279 冒険者Aさんと本命の夜番 2日目
あらすじ:たっぷり食べて年少組+αは夢の中。
視点:食べるのを早めに切り上げて寝ていた ロバートさん
『』:アルファさん
(パチッパチッ、ザッザッザッ)
「お疲れ様なんだな、アルさん」
『あれ? ロバやん、どしたん?
仮設トイレやったら反対側やで~』
「あ、いや、トイレじゃないんだな。
おでも夜番のお手伝いするんだな、アルさん」
『んー? いや、別に寝ててええで?
俺は、3日4日徹夜とか全然平気やし。
ロバやんも今日は疲れとるやろ?』
「いやいや、むしろ、おでは大した仕事してないんだな。
それよりも、アルさんは夜番2日目だし
本当はアルさんには寝てもらって
おでが代わりに・・・と思ったんだども
おではアルさんみたいに、感知とかできないから
せめて、お手伝いぐらいはさせて欲しいんだな」
『わははは、ロバやんも律儀やな~~。
ま、確かに手伝ってもらえるんやったら、ありがたいわ。
夜番ってのは慣れたもんやったとしても
1人でやっとったら、たま~に睡魔襲ってくるし。
何かあった時に、皆起こしたり、火の始末してもらったり
ちょっとした事でも、手が足らんもんやからな~』
「うん、なんだな。
おでも、店とか倉庫とか、夜番はよくやってたから
その辺は理解してるんだな」
行商で遠征する時なんかは
護衛の人達も夜番を兼ねてたんだども
店や倉庫とかだと、おで達が交代で夜番してただ。
その時も、商会長や古株の先輩達に
1人で夜番をする事の危険性は色々と聞かされてたから
夜番は絶対に2人か3人1組でやってたんだな。
『わはは、そーゆーたらそーやな~。
じゃ、悪いけど朝まで頼むわ、ロバやん。
多分、動きが有るとすれば今晩辺りやろしな~』
「うん、任せて欲しいんだな。
おでにできる事なら何でも手伝うし」
(ザッザッザッ)
「今・・・」
「何でもするとおっしゃいましたか?」
「う、うわっ!?」
『いや、ゆーてへんゆーてへん』
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(バチッバチッ、ボボボボ)
「あー、さっきはびっくりしたんだな」
「むほほほほ! 新鮮な反応でしたわよ~、ロー。
何しろご主人様と来たら、驚かせても無反応ですんで
驚かす甲斐が、無さ過ぎて無さ過ぎて~(やれやれ)」
「ま、まあまあミケお姉様。
お師様は、【広範囲サーチ】使ってらっしゃるんですし
私達の事は元々から気付いてらっしゃったでしょうし」
『せやなー。
2人がテントから出てくるのも感知しとったし』
「あっ、やっぱり、そうなんだな」
『ユキが熱い茶でも差し入れしてくれようとして
先に水汲みに行ってくれたんも感知しとったし』
「ははは、さすがお師様ですね」
『ミケが女性陣のテントを軽く見回りに行ったついでに
食料テントに何かお茶受けになるもん探しに行った・・・』
「むほほ、ミケの気遣いまで気付かれてま・・・」
『・・・と見せかけて、ちゃっかりつまみ食いしてから
何か持ってきた程度・・・の事しか
俺には感知できんかったけどな~? な~? ミケ?』
「げっ・・・」
ええっ!?
・・・そ、その【広域サーチ】って
そんな細かい事までわかるんだか!?
す、すごいんだな!!
「そんな訳ないでしょ、ロー。
ご主人様だから、そこまで感知してたんですわよ。
あと、ミケに対する信頼とか愛情とか愛情とか
その辺りが付け加えられて、感知が倍増されたんですわ!」
「そ、そうだったんだか!?
す、すごいんだな!!」
『流れるよーに嘘をつくのはやめーや、ミケ。
単に今までの経験と慣れと推察やし。
お前、その辺の行動パターンが、昔っから全然変わらんし』
「あ、そうだったんだか・・・そうだったんだか・・・」
「ああっ!? ローからの尊敬度が!?」
(コポポポポ、コトン)
「(にこっ)お師様、どうぞ、熱いお茶です。
夜番という事で、濃い目にしておりますので。
あっ、お2人の分も淹れますので、少しお待ち下さいね」
「ユキさん、一心不乱にお茶淹れてたんですか・・・。
この子も色々な意味で侮れませんわね~」
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「それで、どの様な感じなのですか? お師様。
【結界】のすぐ側までは居るのは居るんですよね?」
「えっ!? そ、そうなんだか?」
「いや、驚く様な事じゃないですわ、ロー。
これまでは、{正体不明の強力な怖い気配}がしてたから
遠巻きに警戒だけして、あえて中には近付かなかったけど
そこに餌が何人も入って行った上に
昼も夜も、中から美味しそうな匂いが漂って来るんですわよ?
そりゃあ、獣だかモンスターだか知りませんけど
何らかの行動起こしても仕方ありませんわよ~~」
『せやな~~。
1日目はまだ警戒強かったやろけど
朝に迂闊に近寄った、2匹を狩った以外は
外側に向けて特に攻撃的な行動起こしとらんし
そろそろ動く奴は動くやろなー』
「な、なるほど・・・」
た、確かにそうなんだな。
なぜかすっかり忘れてたんだども、ここは町の外。
当然、危険な獣だって、強いモンスターだって
居るのが当然なんだな。
むしろ、今まで襲って来なかったのが不思議なぐらい。
それはやっぱり、お堂を警戒して?
あ、いや、お堂に入ってるミケさんの毛? 像?
それを警戒して襲ってこないんだか?
そ、それにしても、アルさんも凄いけど
ミケさんもユキくんも、そこまで理解してたのは。
どっちも凄いと思うんだな・・・、それに比べて
おでは、そこまでは考えてなかったんだな。
野犬とか、泥棒相手の警戒しかしてなかっただ。
実際にモンスターが襲ってきたとして
おでに、何ができるんだか?
むしろ、足を引っ張るだけでないだか?
こんなんで、夜番は慣れてるとか
アルさんのお手伝いをするとか言ってただか。
うう、自分がちょっと情けなくなってきただ。
「いや、何言ってるんです? ロー。
あなたまだ{Eランク冒険者}でしょ?
しかも、まともな活動して、まだ間もない程度の。
知らなくて当然でしょ」
「えっ?」
『ん? な~んや、そんな事気にしとったん?
わははは、そりゃ、経験の差はしゃーないやろ。
考えるだけ無駄ってもんやで、ロバやん。
知らんもんは、どーやったって知らんもんやし。
そっから対策考えるとか無理やろ~』
「(にこっ)はい、ロバートさん、お茶です。
ロバートさん、私の場合は、せいぜい戦場を経験して
戦術的な襲撃を理解している程度ですけど
お師様は【行者】だった期間も含めて、
もう25年近く冒険者として世界中で活躍されてますし
ミケお姉様も、お師様に常に行動を共にしてらっしゃいます。
実に羨ましい限りですよね。
ですので、むしろロバートさんがどうのではなく。
単にお師様が凄いのだと、専門家なのだとお考え下さい。
あ、ちなみに先程、25年近くとお伝えしましたけど
正確には24年と・・・(ぺらぺらぺらぺら)」
「あ、う、うん、わ、わかったんだな、ユキくん」
「ユキさーん、言ってる事は間違ってませんけど
所々にご主人様マニアっぷりが出てきて
さすがのミケも若干引き気味ですわー。
って言うか、何でそこまでご存知なんですのー?」
『わははは、まー、ユキの事はええとして。
ロバやん、俺かって経験しとらんもんは知らんわな。
それこそ、山岳での日常の豆知識とか、まともな行商とか
俺の知らん経験と知識を、ロバやんも持っとるやんか~。
だから、むしろ今回、経験できた~、こんなん知った~
って思えば、それでええやん?』
「なるほど、そ、そうなんだな。
おではまだまだ、冒険者として初心者なんだから
驚いたり嘆いたりしてる場合じゃないんだな」
「(ぺらぺらぺら)そして世界に飛び出たお師様は・・・」
「むっほっほっほ! そうですわ~、ロー。
何事もプラス思考ですわ、プラス思考~。
前向きに捉えれば良いんですわよ~、前向きに~
・・・って、まだ語ってたんですの!?」
『わははは、ユキも色んな意味ですごいな~。
ほれ、ユキ、いつまでも語っとらんと
温かい内に、一緒にお茶飲もうや(なでなで)』
「(にこー)はい、お師様」
「うわぁ・・・一瞬で戻ってきましたわね。
いつもなら、ぐぬってる所ですけど
何かドン引きですわー」
『いや、お前も似たよーなもんやろ』
「えーーーーー?」




