353 冒険者Aさんと予定は未定 ③
あらすじ:農園には貸し農地があるようです。
視点:赴任してからギルド長より忙しい マリ・ムトウさん
『』:アルファさん
◆冒険者ギルド会館 会議室◆
「・・・って感じじゃな。
今は若いの4人を調査に行かせとる訳じゃ」
「そうなんですね・・・アリのモンスターですか。
ところで、マリさんにブラボーさん。
その4人って信用できる人達なんです?
アリの討伐までできそうですか?」
「うーーん? そうねえ~。
リッちゃんの推薦もあったし
私はこの間の訓練とか見てて
信用して良いと思ったんだけど
討伐は・・・どうかしら~?」
「そもそも、フォウの嬢ちゃんよう。
今回は調査だけで討伐までは予定にないからの。
・・・お前も見たことあるはずじゃぞ?
ほれ、アルファの奴がちょくちょく面倒見とる
3人組の坊主共と、綿っ毛の娘っ子」
「・・・・・・ああ! あの子達ですか。
アルファさんの影響なんでしょうけど
あの子達、リマさん経由で発行している
町の地味な依頼受けてくれるんで
実は結構助かってるんですよね」
「あら~、そうなの~?
うふふ、あの子達って思ってた以上に
期待の新人さんだった訳なのね~」
う~~ん・・・。
私もまだこっちへ来て日が浅いから
実績も含めて、どの子がどうなのかとか
あまりわかってないんだけど
リッちゃんが大丈夫って言ってたし
きっと大丈夫よね~、うんうん。
・・・それにしても、こっちへ来る前は
最初の把握に時間かかるかと思ってたけど
思わぬ誤算と言うか想定外だったわよね~。
だって、リッちゃんがしっかり者すぎて
聞けば大体答えてくれちゃうんだもの。
ちょっと意固地な所もあるけど
冒険者にも町の人にも誠実に対応するから
皆から信頼されるのも良くわかるわ~~。
・・・でも、だからって
それに胡坐かいちゃうと絶対ダメなのよね~。
その結果が、今のギルド長とリッちゃんなんだし。
「じゃあ、調査次第で討伐するとして
お任せ出来そうな人って誰か居そうです?
巨大アリのモンスター・・・しかも巣ごととか
どのぐらいの難易度になりそうなんでしょうか?
・・・それで依頼費用変わってきちゃいますし」
「そうじゃのう・・・そこは調査次第。
・・・としか、今の段階だと言えんのじゃよ。
規模とか数の問題もあるんじゃが
そもそもアリの種類によるからな」
「アリの種類?」
「そうなのよね~。
モンスターに限った事じゃないのだけど~
ほら、一口にアリって言っても
大きいのも居れば小さいのも居るでしょ~?
他にも硬かったり、酸を吐くのも居るし
蜂みたいに毒針を持ってるのも居るし・・・」
「ああ、なるほど・・・確かに。
身の回りですらアリって種類多いですもんね。
何を餌にしてるかとか、攻撃性とかで
危険かどうかも変わってくるでしょうし」
「そうそう」
う~ん・・・やっぱりこの子って
稀に食事が絡んで暴走しちゃうって聞いてたけど
お腹すいてない時だと優秀なのね~。
・・・・・・あら~?
稀・・・じゃないかも? よく見かける?
でも、私の見たのは大体アルファさん絡みよね?
・・・なら、仕方ないのかしら~?
アルファさん、宴会もお祭りも大好きだものね~。
「(ぼそっ)・・・アルファのやつ。
下見行ったんじゃから、そのついでで
引き受けてくれてもよかろうに・・・」
「(ぴくっ)えっ? 何ですか? ブラボーさん」
「(ぎくっ)ぬっ!? い、いや何でも・・・」
「あらあら~? 何かついでがどうのと
聞こえたような気がしましたけど~。
何がついでなんですか~?」
「(がっくり)む、むう・・・いや、単にな?
アルファのやつ、下見まで行ったたんじゃから
そのまま調査と討伐までやってくれたら
問題なかったのにな・・・と思っただけじゃ」
「あー・・・まあ、確かに。
私もそれは少し思いましたけど・・・」
「う~~ん、ギルド長~~?
アルファさんにそれは~~」
「(ふうっ)・・・わかっとるわい。
あやつは、ここでの書類上では
単なる{Cランク冒険者}じゃしな。
候補地の下見と今後の調査の下準備。
さらに脅威となりうる存在まで
報告してくれとるんじゃ。
冒険者としての役割となら
十分すぎるほど十分じゃわい。
だがのう・・・だから余計にのう・・・」
まあ・・・ブラボーさんがそう思うのも
わからなくはないのよね~。
【行者組合】でもそうだったし~。
私が聞いた限りの話だと
他の都市の【冒険者ギルド】でも
そんな感じだったらしいものね~。
どこでも、受ける依頼は選り好みして
気の向くままに活動するくせに
依頼の失敗とかほぼ無いんだもの。
うふふっ、私は昔からの知り合いだし
とっくに、そういう人なんだ~って
区切りつけてたから、特に感じないけど
多分、組織の長としては
歯がゆく感じるんでしょうね~。
だって、受けてさえくれれば
ほぼ成功するってわかってるんですもの。
組織の長だったら、重要な役を任せて
頼りたいと思うわよね~。
・・・というか~、その期待もあって
この町に召致したって、私も聞いてるし~。
「そうそう! 私もその報告聞きましたけど
手際良いですよね、アルファさん。
むしろ、私びっくりしましたよ。
だって、候補地の下見だけじゃなくて
次の調査しやすい様に周辺をすっきりさせて
【結界】っていうのも張ってくれたんでしょ?」
「ええ、そうらしいわよ~?
まあ、さすがにミケちゃんの【結界】でも
地面の中までは効果薄いみたいだから
今回のアリ調査になったのだけどね~」
「その上、テント設置用に地ならしとか
焚き火や調理の煮炊きし易い様に
簡易のファイヤーピット作ったりとか
お風呂やトイレ用の水周りだったりとか・・・。
普通、それって専門業者の仕事で
冒険者の人じゃ絶対そこまでしないですよね?
こっちとしては、感謝しかないんですけど?」
「確かにそうじゃな・・・って。
は? あやつそんなことまでやったのか?
俺、聞いとらんのじゃが」
「あれ? そうなんですか?
私の所へおすそ分けを持って来てくれた時
そんな事おっしゃってましたよ?
{これでいつでもキャンプ可能やで~}って」
「あらあら~、そうだったのね~?
さすがに、記録する調査の報告書だと
現地の状況と処置しか書きませんからね~。
私もリッちゃんから、調査中の話を聞いてて
アルファさんだし、多分そのぐらい
やってそう・・・とは思ってましたけど
やっぱりなのね~、ふふっ(くすすっ)」
「・・・ええ、何よりも!
おすそ分けで頂いた野菜に果物!
現地で収穫できる果物や野菜を
色々試してくれてただなんて
素晴らしいじゃないですか!?
そう! 本当に・・・!!!(じゅるりっ)」
(グウゥウゥゥウウウゥゥゥウウゥゥウウ!!!)
「「あっ・・・」」
「(ふらぁ)・・・・・・に」
「「に?」」
「(ぐわっ)ニンニクぅううう!!!!
バター焼きぃぃぃぃぃいい! さいっこー!!!
タコがっ! お魚がクリがおイモがっ!!!
私を呼んでるのおおおおおおお!!!!!!」
(ドドドドドドドッ!!!! バタンッ!!!)
(ウワッ!? ナンダ!? ワーーー!?)
「あらあら~~、元気な子よね~」
「・・・あー、うむ。
とりあえず必要な話し合いは終わっとるし
アルファのやつには聞いてみて無理そうなら
討伐はエクスとレイに任せるかのう」




