328 冒険者Aさんと義兄弟の会話 ①
あらすじ:五十六商会は基本的に親族経営だそうです。
視点:炭火焼肉を堪能中 五十六商会 副会長 タケジロウさん
『』:アルファさん
(ガブッ、モッグモッグモッグ)
「・・・・・・っ!?(ブルッ)」
うっはぁ・・・・・・!!?
何か美味すぎて震えが来たし。
やっぱり【赤ブタ】って美味いよなぁ。
希少だから、滅多に食べれないんだけどね・・・。
うんうん、この生ハムみたいな
まったり、ねっとりとした舌触りと歯応え。
まさに上質な赤身って感じだよなぁ・・・。
これを食べちゃったら、普通の豚肉なんて
ただの脂身の塊に思えてくるよ。
まあ、うちの【緑寿園】も運営予算は余裕無いから
大概は豚どころか鶏なんだけどね。
うんうんうんうん、赤身の肉なのに
炭火で焼いても、噛むと肉汁っ! 肉汁が!!!
・・・・・・はあぁああ、たまらないなこれは。
うーーーーん・・・。
奥さんや娘達にも食べさせてやりたいなあ。
『わははは! 安心しーやー? タケちゃん。
ちゃ~んと、お土産にたっぷり持たせたるからな~!
他にも色々有るから、喫茶の方にも配ったって
いろはちゃん達や皆で腹いっぱい食ったらええで~』
「えっ・・・!?
・・・はは、僕の考えなんてお見通しみたいだね。
さすがは義兄さん。
ミケニャンさんみたいに、特殊能力なんて無いのに
よくそんな正確に、相手の心を読めるよね・・・」
『せやろ? わははは!』
ははは・・・本当に変わらないなぁ、義兄さん。
自分が誉められた時は、謙遜しないで素直に喜ぶ。
だから、人の事も些細であっても多いに誉める。
これって美徳だと思うんだよね、義兄さんの。
だから、僕もこれを見習って真似してるし
僕の周囲にも極力そうあるべきと伝えてる。
「そう言えば、義兄さん?
お土産に持たせてもらえるのはありがたいんだけど
在庫に余裕はあるんですか?
【赤ブタ】の育成が軌道に乗ってるのなら
問題ないんですけど、そうでなければ・・・」
『あ~~~~、全然問題あらへんで~。
【黄緑ニワトリ】と併せて、順調に増やせとるし
最近は、市場の方にも少しづつ卸せとるみたいやから
一部の人らの高級な送りもんだけやのーて
一般のご家庭でも、家族の誕生日とか
祭り事のご馳走なんかに重宝しとるらしいで?』
「ああ、それなら大丈夫そうですね。
えっと、ここだと代金の相場は幾らぐらいですか?
あと、この場所を提供してくれた分も払わないと」
『あー、それはこっちで払っとくからええわ。
それよりも、頼んどいたメモん中に
付け届けに丁度よさげなんも書いといたから
それを渡したってくれるか?
もちろん、タケちゃんの事やから
ええもん選んでくれたんやろ?(にやっ)』
「ええ、まあ・・・専門家の意見聞いてですけどね」
『わははは! 手間かけてもーてすまんな!
ありがと~な! タケちゃん!(ばんばん)』
な、なるほど、代金以外の付け届け用ね・・・。
それで農学書とか、果物の種とか
注文のメモに書かれてたのか。
僕じゃ詳しい事はわからないから
結構色んな人に聞く事になったんだよね。
・・・・・・あれ? 魚の干物とか珍味も?
「(よろろっ)そ、そういえば。
義兄さん、楽器と設計図は何に?
一応、メモ通りに一通り持って来ましたけど・・・。
この町で売り払うんですか?」
『いや、売らんけど?
あ、設計図は町へ寄付するけどな~。
で、楽器はな? サクを【バード】にした事やし
皆で演奏しようと思って、持ってきてもらったんや!
な? 楽しそうやろ? わははは!!(げらげら)』
え? サク? 【バード】?
それは、誰? 今初めて聞いたんだけど・・・?
ここで給仕してくれてる娘は違う。
この娘は弟子にしたっていうライムグラスちゃん。
え? 本当に、誰の事?
あっ、この町で知り合った人かな?
それこそ、お気に入りで口説いてる
ギルド職員の人とかと同じで。
「うん??? えっと・・・サクさん?
僕は知らない人ですけど、この町の人ですか?
もしくは、冒険者の知り合いか何かで?」
『ん? 俺の娘になった子やで?
タケちゃんもさっき会ったやろ?
今【飛竜】に餌と水あげてくれとる。
ほれ、ちっこいピンクの子連れた・・・』
「えっ!? あの子!?
ええっ!!? む、娘・・・になったああああ!!?
そ、そんな話・・・!!!?」
えええええええええ!!!?
何!? その重大な話!!!!!!!!
いや、聞いて無いんだけど!!!!?
そ、それって、トンでもない話じゃないか!
何しろ、アルファ義兄さんの娘って事は
【五十六商会】だけじゃなく【フソウ】でも
超が付く重要人物で、VIP待遇って事になる!!
そ、それに、そんな話出たら・・・。
義兄さんを慕ってる、あの子やあの子達とか
色んな意味で暴走するに決まってる!!!
ど、どうする!? どうするのが正解なんだ!!?
『・・・あれ? ゆーてなかったっけ?』
「(ひききっ)き、聞いてませんよ・・・義兄さん」
僕は向こうでそんな重要な話聞いてなかったし
他の幹部や、もちろんマツ義兄だって聞いて・・・。
・・・・・・・・・ま、まさか、あのバカ!!!




