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辺境の冒険者Aさん  作者: ミの人
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03 冒険者Aさんと受付嬢の応酬

あらすじ:ミケニャンさんはピチピチの115才


視点:Dランク冒険者 ファイターLv4 マイクさん

『』:アルファさん


「えっ? このクエストは{緊急クエスト}に変更なんですか?」


「ええ、お待たせした上に、こんな結果になってしまってすいませんね。

 このクエストなんですけど、このクエスト依頼書だと

 {Eランク推奨 内容:【西湖の森】の【ボア】の肉40kgと素材納品}

 と記載されてますが、場所の【西湖の森】に住んでる【ボア】は

 Eランクモンスターの【ロングノウズボア】じゃなくて

 Cランクモンスターの【ワイルドボア】なんですよ

 おまけに、肉の部位も素材も具体的な事は書いてませんし・・・」


「えっ!? 【ワイルドボア】って、Eランクどころか

 僕らDランクのパーティでもきついですよ?

 CランクのパーティかBランク推奨なんじゃ?」



 この【オーシュトカ大陸】の【冒険者ギルド】に所属の冒険者のランクは


 駆け出し初心者のFランクから、最上級のAランクまでの6段階。


 まあ・・・さらにその上に、世界的英雄? 扱いで


 Sランクってのもあるらしいけど、僕は実際に見た事も聞いた事も無い。


 まあ、ここ【ナフォード王国】って大陸の端っこにあるド田舎の小国だし。


 ひょっとしたら、南の【ドラント王国】とかには居るのかもしれない。


 ・・・同様に、討伐対象にもなってるモンスターも


 【冒険者ギルド】によってF~Aで{推奨ランク}が設定されてる。


 土地や環境、モンスターなんかの{調査クエスト}で集めた情報を元に


 強さとか危険度とか、希少度なんかから設定されてるらしい。



「一体、何でそんな事に・・・」


「ええとですね・・・このクエスト依頼書。

 別窓口の新人の子が依頼を受注したんですけど

 先程、ギルド長と共に確認した際

 受注後に、その子が勝手に作成した事が発覚しまして」


「・・・え? か・・勝手に?」


「はい。

 冒険者の皆さんも知ってるかと思いますけど

 この支部で受けている依頼は、この窓口で{専用の詳細書}に記入して

 一旦、奥の事務所で職員が内容を精査してるんです。

 そして、内容に合わせて{クエスト依頼書}を作成しています」


「ええ、よく見かける光景ですね」



 そう、よく見かける・・・というか見るつもり無くても目に入るし。


 何しろ、この【タンゴ支部】は他の国の支部に比べたら規模が小さいからね。


 まあ、実際見たことは無くて聞いただけの話だけど・・・。

 

 現状では{依頼の受付}だけじゃなくて、{クエスト受注}や


 {クエスト達成の報告}も全部3つの窓口で行ってる。


 だから、受付が重なる朝方や、冒険者がクエストから帰還する夕方なんかは


 当然、窓口が混んで列になる事も少なくないんだよね。


 職員の人数が少ないのはわかるけど、僕ら冒険者側としては


 もう1つ・2つ窓口増やして欲しいけど、どうにかならないのかな?



「ですが、今回・・・本当に今回だけであって欲しいんですが

 受付後に詳細書を事務所へ渡すのを忘れてたらしく・・・」


「は・・・はあ」


「しかも・・・この期限ギリギリまで放置していた上

 今更それに気付いて、自分で依頼書を作成した・・・と」



 ・・・うん、それだけでもかなりアレだけど、それだけじゃない気がする。


 でも、面倒に巻き込まれそうだし、絶対これ以上は聞きたくないな。



「精査では、モンスターの分布表や、作成の基準表とかを参考にして

 依頼書を作成しているんですけど

 その子は、{何となく見よう見まね}で記入したそうで

 杜撰すぎて依頼書とは呼べない物が出来上がった・・・と」


「それはひどい」


「・・・何でも、{今更事務所へ通したら、バレて怒られるのは嫌}とか

 {何回も見てるし、自分だったらヨユーで作れる}とか思ってやったらしく

 自分のしでかした事を全く自覚して無いようで、正直頭が痛いです」


「・・・(ぽかーん)」



 別窓口の新人の子って言うと・・・。


 でかい声でキャンキャン騒いでた{いかにも頭が緩そうな方}か?


 それとも{ブリッ子丸出しの腹黒そうな方}なのか?


 恐ろしい事するなあ・・・・普通、考えたらわかるじゃないか。


 ・・・あ、いや、考えないからわからないのか。


 じゃあ、あのバカっぽい子の方だろうな。



「ですが、いくら新人の子の失敗とは言いましても

 私達の管理体制や、確認作業に問題があった事は事実です。

 ギルドとしましても、ギルド長がその子に厳重注意を通達し

 事務所の方で再教育を行っています。

 また、再発防止の為にも

 3日後から窓口業務を変更する事になりました」


「窓口業務の変更・・・ですか?」


「はい。

 ここ数年、この支部への依頼数は順調に増加してきましたし

 冒険者さん達の所属人数はそれ以上に急増しましたからね。

 窓口の混雑は、前々から問題になってたんですが

 私達職員の人数もようやく揃ってきましたので

 {依頼の受注}専用に1つ、{クエストの受付}専用に2つ。

 後は{クエスト達成の報告と報酬受取}専用に2つ。

 3部門で合計5つの専門窓口に分ける事になりました」


「あっ! そうなったら僕らも分かりやすいですし

 混むのもかなりマシになりそうですね」


「ですので、明日、明後日で告知を行い

 内装の変更は3日後の夕方から一気に行う予定です。

 それまでは、まだ混雑でご迷惑をおかけすると思いますけど

 変更後は今回のような失態も起き難くなると思いますし

 すみませんが、今回はご了承をお願いします」


「え、ええ。

 まだクエストを受ける前の事ですし

 リマさんには僕らも駆け出しの時からお世話になっていますし

 信用もしてますので」



 確かに、あの新人の子達は2人共、見た目は良いんだよね見た目は。

 

 そりゃ、何も分からない駆け出しには、受けがいいだろうね。


 でも最近、駆け出し以外のベテランの人達の中にも

 

 下心丸出しで声かけてるのをよく見かけるけど、アレどうなのかな。


 冒険者なんて命がけなんだから、達成できるかどうかとか


 難易度と報酬とのバランスとか、ちゃんと考慮した上で


 判断してくれる、信頼できる担当選ぶのが普通だと思うんだけど。


 まあ・・・僕達も冒険者になって1年とちょっとで


 最初はそういう事は考えてなかったし、人の事言えないんだけどね。


 それにしても、アルファさんに色々と忠告受けてから


 リマさんに担当移してもらってて正解だったな。



「それでですね。

 コレに関しましては、期間がギリギリという事もありますので

 私が精査しまして、{Cランク推奨}で{緊急クエスト}に変更して

 明日の朝に貼り出そうかとも思いましたが」



 うーん・・・僕達のパーティは、まだ全員Dランクだしなあ。


 【ワイルドボア】かー、でかい猪のモンスターとは聞いた事あるけど


 僕らじゃ無理だね・・・ま、そもそも、緊急クエストの場合


 最低でも誰かCランク以上が1人は居ないと受けれないから


 どっちにしても無理なんだけどね。



「うーん、それじゃ僕達では受ける事は無理ですね。

 じゃあ、他のクエストを・・・」


「ええ、通常ならばそうなのですが、1つ提案があります。

 丁度、この手のクエストを受けて下さるベテランさんがおりまして

 明日その方に別のクエストをお願いしようかと思っていたのですが

 今回のお詫びも兼ねて、その方へマイクさん達のパーティを

 臨時パーティとして参加させてもらえるように

 お願いしようかと思うのですが、どうでしょうか?」



ん? この手のクエスト? ・・・モンスター討伐?


【ボア】肉と素材納品・・・【ワイルドボア】って確か・・・。


あ、ひょっとして!?



「ええ、以前にも3回ほど組んで頂いてますし、ご存知の方です。

 達成報酬も{緊急クエスト}なので通常の倍になりますし。

 現在の1ランク上の{Cランク推奨}の難易度を体験できます。

 あの方ならクエスト自体も問題なく達成されるでしょうし。

 そんなに危険な事にもならないと思いますが、どうです?」


「あ、やっぱりそうなんですね?

 わかりました! 明日全員でまた来ますので

 臨時パーティに参加でぜひお願いします!」



▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


▽ ▽ ▽ ▽ ▽


▽ ▽ ▽




 うん、どうなるかと思ったけど、結果的にラッキーだったかな。


 せっかくの機会だし、明日は色々と吸収しなきゃな。


 戻ったら質問したい事を纏めとこうっと。



「なあ、リーダー。

 後ろで聞いてても何の事かさっぱりだったんだが

 明日来るって人って、高ランクのすげえ腕前の人なのか?

 【ソードウォリアー】とか【上級クラス】の人とかだったり?」


「え? いや、【ソードウォリアー】とかの戦士系じゃないよ。

 【上級クラス】でもないけど【特殊クラス】ではあるかな?

 Cクラスの【レンジャー】の人だよ。」


「んん!? Cランク【レンジャー】?

 そんな人、このギルドに居たっけ? 有名な人なのか?」


「有名・・・有名と言えばある意味有名かな。

 ほら、いつも小さい獣人の女の子を従者に連れている人居るだろう?」


「・・・は!? あのおっさん!?

 俺もよくは知らんけど、いっつもギルド窓口で騒いでるやつだろ?

 {主従道化}とか{万年Cランク}とか言われてる。

 他にも{しょっちゅう狩場で飯食ってる変人}とも噂聞くけど

 ・・・アレか~~~?」



 えっと・・・組んだ事が無い先輩冒険者の人とかよくそれ言ってるよね。


 まあ、その噂に関しては、実際に間違って無いし否定できない・・・。



「最近だと、よく窓口で受付やってる新人のデルタちゃんとか

 そこに通ってる先輩冒険者達がボロクソにバカにしてるの聞くよな。

 {ダサい雑魚オッサン}で{ダザオ}とか変な渾名まで付けてたぜ?

 【下級クラス】で{攻撃スキルも使えないヘボ戦士}って聞いたけど

 あのおっさん【レンジャー】だったのかよ、全然違うじゃん。

 あん? でもそのクエストってCランクモンスターの討伐前提だろ?

 あのおっさんで倒せんのか? 俺達より弱いんじゃねえの?

 本当に大丈夫なのか?」



 何か最近、そんな悪口がチラホラ聞こえると思ったけど

 

 またあのバカっぽい新人の子のせいか。


 本当酷いな・・・。


 今回の依頼書といい、堂々と悪口言って広めたりとか


 ギルドとしてマイナスにしかならないのに、どれだけバカなんだよ。



「まあ、ヤンキはこの間パーティに入ったばかりだし

 他人の噂とか先入観もあるかもしれないけど

 一緒に行動するだけで、色々と気付かされる事は多いと思うよ」


「へえ・・・どういう事なんだ?」


「僕とケベックは、今までに3回

 臨時パーティとして参加させてもらったんだけどね。

 少なくとも、ここの皆が口にする{冒険者のセオリー}だっけ?

 アレは当てにならないって事は実感したよ」


「は?・・・当てにならない?」


「まあ、その冒険者の事情やパーティの方針にもよるんだろうけど

 僕らみたいに、探索や収集をメインにしてて

 幅広く活動しようっていう冒険者のパーティには特にね。

 だから僕とケベックも、パーティの方針や予定を大きく変更したんだ。

 ヤンキはクラスが【シーフ】じゃないか

 元々【レンジャー】は【シーフ】の派生クラスだし

 共通部分も多いから参考になる事が多いって言ったのさ」


「・・・まあ、リーダーがそう言うならな。

 でもよう、そもそも引き受けてくれるのか?

 クエストも臨時パーティーも」


「んー、多分このクエスト内容ならOKしてくれると思うよ。

 それに、リマさんが頼むなら問題ないんじゃないかな」


「んん? そんなもんなのか?

 まあいいや、じゃあ先に戻ってるケベックのやつにも声かけて

 明日に向けて早めに準備すっか」



▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


▽ ▽ ▽ ▽ ▽


▽ ▽ ▽




「・・・という事で、アルファさん

 お願いできませんでしょうか?」


「ちょっと! 何勝手な事言ってるんですか!

 ね!? ご主人様も何か言って下さいよ!」


『ん~~?

 あ~~~~~~・・・。

 この内容なら、まーええかな?

 何よりリッちゃんのお願いやしなー』


「えーーーーーーー!?

 いいんですか?

 お守りしながらですよ~~!?」


『そうやねんなー

 むしろ、これやったら俺とミケだけの方が楽そうやし

 無駄に人数増えると手間がなあ・・・』



 ・・・・ん? 今回は渋ってる?



「リーダー、何か渋ってねーか?

 本当に大丈夫なのかよ?」


「あー・・・っと、まあ大丈夫だと思うよ。

 そろそろ{リマさんのアレ}が出ると思うから」


「アレ?」



 そう、リマさんは誠実で有能なギルド職員だと思うんだ。


 元冒険者らしく、冒険者の事情も結構知っているし


 理解しているからこそギルド側に不備があれば隠さず謝罪するし


 頼み事があれば正面から真摯に頼んでいる。


 それは、気難しいベテラン相手でも


 生意気な駆け出し冒険者相手でも変わらない。


 そして、本当に頼みたい相手の場合に、見かける光景がある。



「(ぎゅっ)アルファさん!!」



 出た・・・{リマさんのアレ}!!


 ああやって、両手で相手の手を取って



「アルファさんを頼りにしているんです!」



 相手の目を正面からしっかり見てお願いする。


 ・・・【瓶底メガネ】で糸目だけどね。



「どうか、このクエスト受けてもらえませんか!?」



 リマさんの本心までは分からないけど


 媚びる訳でも、利用する気満々でもなく


 正面から真摯に頼めるってのは、地味に凄い事だと思う。


 傍から見ているだけでも


 真剣さって言うか真面目さが伝わってくるし


 実際にコレやられると、僕なんかは非常に断りにくい。


 というか無理。


 まあ、それでも断る人はあっさり断るし


 リマさんもそれ以上無理強いはしない。


 実は僕も、最初にコレやられた時は結構ドキドキしたんだよね。


 リマさんの外見や服装がすっごい地味じゃなかったら


 思わず勘違いしちゃう所だったよね!


 ・・・まさか、それ込みであの見た目と格好とか言わないよね?


 もし、そうだったら、それはそれで凄いけど。



「こっ・・・! このメガネ女っ!!

 ご主人様!? こんな依頼っ・・・」



 そして、これもよく見かける光景になったかな・・・。



『よっしゃー! 任せといてー!! (`・ω・´)キリッ!』


「!!? ご主人様ーーー!!!」



 ・・・ちょろすぎますよ、アルファさん。



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↓ こっちも開始しました・・・開始しちゃいました。
猟団の団長Bさん
こっちはチートや変態成分高めの傭兵稼業です。



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