333 冒険者Aさんと鬼娘と逸話 ③
あらすじ:伝記【桃太郎】には、裏話があるそうです。
視点:さらっと夕食に混じってたご隠居様 ゲンジロウ・フジさん
『』:アルファさん
「【フソウ】で{鬼}と言うと
3種類あってな」
「3種類?」
「そんなにあるんですか? うおっ」
(ジュウウウウウ、バチバチ「うま~!」ハグハグ)
「(こくり)うむ。
1つ目はまあ、ウラ君の様な元々の種族だな。
種族としては世界各地に結構居るのだが
中でも【フソウ】の【鬼族】は先天的な
{純粋種}と言う意味で別格扱いが多いのう」
「なるほど、種族ですか」
「う~~ん? {純粋種}って何ですかぁ~?」
まあ、この辺りは知らないのは当然かもしれんな。
なにせ、【フソウ】に住んでいる者ですら
知らぬ者が多いしのう、実際。
「うむ。
それはだな、2つ目の種類にも関わってくるので
先にそちらから言うとするかのう・・・。
2つ目は{鬼}に変異した者。
何らかの原因があって、後天的に{鬼}となった者だな」
「後天的に?」
(モクモク、ハグハグ「箸がとまらへん!」ジュワワワ)
「えっ? そんな事有るんですか? 先生」
『お~、有るで~~?
例えば、 特殊な秘術やら薬品やらで
死後に蘇った【吸血鬼】とかもそうやし。
他には、快楽殺人を繰り返してたら
実際に頭に角生えてきた【殺人鬼】とかも居るな~』
「うへ・・・そんな事有るんだ・・・」
「強烈に恨んで呪った挙句に{鬼}に変異する・・・。
と言った事も【フソウ】ではよく聞きますよね、お師様」
『せやな~~~、割とよ~有る話やな~』
「えーーーー? ・・・よく有るんだ?」
「怖いですね、うおっ」
(モニュモニュ「ふもっ!?」ジュワッワ「お嬢っ!?」)
うむ。
想いの強さで、自分の姿形さえ変えてしまう。
げに恐ろしきは人の業・・・という所だな。
『あー、せやせや。
モンスターの大元なんかにも結構おるんやで?
【小鬼】とか【単眼鬼】もそうやし。
【剛鬼】とかって、【神語】でまんま{鬼}やしな。
ちなみに、こっちの変異は【マナ】が原因ってやつや』
「「「「「えええっ!?」」」」」
「ああ、今アルファ君が言ってくれた例の様に
後天的に{鬼}に変異する事が有り。
原種の{鬼}となった者が他の種族と交わって
新たな種族として増える事も有る訳だ」
「要するに{混血種}って訳ですわよ。
それで先程、【鬼族】の事を{純粋種}と
呼んでいたのですわ~」
「(がびーん)ええ・・・。
その辺のモンスターの起源って
そう言う事だったんですか・・・」
「(もぐもぐ)おう、そうだぞ?
あれ? 俺言っとらんかったか?」
「「「「聞いてませんよ!! ギルド長!!!」」」」
「(ごくん)お、おう!? ・・・すまん?」
(ギャーギャー、ワーワー)
「んもぉ~~。
知ってましたぁ? リマ先輩~?」
「(にこにこ)サクちゃん、こっちも焼けたわよ?
あっ、慌てないでね? ほら、お茶を・・・。
・・・・・・えっ!? 何です??(びくっ)」
(ジュウウウウウ、パキュッパキュッ)
「・・・あ、はい、何でもないですぅ。
どうぞ、続けてくださいですぅ」
ふむ・・・・・・。
私も話には聞いておったが
実際目にしてみると、これはまた・・・。
まあ、良い兆しなのは間違いなかろうて。
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▽
「えっと、ギルド長への文句は一旦置いといて」
「ま、まだ続けるのか」
「それで、3つ目って何なんですか?」
「う、うむ・・・それで、3つ目なのだが。
こちらは少々特殊で、【フソウ】でのみ使われるが
{朝廷や将軍家の敵対者や集団}の事を指しておる。
所謂{隠語}や{符丁}というものだな。
まあ、最近は使われておらんのだが・・・」
まあ、実際は敵対している者達の中でも
特に危険な者達に付けられる符丁だったのだよな。
【フソウ】では、陰悪や邪気の通り道である{鬼門}や
死亡した際の{鬼籍に入る}の様に
あまり良く無い意味で{鬼}という言葉を使う事が多い。
その為、以前の朝廷や将軍家に仇なす者は
{鬼=人に非ず}として討伐対象にした訳だ。
「インゴ?」
「フチョウ?」
「・・・よーするにアレじゃ、アレ。
仲間内でだけ使っとる合図とか合言葉とか。
お前らも、よく使ってるじゃねえか。
古めの依頼にゃ{お兄さん}で
新しい依頼には{弟さん}とか呼んでるだろ?
もっと古いのは{お父さん}とか{お爺ちゃん}とか」
「ああ、呼んでますね。
しかも、依頼が受理されたら{お見合いに行った}で
完了されたら{お婿に行った}ですものね。
アレってどなたが考えたんです?」
「(ぷいっ)・・・あー、誰だっけな~」
「ああー、私聞いた事ありますよ。
それってタロットさんですよね?
最初は、ギルド長が女性で例えてたらしいんですけど
{行き遅れ}とか{寿退職した}とか言ってたら
当時の職員の人達に女性が多くて大不評だったから
そっちに変えたって聞きました」
「「「「あーーーーーー」」」」
「言うなよ!? 知らん振りしてたんじゃから!」
『わははは! まー、ええやんか。
そんな周囲にバレても問題無い内容なんやし』
「むっほっほっほ! そうですよね~。
ご主人様なんて、こっち来た最初の頃は
しょっちゅう職員さん達が裏で{ナカイさん}って
聞こえる様に業務連絡してましたからね~~」
「「「「「「「ナカイさん?」」」」」」」
「お、おいっ!?」
「あ~~~、有ったわねえ、そんなのも」
「はあ? {ナカイさん}って何の事です? 先生」
『あ~~、それな?
面倒な冒険者とか依頼者とか来た時の符丁なんやけど。
{注意=チュウイ}でそのまんまやったらアレやからって
{チュウ}だけ{中=ナカ}に変えたって訳や』
「はーーー? はあ?」
「ちょっと無理矢理っぽくないですか?」
「って、おおい!?
何、あっさりバラしとるんじゃ! アルファ!!
・・・って誰じゃ! 無理矢理って言ったの!!
せっかく俺が頑張って考えたんじゃぞ!?
これじゃ、もう使えな・・・」
「いえ、もうとっくにバレてるんで
今は誰も使ってませんよ? ギルド長」
「・・・は?」
「あれは確か・・・アルファさんが移籍してから
しばらくは、その符丁使ってたんですが」
「(じとー)使われてたんですか? 先生」
『せやで~~!!
そら、面倒な人間なんわ、間違いあらへんし!!
わはは!!!(げらげらげら)』
う、うむ・・・。
面倒がられておったのか、アルファ君。
ま、まあ、そこを笑って流せる所は、流石だのう。
「・・・それで、あっさりと
キレたミケニャンさんにばらされました。
私、丁度その時居ましたんで
実際、見てました」
「あ、俺も俺も~」
「私も居ました~、というか私も言いましたし」
「いやあ~、凄い剣幕でしたよね~」
(ワイワイ、ワイワイ)
「お、お前らなぁ・・・」
「ちなみに、その時に的確に対処したのがリマ先輩で
その後はリマ先輩の窓口に行く様になったんです。
ですよね? 先輩?」
(ジュウウウ、カタンッ)
「(こっくりこっくり)・・・あふ・・・ふぁい」
「(にこにこ)あらあら、お腹いっぱいで眠く・・・」
「せ、先輩?」
「(びくっ)えっ!? あ、はい? 何でしょうか?」
「いえ、あの・・・はい、何でもないです。
どうぞ、サクちゃんのお世話をどうぞ・・・」
「メガネさん・・・」




