳に入っただけデスヨ、奥サマ!!」
「奥様!!? ふふっ、やはりあなたはそこら辺は弁えてらっしゃいますね!!
そう! ミケこそご主人様・・・いえ!? 旦那様の唯一無二の嫁!!!」
まあ? 気分の良い事を言われたら? それはもう! 便乗しちゃいますよ!!
押して押して押しまくって、ついでに押し倒してしまって!(はぁはぁはぁ)
既成事実にしてしまえば(ふひひひ)問題なし!! ですわーーー!!!
『おー、ホテールさんやないか、久し・・いや、この間ぶりやねー。
今日は王都やのうて、こっちに来とったんやな。』
「おオウ!? さすが動じませんネ、ミスターー!!
いえ、申し訳ございませんでシター、少しは驚いて貰えるかと思ったんデスガ。」
「あ、あれ? アルファさんはご知り合いなんですか? うおっ。」
「ほほウ、コレは珍しーイデスネ! ボーイは魚系の亜人の方なーのデスネー?」
「えっ? はい、初めまして、サーバクン・ミーソットと言います、うおっ。」
「・・・ホテールさん、あなたもっと流暢に話せたはずじゃ?
まあ、いいですわ、この子はピッチピチの14才の【リューグー人】の子です。
ミケ達と行動を共にする事がほとんどでしょうから
今の所は、あなたの{ホテホテ}を利用することは無いかもしれませんけど
今後の為に見知っておいて下さいな。」
「おーウ! 初めましてボーイ! わターシはホテールと言いマース!
この{ゴージャスホテル}のオーナーやってマース!
以後お見知りおキヲーーー!!」
『いつ見てもホテールさんは元気満々やなあ。
まだまだ現役バリバリでいけそうやね!』
「もちローンでース!
では、ワターしはこれで失礼いたーしマス。
また今度! 料理だけデーモ食べに来てクーダサーイネ!!」
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「あのオーナーさん、面白い人でしたね、うおっ。」
「でしょうね・・・あの人、外見も服装も派手派手で
パッと見た目には30代とか40代ぐらいにしか見えませんけど
実際はかなり高齢なんですわよ?」
『せやでー。
なんせ俺のとっつぁんと同じ年代らしいからなあ。
確か80越えとるって言っとったし、俺の倍以上やなー。』
「は! はちじゅうですか!?
僕が思ってたよりも、ずっと年配の方でした、うおっ。
へえ・・・人族の方ってあまりしわしわにならないんですね! うおっ。」
「あ・・・えーーっとですね、サバミソ。
あの人は特殊な例で、人族が皆ああなわけじゃないですからね?
普通は60ぐらいからどんどんしわしわになっていくんですよ。」
ご主人様のお義父様は、確か20数年前に80才手前で亡くなったそうですし
同年代ってことは、80どころか普通に100才越えてるでしょ・・・。
大妖狸のミケと大差ないとか、あの人も妖怪か何かなんじゃないですかね?