30 冒険者Aさんと趣味の工房とヒゲの居候
あらすじ:必殺! 再起不能! 烈風ぅ大妖狸突きぃい!! 受けた相手は(男として)死ぬ!
視点:鍛冶工房の裏手にある馬車工房 おやっさんことトウタロウさん
『』:アルファさん
それにしても、今度ぁ、【リューグー】の坊主を拾ってくるかぁ。
・・・不思議なもんだな、アルファの坊主も。
【フソウ】で燻ってた俺を連れ出したのもあいつだし
この目の前にいる食欲魔神の娘っ子を連れて来たのもあいつだ・・・。
「っていうか、お前ぇはどんだけ食ってるんだよ! まだ昼前だろうが!」
「(がつがつがつがつ)はぐはぐはぐ! ふんがふながふんがる!!(がふがふ)」
このドワーフ娘め、最初は宿屋に泊まってやがったのに
俺がここの工房借りて寝泊り始めたのを知ってこっちへ転がり込んできやがったし。
しかも、その後ずっと住みつきやがって、今じゃ完全に居候状態じゃねえか。
くそう、最初におやつとかやったのが失敗だったな。
あんまり腹空かせてやがるから、ちょっとでも可哀想とか思っちまったんだよなぁ。
しくじった!
「おっちゃんおっちゃん! この車体と車軸の間についてるやつって何だい!?」
「おー、それな、この間【アハツェの町】から行商の人来たろ?
そん時に教えてもらった新技術で、鉄を使った【スプリング】ってやつなんだがな。
あっちでは主にベッドとかソファーとかに使ってるらしいんだがよ
試しに「(がつがつがつ)ふんがるる! もがらりいいい!!」
・・・うるせえ! 黙って食ってろ!!」
「ふわー・・・相変わらずエッちゃんよく食うね!
アタイも結構食べる方だけど、エッちゃんはその何倍も食うし!!」
「ったく、人が備蓄してる食いもん片っ端から食いやがって!
おお、それでなぁ、試しに馬車の軸受け部分を独立させて
底板と軸受けの間にこのスプリングを使ってみてんだ。
まあ、まだ試作段階だがな。」
「へえーーー! それでこの馬車、車高が高いんだな!
乗り心地ってどうなんだい?」
「そうだな、まあ悪くは無いんだが要改良ってとこだな。
【スプリング】が堅過ぎるのか、付ける角度の問題なのか
常にグラグラ揺れやがって安定しねえんだよ。
試しに乗ってみたんだが、思いっきり酔ったぜ。」
俺も、昔っから趣味で馬やら馬車やらに乗りまくって
鍛冶仕事の合間に競争したり、最速に挑戦したりしてきたが
馬車酔いとか、本当に久々だよな、何十年ぶりだ?
ある意味、初心に帰った気分だぜー。
「なるほどなー! おっちゃん! アタイもそれ手伝わせておくれよ!
アタイが馬とか馬車とか好きなの知ってるだろ!?」
「まあ、お前さんがやりてえってなら構わねえが
まず両親に許可貰ってからにしろよ?
あと、あっちの仕事は仕事でちゃんとやれ。
それと、俺が居る時以外は触るんじゃねえぞ!
それが守れるんならいいぜい。」
「本当かよ! おっしゃ! おっちゃん話わかるーー!!」
「お前ぇにも手伝わせてやるし乗せてもやるよ。
あと、俺で教えれる事なら色々と教えてやろう。
でもお前ぇさんよぅ、一応女の子なんだから、{おっしゃ!}は辞めとけよ。
あーーー、言葉遣いとか、似るなら親父さんの方にしとけ?」
それにしても、両親が鍛冶師で幼い頃から仕事見て育ったんだろうが
若干10才で親の手伝いだけじゃなくて、俺の趣味仕事にまで興味を示すたぁな。
浪漫を解する娘っ子とかあんまし見た事ねえが、色んな意味で将来有望だな。
それに比べて、この食欲しか頭に無ぇ娘っ子ときたら・・・・。
「・・・ん? ノース、あいつどこ行きやがった!?
さっきまで、そこでふがふが言いながら飯食ってたよな?」
「えっ? エッちゃんかい?
ほんの、ついさっきだけど、何か急に外の一点見つめてたと思ったら
{美味しい料理が呼んでる}とか呟いて、さっさと出てったよ。」
「あん? ・・・あーーー、なるほど。
ひょっとすると、さっきアルファの坊主が【天丼】がどうの言ってたし
どっかで作ってるのかもな、それであいつが気が付いたと。
っていうか、どんな感覚してやがんだ、あいつ。」
「・・・まあ、エッちゃんだしね。」
それにしても、エッセンの野郎・・・あ、いや、娘っ子か。
あいつ、俺より立派なヒゲ生え揃えてっから間違えんだよ!!
いや、そんな事どうでもいいんだ。
あいつにしろ、このノースの嬢ちゃんにしろ
人の生活にぐいぐい入ってきやがって。
こっちは、いっつも振り回されっぱなしじゃねえか、まったく・・・。
これじゃあ、義娘が亡くなったからって、落ち込んでもいられねえや。
へっ! ・・・しょうがねえ娘っ子どもだぜ!!




