254 冒険者Aさんと不人気なクラス ⑤
あらすじ:地域によっては、頭を「なでる」ではなく
「なぜる」と言いますが、別に誤りじゃないそうです。
視点:色々なスキルの話を聞くのが大好き サーバクン・ミーソットさん
『』:アルファさん
『単純にな?
【レンジャー】の専用スキルは体力消費が少ないんや』
「・・・え? あ、はい」
「うん? それは普通に長所ですよね?」
『せやな、そこは長所や。
例えば、他クラスの専用スキルやったら
1回で体力を2消費するとして
【レンジャー】の場合は、1回で1消費や。
まー、消費だけで見たら、かなり少ないんやけど』
「けど?」
『スキル単体の効果が微妙でなー。
ほとんどが単一の効果しか無い訳やな』
スキルの効果が単一ってどういう事なんだろう?
えっと・・・剣の威力が上がったり、速く動けたり
魔法を使ったり、火をつけたり・・・うーん?
やっぱり、効果って単一が普通なんじゃ・・・?
「単一? 普通そうなんじゃ?」
「それって短所なんですか?」
「いえ、それがですねー。
例えばメガネさん、【シーフ】のスキル
【サーチ】って効果は覚えてますか?」
「えっ? ええ・・・、まず、初期効果範囲は40m。
そして効果は、ある一定以上の熱源を感知できる。
他には、高レベルの【サーチ】だと、追加効果が増えて
ある一定以上の音も感知できる・・・だったかと」
「よく覚えてますね、さすがリマさん」
「へえ・・・【シーフ】って、そんなスキルがあるんだ。
凄い便利そうですね」
えっ! 熱源を感知できるの!? すごいすごい!
それって、海の中でも使えるのかな!?
もし使えるなら、ボク達【リューグー】の住人には
すごいありがたい効果だよね!
海の中だと、視界か音に頼らないといけないから
熱源で感知できるなら、まさかの食料取り放題!?
うーん、これも帰ったらみんなに教えてあげないと!!!
『そんでな? リッちゃん。
【レンジャー】の【広域サーチ】の効果も覚えとる?』
「・・・初期の効果範囲は倍の80mですよね?」
『せやなー』
「効果は・・・効果?
確か説明文には{範囲を把握できる}みたいな事が
書いてあった様な・・・?」
『正解や! ホンマよー覚えとるなー、リッちゃん!』
「え? ・・・は・・・範囲を? 把握?
何なんです? そのふわっとした効果、先生?」
『わっはっはっは! な? 戸惑うやろ?
それなんやけどなライス、実はそのまんまの意味やねん。
{周囲このぐらいまでが効果範囲}ってのがわかるスキルや』
「・・・それって、何の意味があるんですか?」
「役に立たなさそう・・・」
「・・・ま、まあ、私もその説明読んだ時
ちょっと意味が分からなくて、同じ感想でしたけど
先程のお話を聞いてて、少し理解できましたよ」
「えっ? どういう事です? うおっ」
『それはやなー、サバミソ、このスキルってゆーか
【レンジャー】の他のスキルもそーやねんけど
2つ、3つと併せて使うんが基本になるんやわ』
「2つ、3つ同時!?」
「あっ、それが複合してって事なんですね?」
「・・・なるほど、【広域サーチ】の場合は
そこに熱感知の【サーモセンス】を加えて
初めて熱源を感知できる様になるのね」
「うわ・・・面倒臭そうでヤンス」
「お、おでにはちょっと無理そうなんだな」
「ふわぁ・・・ととさますごい!」
「つまり先程、お師様が仰ってた内容は
感知した熱源2つに【マーキング】で印を付け
その印に向かって移動する【ホーミング】を使用して
トリモチ玉を飛ばしたと言う事で
さらに【ホーミング】には【エクステンション】で
{速度上昇}と{距離拡大}を追加してます。
・・・で合ってますでしょうか、お師様?」
『(ぱちぱちぱち)おー、完璧やん! ユキ。
よー、そこまでわかったな、ホンマえらいな!』
「(ぺちぺちぺち)わあ! あにさますごいです!」
「~~~っ!!?(ぶるぶるぶる)」
「・・・何、萌え悶えてるんです? メガネさん。
あなた本当にデレデレ状態じゃないですかー」
「???」
うーん・・・さっきアルさんのやっていた事は
ユキさんの説明で、何となく理解できたけど
逆に1つわからない事が出てきた・・・かな?
『んー? 何か聞きたそーやなー、サバミソ。
遠慮せんとどんどん聞いてええんやで~?』
「え!? あ、はい、えっと、うおっ。
聞いた感じですと、体力消費は多くなっても
組み合わせ次第で色々な事ができそうだから
すごい便利な気がするんですけど、何でその・・・。
あまり人気の無いクラスなんですか? うおっ」
「そりゃもう、面倒臭いからでしょうね」
『やっぱ、面倒臭いからやろーなー』
「手間がかかるからでしょうね」
「そ、そうなん・・・ですね? うおっ」
「うーん・・・それでも需要はありそうな感じが?
面倒だとしても色々応用が利きそう・・・」
『えーっとやな、モブ子ちゃん。
例えばやけど・・・せやな、お蕎麦にしよーか』
「えっ? お、お蕎麦ですか?
あ! おいしかったんで、また食べたいです!」
『うんうん、今度また作ったるわ。
んでな? お蕎麦食うとして
すぐに完成した出来立てが1杯出てくんのと
色々材料だけ用意されてとって、作るのは自分でな!
・・・って言われるのと、どっちがええ?』
「もちろん! 出来たてほやほやです!!
冷たいのも良いですけど、熱々のをこう、ずずずっと!
・・・・・・・・・あっ!? そっか!」
「あーーーーー、その例えでよくわかりました、先生。
それは確かに、冒険者向きじゃないですよねー」
「基本的に冒険者になろうって人種は
家事が苦手だったり、コツコツと地味な作業が嫌いな人が
大抵ですからね・・・そりゃあ不人気にもなりますよ」
「うわぁ・・・」
「う、うん、納得の理由ですよね・・・私も苦手だし」
「まあ、【タンゴの町】限定で付け加えるなら
攻撃系のスキルが無いから、もありますけどね。
実際にギルド内でも、そういう話題がありましたし」
そっかー、こっちも便利そうなんだけど・・・。
でも、不人気なのって、ちょっとわかるかも。
だって、さっきアルさんが簡単に使ってたように見えたけど
ボクだったら絶対無理だもん。
今ですら、ようやく1つづつ使うのがやっとで
ちょっとだけ慣れてきたかな? と思ってきたのに
あんなにポンポンとスキル重ねるなんて無理だよね。
・・・すごいなあアルさん。
ああ言うのって、やっぱり特殊な才能が要るのかな?
「要りませんよ? ご主人様も100%経験則ですし」
「ええっ!? うおっ」
「へっ!? いきなり何の話です? ミケさん」




