263 冒険者Aさんとたぬき
あらすじ:良い意味でも悪い意味でも思い出補正のおにぎり。
サクさん号泣、そして、たぬき汁。
視点:用事ついでに宿屋の昼食にお呼ばれした ゲンジロウ・フジさん
『』:アルファさん
「何を言ってるんですか~? あなた」
「おいおい・・・マリ、お前こそ何を言ってる???」
・・・・・・ふうむ。
「いや、正直どっちでも良いのでは?(ばい~ん)」
「せやせや、地方で呼び方ちゃうとか、よーある事やんか?」
・・・・・・うむ、確かによく有る事ではあるな。
「(ばっ!)いいえ! {たぬき}と言えば
{短冊切りの油揚げとおネギの入ったあんかけうどん}でしょ?」
「(くるっ!)いや! {たぬき}と言えば
{天かすの入ったうどん}でござろう!?」
(シーーーーーーーーン)
「ウチはどっちも好きやし、両方でかまへんよ?」
「お嬢・・・」
「うむ、困ったものだな」
アルファ君に用事があって、昼前に宿へ来たのだが
まだ、帰ってきてはおらなんだ。
ま、急ぎではないからそれはそれで良い。
丁度、マリ君達も用事で宿へ来ておって
そして、ツリー君に誘われて
全員で昼食を頂く事になったのだが・・・。
「・・・ふう・・・相変わらずマリは頑固だな」
「・・・はあ~、あなたも分からず屋ですわね」
「(たわわんっ)いや、どっちも間違いじゃないんだし
言い合う必要は無いと思うんだけど?」
「(じーーー)せやせや・・・どっちも・・・うまそう・・・」
「・・・・・・ジン? どこ見てゆーとんの?
鼻の下伸びまくってんで?? まだ懲りてへんの?」
うどんと蕎麦、どっちにするかから始まり
マリ君とキヘエ君が{たぬき}と言った事から
現在の状況となったのだよな。
「まあ、マリ君もキヘエ君も、少し落ち着くといい。
確かに{たぬき}と言えば、2人が言った様に
【東フソウ】では{天かすの入ったうどん}の事を指すし
【西フソウ】では、マリ君の言った様に
{短冊切りの油揚げとネギの入ったあんかけうどん}の他に・・・」
「ワイも【西フソウ】やけど、地元の【サッカイの港】辺りやと
{たぬき}は{油揚げの入った蕎麦}やなー」
「「は?」」
「・・・そう、【西フソウ】の中でも指す物が違う。
ちなみに【北フソウ】は【東フソウ】と同じだが
【南フソウ】はもう地域によるとしか言えんのう。
だから2人共、言い争う必要は無いと思うぞ?」
「ウチはどれも好きやわ~(じゅるり)
食べなれとんのは、マリさんと同じあんかけやどね。
甘~いお揚げさんとおネギさんは短冊切りにしてはるから
かぶりつかんでも食べれて、お上品な感じやし
お出汁たっぷりのとろとろ餡と絡まるから
具にもしっかりお味がつくんやね~」
「(にこにこ)そうよね~、ユミネちゃん。
やっぱりあんかけよね? ね?」
「うぐぐ・・・」
「でも、天かすうどんもウチは好きなんよ。
東の方はお出汁やなくて、お醤油が基本やから
濃い目のお醤油の風味がふわって香って
イカとかの揚げ玉を使った天かすやったら
更に風味ドン! や!
お汁を吸ってふわふわのもええし
カリカリの食感のを食べるんもええわ~」
「(にこにこ)そうだろそうだろ?
さすがはユミネ殿、わかってるでござるな!」
「むう~~~」
「お嬢~、ワイんとこのは?」
「うーん、せやね・・・。
ウチ、どっちかとゆーとお上品に食べるより
おっきなお揚げさんにかぶりつく方が好きなんよ。
口の中に熱々で甘~いお汁が溢れ出すあの感覚!
アレがたまらんのよね・・・!!!
で、ウチはおうどんよりお蕎麦の方が好きや」
「おっ? ほんならワイの1人勝ちやったり!?」
「「(ギリッ)・・・・・・」」
ふむ、ユミネのやつも精進しておるな。
食べるだけではなく、味の特徴をとらえ
自分流で表現する事に慣れてきたようだのう。
まあ、私も大体ユミネと同じ意見ではあるのだが・・・。
「・・・いや、ジンの地元のお蕎麦って
コシも風味もないからイマイチ好きやないねんな」
「えー!?」
「「ふふん・・・」」
そうなのだ、ジン君の地元は蕎麦もそうだが
うどんも、麺には拘っておらんのか
ふわっとしたコシの無い物が好まれておる。
いや、鍋物等の締めに使うのではあれば
むしろそちらの方が合うだろうし
結局は、食べる側の好みの問題だからのう。
「ウチとしては、南側のコシ200%のおうどんか
粉を細かく挽いて練りに練った10割のお蕎麦を使って
具には、おっきな甘~いお揚げさんと鴨肉!
生姜とかおネギなんかの薬味がバリッと利いとる
濃いお出汁のとろとろあんかけのが1番やね!!
それがウチが今一番食べた(ぐぅううううううう!!)」
「・・・お嬢はしたないで」
「ええんです!!」
「(うんうん)うむ、それで良いのだユミネよ。
お前に恥じる所などないぞ(ぐーーーーー)」
「ご隠居様まで・・・」
ふっ、仕方あるまい。
ユミネのやつがそんな具体的な話をすれば
私の腹の虫も鳴るというものだ、ふぉっふぉっふぉっ。
・・・ふむ、これで場の流れも変わったな。
「あれ? ところでツリーはんは?
・・・あれ? おチヨはんも居らへんな」
「うむ、ツリー君はお主らが喧々囂々としておる間に
もう準備に入ってくれておるぞ。
ちなみに、おチヨ君も手伝いに行ってくれておる」
「いつの間に・・・ワイも気付かんかったわ・・・」
「・・・ゲンゴロウ?」
「・・・うむ、すまんなマリ。
ははは、俺も少し熱くなりすぎたようだ。
ここは大人しく、ツリー殿の作って来るものを
ありがたく頂こうでは・・・」
「・・・続きは夜に語り合いましょう?(にやり)」
「・・・・・・えっ!?(サーーー)」




