327 冒険者Aさんと予想外の出迎え ④
あらすじ:ビーエルさんの元故郷で、アルファさんは
悪名高い高額賞金首なようです。
視点:新弟子という事で突発的な給仕係になった ライムグラスさん
『』:アルファさん
(ワイワイワイワイ、ガヤガヤ)
『わははは! すまんな~、タケちゃん。
何か予定と違ぉて、騒がしくなってもーて。
(じーーー)・・・うんうん。
元気そうで何よりや!(ばんばんばん)』
「ははは、義兄さんもお変わりなく。
・・・それにしても久し振りですね。
アルファ義兄さん、一度出かけちゃうと
滅多に帰ってきませんから・・・。
【緑寿園】や喫茶の皆も会いたがってるんですよ?」
『(ぽりぽり)あーーー、そりゃすまん。
ついつい・・・な~んか、長居してまうねんな~』
「(にこっ)でも、僕もやっと来れましたし!
次の連絡の時もまた僕を呼んでくださいよ?
今回みたいな配達でも用事でも結構なんで!」
(アハハハハ、ワハハハ)
「・・・・・・」
な、何か気まずいなあ。
酒場で経験有るからって、先生に給仕任されたけど
あの・・・これって・・・。
酒場とは雰囲気が違と思うんだけど!?
ちょっと周りが騒がしすぎるからって
少しだけ離れた所に、席を作るのはわかりますよ?
でも、どっから出したんですかね、このセット!?
下には敷物、イスにテーブルに日よけのターフまで。
全部、簡易っぽいけど、あっという間過ぎて
目の前の出来事なのに幻でも見たかと思った・・・。
うーーん・・・多分、先生の事だから
新しい弟子の紹介も兼ねてるんだろーなー。
だって、ユキ姉さんもこっち居るし。
・・・まあ、ユキ姉さんが招待側行ってくれて
アタシは先生側なんで、そこまで緊張はしてない。
ユキ姉さんに感謝よね。
妹弟子に気配りしてくれる姉弟子ってありがたい。
「(じっ)えっと、それでこの子達が?」
「(びくっ)・・・っ!?」
『せやで~! 新しく俺のお弟子さんになった子達や!
わははは! どっちも良さそうな子達やろ?(ぽんぽん)』
「(すっ)私、ノブユキと申します、タケジロウさん。
お師様の教えを受けたばかりの未熟者ではございますが
どうぞ今後とも、よろしくお願い申し上げます(にこっ)」
えっ!? あっ!! そ、そうよね!
あ、あ、あっとアタシも挨拶しなきゃ!!!
「(あわあわ)え、えっと! あの!
あ、アタシは、ライ、ライムグラスと言う名前です。
その・・・あっ! コンゴートモ!!
よ、ヨヨロシーク、お願い申しますマース!?」
はうっわあああ!? うっわーー!!!
アタシは何を口走ってるんだーーー!!
せ、せっかくユキ姉さんが見本を見せてくれたのに!!
うう、ごめんなさい、ユキ姉さん。
『(げらげらげら)わはははは!!
どしたんや!? ライス。
めっさ緊張しとるやんか~~!!
何か、ホテールさんみたいな話し方になっとんで!?』
「(ぷっ)た・・・確かに!!」
「(にこっ)ライス、大丈夫ですよ。
私は外向けの挨拶になりましたが
これは私の癖みたいなものですから・・・。
ここにいらっしゃるタケジロウさんは
お師様の身内の方ですし
そこまで緊張しなくとも大丈夫ですよ」
「(くくくっ)・・・うん、その通り。
いやいや、笑ったりしてごめんね。
えっと、ライムグラスちゃんだよね?
初めまして、僕の名前はタケジロウ。
こちらこそ、よろしくね(にこっ)」
「(あせっ)あっ、は、初めましてです!」
「うん、まあ徐々に慣れていってくれればいいさ。
今後は顔を会わす事も増えるだろうから
親戚のお兄さんぐらいに思ってくれると嬉しいね」
「あ、は、はいっ!!(ぺこっ)」
む、無茶言うなーーーーーーーー!!!?
確か、事前にチラッと聞いた話だと
【五十六商会】ってでっかい商会なんでしょ!?
その{副会長}なんでしょーーーー!!!?
つまり、でっかい商会の2番目に偉い人って
事なんでしょーーーーーーーー!!!!?
アタシみたいな、孤児出身で冒険者としても
3流どころか、挫折しちゃって燻ってた
ダメダメな小娘とは雲と地ほども違うじゃん!?
いや、下手するとお星様と地ほど!?
「・・・うーん、ライムグラスちゃん。
多分だけど、何か勘違いしてないかい?」
「(びくっ)か、勘違いですか? え、えっと?」
「僕は孤児院出身だよ?
・・・と言うか、今もそこに住んでるし。
今でこそ、こんなビシッとした格好で
【五十六商会】の{副会長}なんて肩書きで
あっちこっち飛び回ってるけどね」
「(きょとん)はっ? ・・・えっ?」
えっ? 孤児院出身?
今もそこに住んでる?
んんんん? どういう事?
『わはは! えーっとやな。
孤児院ってのは、【緑寿園】ってゆーてな?
俺の叔父貴・・・えーっと。
俺のとっつぁんの、実の弟の人やねんけどな。
名前はロクロウってゆーんやけど。
その叔父貴が、前の職場を引退した時に建てたんやわ。
で、タケちゃんはそこで育ったって訳や!』
「(にこっ)ちなみにですが、ライス。
{現会長}のマツタロウさんも【緑寿園】の出身ですし
{輸送部門}を担っているウメサブロウさんもですね。
【五十六商会】の商会員や関連の職場の大半は
実はその【緑寿園】出身者だそうですよ?
ですので、自分が孤児院出身だと卑下したり
引け目に思う必要はありませんよ?」
「・・・す、凄いな。
えっと、確かノブユキ・・・くん? ちゃん?
現会長はともかく、ウメサブロウの名前と
その部門まで知ってるのかい?
・・・そこまで知ってる人は少ないんだけどね。
ま、そういう事さ。
僕の場合は戦災孤児ってやつだよ」
えーーーー!?
【五十六商会】って、よく知らなかったんだけど
思いっきり身内贔屓の、一族経営だったのーーー!?
あれ? この場合、一族って言うの?
・・・あ! ダメだ。
一気に緊張解けちゃって・・・。
「(ぷしゅーーー)ふぇー」
『お~~? 気ぃぬけてもーたかー、ライス。
(ジュウウッ)よっしゃ、ええ焼き具合やな。
・・・ほれ、ライス、あーーんしてみ?』
「(ぱかー)あーーん」
(ひょいっ)
「(むぐむぐむぐ)んまーい!」
ああ~~~~~、くちのなかにひろがる
おにくのおしるとあぶらと、あまからーーいタレ!!
でもしっかりとしたあかみのおにくだから
すっごいおにく! おにく!!
おにくをたべてる~~!! って感じがする。
ああ~~、何だか飲み込むのももったいないけど
もっともっと食べたい~~~!!
はあ~~~、鶏さんって本当うま~~~~。
孤児院じゃ、お肉なんて滅多に・・・。
「・・・・・・はっ!?」
『わははは! 復活したようやな!!
んじゃ、ユキが追加の材料運んでくれたし
ジャンジャン焼いて、皆で食おうか!
話なんて食いながらでええんやし』
「ええっ!? ユキ姉さん、いつの間に!?」
(ジュウウウウウ、シュワアアアア)
「(くすっ)アルファ義兄さんは変わらないな。
・・・じゃあ、僕も頂かせてもらうよ。
【緑寿園】だと、焼肉なんて争奪戦だから
いつも子供達に取られちゃって
実は満足に食べれてないんだよね」
「はい、ある程度火が通ったら寄り分けますので
お好みの焼き具合でお召し上がりくださいね。
飲み物も、清酒に麦酒に蒸留酒。
こちらに各種ご用意しておりますので」
「う、うん、ありがとう。
・・・本当に凄いな、ノブユキ・・・くん?」




