329 冒険者Aさんと予想外の出迎え ⑤
あらすじ:タケジロウさんは義兄に弟子ができたことは知ってましたが
養子にした娘の事は知らなかったようです。
視点:飛竜の餌やり班の監督 リマさん
『』:アルファさん
「クルルルルル、キュウゥ(すりすり)」
「(びくっ)はうっ!? す、スズメちゃん。
え、えっと・・・(スッ)これも食べる?」
「キュオッ!(ぶんぶん)」
「あははは、よかっただなぁ、スズメ!(なでなで)」
(ザワザワ、ザワザワ)
「ふふっ・・・」
最初は怖々だったけど
すっかり懐かれちゃったわね、サクちゃん。
確か、アルファさんに聞いた話だと
【飛竜】ってかなり頭が良いらしくて
人の話す【神代語】もある程度理解できるとか?
・・・まあ、そうなのかもしれないわね。
そうでなければ、騎乗用にするなんて出来ないし
それに、それほど時間もかからずに
あれほどサクちゃんに懐いたって事は
あの子もサクちゃんが良い子だって事を
頭と魂で理解できたって事だものね。
うんうん。
「ええ・・・どういう納得の仕方なんですか、メガネさん。
さすがのミケでも少しドン引きますわよ?」
「え? ああ、ミケニャンさん、追加の餌ですか?
運んでくださってありがとうございます(にこっ)
・・・へえ・・・【飛竜】ってお肉だけじゃなく
草に野菜とかも食べるんですね?」
・・・干し草に、ニンジンに、これはナシ?
うーーーーーーん・・・私のイメージだと
竜種って、お肉! って、感じだったんだけど
何か、馬と同じ様な物も食べるのね。
・・・あ、なるほど。
つまり、トウタロウさんの馬車を借りたついでに
馬牧場の備蓄も載せてきたという事かしらね?
このナシを入れてる箱も、先日収穫した時に
牧場へ差し入れしたままの状態だもの。
まあ、牧場のお馬さん達には悪いとは思うけど
そこは、アルファさんが何か代替品入れるんでしょう。
「(ツンツンッ)クルルルルッ♪」
「(にこにこ)あはは、よかった。
ツバメちゃん喜んでくれてるみたいです!」
「(にこにこ)サクちゃん、餌やり上手いだな~。
おらがやってもこんなに喜んでくれないだよ?」
「さすがは、アッシのお嬢様でヤンス!
・・・で、でも、仲良すぎやしませんか?
アッシももっとかまって欲しいでヤンスぅ(ゆさゆさ)」
「えっ? さ、サンちゃん!?」
「(ツツツンッ!)クルルルッ!!」
「あたたたっ!? い、痛いでヤンス!!
ゴ、ゴメンでヤンスよ~~~!!」
(アハハハハハ、ガヤガヤガヤ)
あれは・・・止めた方が良いのかしら?
ま、まあ、本気で怒ってる訳でもなさそうだし
放っておいても大丈夫そうよね? 多分。
・・・・・・それにしても。
生肉の塊をがっついて啄ばむって訳じゃなく
木の器に入れてもらった焼いたお肉。
しかも、一口サイズに切って味付けしたやつを
お行儀よくチョンチョンつっついて食べてるし・・・。
【飛竜】の食事方法って、そういうものなのかしら?
そもそも、本来、あんなに人懐っこいものなの?
「さすがにそれは有りませんわよ~、メガネさん。
あの子は、ちょっと特殊でして
捕獲したのを調教した訳じゃなく、育てた子ですから」
「そ、育てた!? ・・・ですか?」
「ええ・・・6年ぐらい前だったと思いますけど
ご主人様が拾ってきたんですよ、小さい雛のあの子を」
「雛っ? えっ?」
「確か・・・崖に生えてる茸を取りに行った時でしたっけ。
崖下に落ちてて、ピーピー鳴いてたから拾ってきたとか
仰ってましたわねー、あははは・・・。
多分、巣から落ちたんだと思いますけどね」
「ええ・・・」
もう、突っ込み所が多すぎて
どこから聞き返せばいいのかわからないけど
とりあえず、【飛竜】って雛なのね・・・。
そっか・・・雛って事は、分類としては鳥の仲間なんだ。
てっきり、トカゲの仲間なんだと思ってたわよ、私。
というか、崖上に巣・・・巣ねえ・・・?
あんまり想像できないけど
そんな【飛竜】が巣作りしてる様な所に生えてる茸って何?
・・・まあ、そこはアルファさんだし。
どうせ、食べたら美味しい珍味とかなのかも?
・・・そう、考えれば不思議でもないかな?
うん、そう思っときましょ。
・・・いや、それにしても。
落ちてたからって、拾ってくるとか・・・。
ま、まあ、それもアルファさんっぽいのかしらね?
うん、そう思った方が良いわね、深くは気にしないわよ?
「そうそう、それが懸命ですわ、メガネさん。
ご主人様はとっても素適な奇人変人なんですから。
気にするだけ無駄と言うものですわよ~~?」
『(にゅっ)せやで~、何や楽しそうな話やな、ミケ?』
「(びびくっ)ひっ!? ひいいいいいっ!?」




