312 冒険者Aさんと姉弟の観点 ②
あらすじ:ムトウ家の次男さんはちょっとがっかりしたようです。
視点:ムトウさん家の三姉弟 一番年上の長女 オクニ・ムトウさん
『』:アルファさん
うーん・・・。
(ガキーーーン、ドタッ)
うーーーーーーーん・・・・・・。
冗談でござろう?
「ふう・・・うふふっ、勝ててほっとしましたわ~」
うーーーーーーーーーーーん・・・・・・・・・。
正直、信じられない物を見たでござる。
「(ふんすっ)当然でござる! 母上は凄いのでござるよ」
そう、母上は凄いでござる。
だけど・・・多分シゲちゃんは
母上の凄さを、そこまで理解して無いと思うでござる。
だって・・・スキル抜きの模擬戦とは言え
母上が決着まで15分もかかったのでござる。
あの母上がでござるよ?
・・・拙者はシゲちゃんと違って
母上の戦闘法や歩法をそのまま真似ようとしてるから
よ~~~く身に染みてわかるでござるが。
・・・・・・ぶっちゃけ、きついでござる。
【行者】は階級の違いで、身体能力が大きく変わるとは言え
例え拙者が母上と同じ階級になったとしても
同じ動きとか無理無理!! ・・・でござるな。
アレは身体能力とか技術がどうのとかいう問題では無いでござる。
間違いなく才能でござるな、才能。
真似れば真似るほど、拙者の才能の無さに泣けてくるでござるよ。
・・・それにしても、母上の動き。
さらに良くなってござらんか?
普通、3人も産んだら体に支障が出るのでは?
・・・それに、もういいお年のはずだと思うんでござるが?
「(にやにや)なるほどなるほど~~。
マリさーーーん? あなたの娘さん。
もういい年したおばさんなのに、何でそんなに動けるの?
って、疑問に思ってるみたいですわよ~?」
「・・・・・・あらそうなの? クニちゃん?(にこぉ)」
「(びくくっ)ひいっ!? ご、誤解でござる! 母上!!
む、むしろ、母上はいつまでも若々しくて凄いなっ!
って思ったんでござるよ!? ほんとでござる!!」
「(じー)ふ~~~~~ん?」
「(ガタガタ)あ、あわわわ・・・!!」
『(げらげら)わははは!
まーまー、ええやんかマリちゃん。
実際に見た目も動きも若々しいんやから。
それこそ、一緒に並んで歩いとったら
母娘やのーて、姉妹にしか見えへんで~?』
「(にこっ)あらあら~、も~、アルファさんったら
相変わらずお上手なんだから~」
「・・・ひ、ひぃ(ほっ)」
な、何とか母上を怒らせずに済んだみたいでござる。
そ、それにしても、さっきの模擬戦もそうでござったが
アルファ殿は、間の外し方や詰め方が絶妙でござるな。
母上の一方的な攻撃に押されてるように見えて
その実、母上の有効打を尽く潰してたでござる。
盾の高等技術なんでござるかな?
もしくは特殊な歩法とか・・・?
うーーーん、拙者は知らないでござるが
母上やユキちゃんなら知ってるそうでござるな。
後でこっそり聞いてみるでござる。
「(ぼそっ)・・・それにしても」
「えっ? 何か言ったでござるか? 姉上」
「(あわあわ)な、何でも!? 何でもないでござる!
そう! 何でもないんでござるよ、シゲちゃん!」
そ、そう! そうでござる!!
アルファ殿は・・・あ、あやつは!!
拙者達から、可愛い可愛いユキちゃんを取り上げた
にっくきやつなのでござる!!
ちょ、ちょっと、母上と良い勝負したり
洗練された無駄の無い動きだったり
突っかかってくる小娘を庇う必要など無いはずなのに
それとなく気を使ってくれたり、助けてくれたり
色々無礼な事をしたのに、笑って許してくれたり
そんな、にっくき・・・にっくきやつなのでござる!!
そ、そう! 他意なんか無いんでござる!
「・・・うわぁ、どんびきですわ~」
「え? どうかしたんでヤンスか? アネサン?」
『なんやー? どしたんや? ミケ』
(ワイワイ、ワイワイ)
・・・・・・・・・はっ!? ま、まさか!!
ひょ、ひょっとして・・・アルファ殿は
拙者に懸想しちゃったのでござるか!?
だ、だから、拙者に優しく!?
た、確かに拙者は、将来有望な武人でござるし
何より、母上譲りの美貌と凛々しさを兼ね備えてて
故郷でも持て囃された器量良しでござるが!!?
・・・・・・そ、そうでござったか!!
も、もう~~~仕方ないでござるな~~~~!!
これも美女に生まれてしまった者の
逃れられぬ業というものでござるかな~~~!!!!
か~~~~っ!! 辛いでござるな~~~~!!!!
「・・・あれ? 何か顔赤く無いですか? 姉上」
「う!? う、う、うるさいでござるっ!!(ぺちーん)」
「(ヒリヒリ)あたた・・・酷いでござるよ、姉上~!?」




