280 冒険者Aさんと周辺に動き・・・あり?
あらすじ:夜更けにおっさんとおっさんと狸と美少年が火を囲んで談笑。
視点:何だかんだで働き者の従者 ミケニャンさん
『』:アルファさん
「(ぴくっ)あれっ? 何です?」
『(ぴくっ)おっ? 何やコレ?』
「(びくっ)わっ? ど、ど、どうしたんだな?」
「・・・・・・お師様、何か動きが?
何となくですが、観察する様な気配が
幾分か和らいだ様に思えるのですが・・・?」
へえ・・・ユキさん。
この子、あの距離の気配に気付いたんですか?
・・・・・・いえ、違いますわね。
多分ですけど、雰囲気と言うか場の空気を感じ取ったんでしょう。
さすが、戦場を経験してるだけ有りますわ~。
・・・とは言え、さすがに漠然と感じただけで
ミケやご主人様の様に、はっきりとはわからなかった様ですが。
ま、それでもたいしたものですわ!
全く、頼もしいお弟子さんですわね~、むっほっほっほ~。
「(びくっ)えっ!? な、な、何かあっただか!?」
『わははは、まー落ちつきーや、ロバやん。
んーーー、確かに動きは有ったんやけど
ちょっと辺な感じやなー』
「・・・と仰いますと?」
「それはですね、遠巻きに範囲外をウロウロしてた数匹。
多分、大型の狼かそこらだと思いますけど
全部でも7・8匹程度の小規模な群れがですね。
中に入ってこようとしたんですけど」
「(びくびく)け、け、けど?」
『その突入のタイミングで、2匹ぐらいがなー
何かに掴まったんやわ、突然増えた何かに』
「えっ!?」
「・・・突然増えた・・・ですか?」
んーーーーーー? 変な気配ですわね。
熱をほとんど感じないのに、動く気配は有る。
何か意思も感じないから、捕食植物に掴まった?
ですが、昨日今日と見廻った時には
そんなもの有りませんでしたし
もし、そうなら誘き寄せる為の匂いが必ずするはず。
・・・ふむ、匂い・・・匂いですか。
かすかに何かの匂いはするんですけどねー?
はて・・・?
「何でしょうね、ご主人様~? この気配って。
あんまり生物っぽくない感じがするんですけど・・・?
【アンデッド】とも違う感じですし。
【ガーゴイル】とか【ゴーレム】みたいな無機物でしょうか?」
『んーーーーーーーー、せやなー。
熱源はほとんどないから、なーんかそれっぽいよーな?
よーわから・・・・・・あっ・・・』
「「「あっ?」」」
『いや、ひょっとしたらなーって・・・。
いきなり現れたし、まさかな(ごそごそごそ)』
「え、えっと、アルさん。
おで、皆を起こしに行った方がいいだか?」
『あー・・・・・・いや、まだえーわ、ロバやん。
とりあえず・・・っと(ぽいぽいぽいぽい)』
(ギュギュギュギュワッ、バシュシュシュッシュッ)
「では、ミケは確保に・・・」
『いや、ミケ、回収は明日明るくなってからでええわ。
ちょっと反応も確認しときたいしなー』
「承知しましたわ、ご主人様~~~」
「・・・さすがお師様とミケお姉様。
迅速な対応と手際ですね!!」
「(ぽかーん)ふわぁ・・・す、すごいんだな」
『わはは、大したことあらへんって。
それにさっきもゆーたよーに、この辺は慣れやな、慣れ。
ロバやんも慣れたら、このぐらいの事やったら
慌てんでパパッと対応できるよーになるって~』
「う、うーん・・・おでだと
慣れてもそんな風にできるとは思えないんだども」
「な~にを弱気な事を言ってるんですか、ロー。
ご主人様の仰る通り、意外と何とかなるものですわ!
・・・では、ご主人様?
次の動きがあるまでは、朝まで待機ですわね?」
『せやなー。
とりあえず、さっき投げた【トリモチ玉】は4個とも命中。
突入しようとしてきた奴と捕まえた奴。
丁度捕まえたまんまで、2個づつ当たっとるから
どっちも逃げられる事はあらへんやろし。
・・・ま、このまま様子見やなー。
あ、ユキもロバやんも眠ぅなったら
遠慮せんと寝に行ってええからなー?』
「(にこっ)いえ、私はここで一緒に待機しますので。
あっ、さすがに夜更けは少し冷えると思いますし
毛布を取ってまいりますね、お師様」
(とことことことこ)
「あら~、有無を言わさずに行ってしまいましたわね。
・・・ご主人様? ユキさんって
ああ見えて、結構強情ですわよねー。
・・・そういう所、マリさんとよく似てますわー」
「へ、へえ・・・そうなんだか?
おではあまりちゃんと話したことないけんど
マリさんって優しそうなイメージだったんだども?」
『わははは、せやなー。
マリちゃんも、言動は穏やかな感じで振舞っとるけど
絶対に自分の意見押し通す我の強さ持っとるからな~。
一緒に住んどった期間が長いせいもあって
あの姉弟の中やったら、一番ユキが内面的に似とるんちゃうか?』
「ですわよねー、ミケもそう思いますわ~~~。
・・・それにしても、マリさんで思い出しましたけど
あの人、ちょっと逸話多すぎません?
ミケですら、色々な逸話聞いた事ありますよ・・・」
まーーーー、はっきり言って。
幼少の頃からはっちゃけすぎでしょ、あのお姫様。
正直、アホ狐と張り合ってた時ですら
色々と逸話が耳に入ってきてて、関わり合いたくね~~~!
って思ってたんで、目を付けられない様に
アホ狐より、悪さはかなり控え目にしてたんですわよね。
・・・まあ結局、別のヤバイ人達に目を付けられた挙句
関わり合い持つ事になっちゃったんですけど・・・。
いやー、世の中わからないもんですわねー。
「え? い、逸話? い、色々あるんだか・・・」
「そりゃもう、色々ですわよ、色々~。
例えば、旦那との馴れ初めなんか有名ですわよね。
そもそもマリさんの生まれって
とある有名な【大名】の三女なんですけど・・・」
「だ、【大名】? ・・・って何だか?」
『あー、ロバやんは【大名】って知らんかー。
えーっと、この大陸でゆーたら、国の貴族の・・・。
【公爵】とか【侯爵】ぐらいか?
ま、そんな感じの領地持ちの大貴族と思ったらええわ」
「それで、マリさんはですね~。
そんな感じの、言ってしまえば、お姫様だった訳ですわよ。
そして、キヘエさん・・・ローも何回か会ったと思いますけど
マリさんの旦那さんですわね」
「えっと、直接話はしてないども、うん、わかるだ」
「そのキヘエさんは、【大名】の・・・えーっと、配下?
村長ぐらい? まー、そんな感じの家の生まれなんです。
そもそも、雲の上のお姫様と接点なんか生まれない存在
・・・だったんですが」
「で、ですが?」
「その【大名】が、忠誠の証と言うか、裏切り防止用に
配下の嫁さんや子供を、送れと言って来た訳です。
【フソウ】ではよくある話なんですけどねー。
一応、手元に置いて育てる、的な意味も有るんですが
ま、人質みたいなもんですよね~」
「ま、まあ、この国でもそういう事があるのは
おでも聞いた事があるんだな。
おでの生まれの村は、場所がちょっとアレだったから
領主さんも見逃してくれたって聞いたんだな」
『わははは、ロバやんの生まれ故郷って
奥地の山岳とは聞いとったけど、そんなすごいんか~。
それはちょっと見てみたいな。
・・・今度いっぺん、皆で行ってみてもええな~』
「えーっと、それでですねー、人質になったキヘエさんは
年の近かったマリさんの世話廻りになったらしくて
接点ができたそうなんですけど・・・」
「け、けど?」
『マリちゃんがなー。
すっかり気に入ってもーたとゆーか
キヘエに惚れてもーたらしいんやわ~』
「ほーーー?」
「まー、好みの顔なのか性格なのかそれは知りませんけど
ベタ惚れだったらしいですわよ~」
「機転が利く所と将来性だったそうですよ?」
「あら?」
(とことことことこ)
「戻りました、お師様。
全員分の毛布と軽食をお持ちしました。
どうぞ、皆様お使い下さい(にこっ)」
『おっ、ありがと~な~、ユキ。
毛布だけやのーて、保存食用の干し肉とかも
一緒に持ってきてくれたんやな? 助かるわ~~』
「・・・多分こんな感じで
気に入られたんじゃ無いですかね~」
「な、なるほど、なんだな」




