316 冒険者Aさんと護衛とその神様 ①
あらすじ:乗合馬車も荷馬車も、町の外では護衛必須です。
視点:八百萬一番目の亜神 フジョ様
『』:アルファさん
(パタン、すたすたすたすた)
「はあ・・・美味しいご飯でしたね、フジョ様」
「(ずずずっ)・・・うーむ、食後のお茶も美味い」
「私達が食事している間に、部屋の中に
食後用のお茶まで用意してくれてるんですから
本当にサービス行き届いてるお宿ですね」
(コトッ)
「まあ、ホテール殿のお宿は{質が第一}じゃからのう。
料理もそうじゃが、客が満足できる雰囲気を作る為に
部屋も調度品も落ち着いた高品質な物を揃えておる。
窓から見える景観にも気を使ってるらしいしのう」
「そうですね、凄く落ち着ける雰囲気だと思います。
アルファさんの泊まっている宿も良かったですけど
フジョ様の創作活動にはこちらの方が合ってますよね」
「そうじゃな。
確かに、あちらの素朴であたたかみの有る雰囲気や
店主の工夫を凝らした料理の数々も良かったのじゃが。
あちらはちと騒がしくてのう・・・幼子も居るし」
「そ、そうですね・・・アルファさんが養子にした子や
保護してる子達もそうでしたけど
何よりも、店主さんの姪っ子さんが私達の活動に
興味持っちゃいそうになりましたからね・・・。
さすがに中身は絶対に見せませんでしたが」
「う、うむ・・・さすがのわらわとて
この活動は幼子に悪影響なのはわかっておるからのう」
10才前後ぐらいかのう? あの店主の姪っ子は。
あのぐらいの子は何にでも興味を持つし
こちらの予想外の行動を起こしてくるからのう。
わらわも、取材の旅を行うまでは
さほど自覚は無かったのじゃが
どうやら、わらわ達の活動は、波長の合う多くの者に
大きな影響を与えておるようじゃからな。
さすがに幼子には影響が強すぎるじゃろて。
まあ、もう少し成長してから興味を持つなら
幾らでも見せてやるのじゃがな。
「アルファのススメでこちらに拠点を移したが
想定以上に良い宿で、活動が捗って仕方ないわ。
ほっほっほっほ」
「ですね!
今日拝見させてもらった訓練風景も
なかなか良い物見せてもらいましたし!」
「ああ、アルファのやつは、模擬戦の後に
用事が有る、と早々に帰ってしまったが
残った若人達が切磋琢磨する姿は、実に良き物じゃったな。
・・・ふむ、この辺りも使えるかもしれんのう」
(カチャ、シャシャシャシャシャッ)
「フジョ様の筆がっ!!!?
・・・ふふふふ、やりましたよ、ユガミ姉様!
そして新作を心待ちにしている全世界の同胞達!!
これでまた素晴らしい感動をお届けできそうです!!!」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
(コトッ)
「・・・ふむ。
まあ、今日はこんなものじゃろうな」
とりあえず、思いついた限りを記したが
こういうのは、無理矢理ひねり出したネタじゃと
読み手も感情移入できんから、感動も無い。
やはり{いんすぴれーしょん}じゃよな。
ビビッ! と来た時に、ババッ! と記さんと
まず、わらわ自身が満足できる出来にはならんて。
うむうむ・・・・・・うむ? そういえば?
「のう、ビーエルよ?」
(ガサガサ、ガサガサ)
「えっ? あ、はい!
どうされましたか? フジョ様」
「うむ、ふと思ったのじゃが・・・。
お主的には今日の訓練とやらはどうだったのじゃ?
お主とて、武に関しては腕に覚えがある身ではないか。
こうしてわらわの護衛をしておるぐらいだしな。
わらわ達は離れて見学だけだったとは言え
あやつの模擬戦や訓練内容などを見て
何か思う所があったのかのう?」
「あーーーー、まあ・・・はい。
確かに、私も実家が下級貴族とは言え、騎士の家系でしたので
私自身も、幼い頃からそれなりに武術を修め。
成長した後には武者修行と称して国を飛び出し
冒険者として幾らか活動も行っていましたので
思う所は無くも無いですよ?
その・・・故国ではアルファさんは、アレ扱いですし」
「ああ・・・そういえばそうじゃったわ。
お主の故国、【ランス帝国】じゃと
あやつは悪魔とか犯罪者な扱いじゃったな。
ふむ・・・アレは何であったか? あの国でだけじゃが
何ぞ、この間の騒動で二つ名も付いておったよな?」
「ええ、そうらしいですね。
確か二つ名まで付いて、賞金までかけられたとか何とか?
まあ、私もアルファさんのおかげで国外に出れてから
色々と故国のアレ具合を見聞きしてますので
あの事件も、一方的な言い分だと思いますし
もう故国に戻る気すらありませんけどね」
「まあ・・・のう?
わらわも現地の読者から詳しい話は聞いておるし
あやつの【フソウ】時代からの武勇伝も
色々と知っておるから、特に何も思わんが」
「あっ!? そ、それって相棒との2人旅のお話ですよね!?
(はぁはぁ)た、確か! 実際の逸話が元ネタになっていて!
な、何冊か【八百萬一本】で出てますよね!?
そっちはそっちで、同胞達の間でも有名な人気シリーズですよ!!
(はぁはぁ)わ、私も! 3冊手に入れて愛読してます!!」
「おお、そうかそうか。
あの2人の話はユガミのやつも特に好んでおってのう。
さすがに本まではしておらんが、未だに一枚画は書いておって
この間、相当数が揃ったとかで、画集にしたとか言っておったわ」
「(はぁはぁはぁ)ええっ!!!??
そ、そ、そ、それ・・・私も見たいですっ!!!!
・・・あっ!! し、失礼致しました!
つ、つい興奮してしまいまして・・・」
「ほっほっほ! よいよい。
それに心配はせんでもよい、ビーエル。
ユガミのやつも、その画集は非売品として
同胞達の間でだけ見て楽しむと言っておったのでな。
取材旅行から帰ってからにはなるが
必ずお主にも見させてやるからのう」
「ふぁあああああああああ!!!!!」
「これこれ、ビーエルよ。
この宿には他にも泊まっておる客がおるのじゃ。
あまり夜中に騒いでは、宿に迷惑がかかるであろう?」
「はっ!? こ、これは失礼しました。
・・・。
・・・・・・・。
(ぶつぶつ)見れるとなればやはりその逸話を先に
聞いておいてその情景と照らし合わせれば何倍もの感動が
(ぶつぶつぶつ)いやだがまずは元ネタを知らない
まっさらな状態で一度見てからそのあとで元ネタを聞いて
それからもう一度見ることによって新鮮な気持ちで
味わえるのなら2度の感動が味わえるのでは?
(ぶつぶつぶつぶつ)ですがおそらくは同胞達と一緒に
見る事になるでしょうからやはり一緒に楽しむためには
元ネタは知っておくべきでしょう幸いフジョ様と・・・」
(ブツブツブツブツブツブツブツ)
「ほっほっほ、わらわの子達はいつも楽しそうじゃな」
それにしても・・・逸話、逸話のう?
む? そう言えば・・・。
ユガミの奴がわらわの巫女となったのは20年以上は前。
当時のわらわは、心の赴くままに一枚画を書いていただけで
まだ、【八百萬一本】など書いておらん。
アレはユガミが巫女となってからのものじゃからな。
ふむ・・・当時に一番わらわの琴線に触れたのがあの2人で
ユガミも未だに書き続けるほどそれに影響された。
・・・となると、わらわ達のこの活動は
あの2人有ってのものかもしれんな。
ま、本人が聞いたら、さすがのあやつでも
難色を示すかもしれんがのう?
ほっほっほっほっほ。




