25 冒険者Aさんと初めての町で迎える朝
あらすじ:疑惑さんは真実さんへとランクアップしました
視点:アルファさんの従者 権謀術数に長けたポンポコリン 大妖狸ミケニャンさん
『』:アルファさん
『今日は町の案内や!
という訳で、おはようさん、サバミソ。』
「お、おはようございます、うおっ。」
「おはようございます、ご主人様にサバミソ。
ベッドの寝心地はどうでしたか?
ちゃんと寝れましたか?」
「あっ、はい! ベッドって初めて使いましたけど
頭を固定して寝るのって意外と寝やすいですね、うおっ。
掛け布団もふわふわで暖かかったです、うおっ。」
『あーー、姫は別として【リューグー】では{水袋布団}が一般的やったっけ?
んで、常にそこそこ暖かいから掛け布団もいらんし、使っても葉っぱか海草やったな。
羊毛の布団とか初めての体感なんやろうなぁ。』
「それにしても、隣の部屋が丁度空いてて良かったですよね。
空いてなかったら誰かがソファー行きでした(ギョギョギョギョギョギョーーーー!)し。
おやおや、サバミソも腹ペコのようですし
ご主人様っ! 朝ご飯へ行きま(グギャアアアアアアアアアン!)しょう?
オホホホホ、ミケのお腹もそう主張してますですよ!」
『せやな、それにしても、すっごい今更やけど、相変わらずお前の空腹の音ってすごいな。
サバミソの一発ネタっぽい空腹音が完全にインパクト負けしとるやん。』
うほほほ。
朝からご主人様に誉められて 超・ご・機嫌! ですね!!
そういえば昔、狩りの最中に空腹音が鳴って
モンスターが釣られて出て来た事がありましたねぇ・・・。
まあ、きっと美声に釣られたようなものでしょう!
姿だけじゃなくて腹の音まで美しいとか、ミケは本当に罪な女ですわ。
『せやな、罪やわ。』
「平然と心の声に突っ込むご主人様、ステキ! 抱いて!!」
『そんじゃサバミソ、顔洗ったら朝飯や。
朝飯食いながら今日の予定でも話そうか。』
「あっ、はい、うおっ。(心の声って何の事だろ?)」
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(ガチャッ、ギーーー)
「ここの宿屋さんは1階奥が食堂になってるんですね? うおっ。」
『(ドタドタ、ガタッ)どっこらしょーっと。
せやな、この【樫の木亭】はツリーさんが1人でやってる宿屋でな。
このタンゴの町では数少ない{一般向けの宿屋}なんや。』
(ガチャッ、スタスタスタ)
「おや? おはようございます、アルファさんにミケニャンさん。
あと、ええと、サーバクンさんでしたね? おはようございます。
昨晩はゆっくり眠れましたか? (ニコニコ)」
「あっ、はい! おはようございます! うおっ。
ベッドはとても気持ちよかったです! うおっ。」
『おはようさんですわ、ツリーさん。
ボチボチ朝御飯お願いしてもいいですかね?』
「おはようございます、ツリーさん。
ミケとサバミソには大盛り(ギャオオオス!!)でお願いしますね?」
「(ニコニコ)ええ、わかりましたよ。
では少しお待ち下さいねぇ。(スタスタ)」
「そういえば、アルファさん、この町には宿屋って何軒ぐらいあるんですか?」
ご主人様とミケがこの町へ来てから、ずっと泊まってる宿屋【樫の木亭】。
そもそも、この【タンゴの町】には宿屋と呼べる建物は4箇所しかありません。
この【樫の木亭】は一軒家サイズの民宿で、お部屋も2階部分の4部屋のみ。
ご主人様より少し年配の男性であるツリーさんが、お1人で切り盛りされてます。
まあ、お1人とは言っても、午前中だけですが・・・。
『ん、宿屋か? 一応4軒あるで。
一番でっかくて人気なんは大通りにある【ビアー】やな。』
「【冒険者ギルド】の建物の斜め向かいにあるでかいのがそうですよ。
あそこは店の名前にもある通り、ビールが有名なんですけど
特にオリジナルの辛口のやつが大人気で、揚げ物とか肉料理とかとよく合うんですよね。」
『まあ、付け加えるなら、あそこは【ドラント王国】系列の総合宿でな。
冒険者向けの作りになってて、飯も食えて酒も飲めるし、部屋にはシャワー室も有る。
さらに簡易の鍛冶場が備え付けてあるっていう何でも有りな宿屋やな。
【冒険者ギルド】と提携してるから、支所の有る国には大体有るって感じや。
ちなみに、泊まらんでも有料で施設だけ使わせてもらうことも出来てな。
俺らもこの間、ハンバーグ作るのに調理場借りたんやわ。』
「確かこの町では6年前に【冒険者ギルド】の建物を新築した際に
あのアホのじーさ・・・ブラボー氏が色んなコネを使って誘致したそうです。
昔はそんなにやる気に溢れてたんですね、今ではもう見る影もないですが。」
『便利なんやけど、その分お値段もそこそこするから
大体D~Bランクの冒険者に人気やな、ちなみにこの町でも同様らしいで。』
さすがに、収入が無いも同然な駆け出しのFランクや
初心者に毛が生えた程度のEランクだと
あの宿に泊まり続けるのはさすがに難しいんですよねぇ。
Dランク以上の稼ぎであれば、逆に{充実した施設の割りに安い}っていう感じで
上手い具合に料金設定したものですよね、感心します。
「なるほど、そうなんですか・・・あれ?
じゃあ、FランクやEランクの冒険者の人達はどうしてるんですか? うおっ。」
「あー、それはですね、(アンギャアアア!)この田舎町にも唯一の娯楽施設とも言える
大衆向けの酒場がありましてですね、その2階が{木賃宿}になってるんですよ。」
「{木賃宿}って何ですか? うおっ。」
『えっとやな、{木賃宿}ってのは【フソウ】の言い方なんであれやけど
要するに食事無しの安宿なんやわ。
港の近くに建ってる【セイラーズバース】って酒場なんやけどな。
元々ここは港町やし、船乗り向けの酒場やったらしいで。
まあ、名前からしてまんま{船乗りの停泊所}って意味やし。
確か、2階の宿部分は大部屋一つと6人部屋が4つほどあったな。』
「ちなみに、大部屋の定員は一応40人ですけど
ベッドどころか寝具もないので、基本的に床に雑魚寝です。
ですが、それでも野宿よりはよっぽどマシってやつなんですよ。
一応受付で言えば小銅貨1枚で毛布借りれますしね。
場合によっては倍以上の人数が、ギュウギュウ詰めになって
寝転がって夜を明かす・・・なーんて事もよくありますね。」
まあ、新人の中には、節約のつもりで野宿する子達も多いんですけど
実際の所、あれって慣れてないと逆に疲れるだけなんですよね。
追い剥ぎにあったり、暴漢に襲われたりもして危険ですしね。
(ジュワーーーーーーガチャガチャ)
「(クンクン)おお、良い匂いがしてきましたね。(ギャオオオス!)
ここのお宿は一般向けだけあって、他の冒険者も居なくて静かですし
何よりお料理が美味しいし、色々と融通が利くのが良いですよね。」
『せやな、何よりもツリーさんの人の良さには助けられとるなー。
サバミソのような半獣の亜人とか泊めてくれる所って意外と少ないしな。
昨日も遅かったのに急に準備してもらえたし、実にありがたいことや。』
(カチャカチャ、スタスタスタ)
「(ニコニコ)皆さんお待たせしました。
今朝はちょっと食材が少ないので、品目は少なくてすいませんね。
また後ほど買出しへ行く予定ですので。」
「「待ってましたーーー!!(うおっ。)」」
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「美味しかったです、ごちそうさまでした、うおっ。
ここのお料理は【フソウ料理】がメインなんですか?」
「(ニコニコ)はい、御粗末様でした。
気に入ってもらえて何よりです。
亡くなったウチの妻が【フソウ】出身でして
この宿の名前も妻が決めたものなんですよ。」
『そういや、ツリーさんは若い時に【西フソウ】へ料理修行に行ってたんやろ?
確か【サッカイ港】や【ツルツルハシの町】だけやのうて
【ヘイアンの都】とか【イセシマの町】とかへも行ったとか。
いやーー・・・中々の行動派ですなー。』
「でも【ヘイアンの都】とか行った時は意外に思ったんじゃないですか?
こう・・・他国や他の地域からの印象や情報と違うというか。」
「(ニコニコ)ええ・・・確かにそうでしたね。
商人や船乗りの人達から聞いていた話や、【サッカイ港】で聞いた話だと
{蕎麦}や{生湯葉}{湯豆腐}に{お万菜}とかの煮物小鉢
{炊き込みご飯}に{出汁の効いたお吸い物}や{お漬物}といった
いわゆる{これぞ!【フソウ料理】}といったものだったんですが・・・。」
「あっ、それは【リューグー】でも話で聞いたことあります、うおっ。
都へ行けば【フソウ料理】が味わえると・・・あれっ?
という事は違ったんですか? うおっ。」
『まあ一応、違っては無いんや。
ただ、それはどっちかと言うと外向けの料理でな。
外から来た客をもてなす料理・・・とでも言ったらええんかな。
そういう料理専門にやってる店とかは確かにたくさんあるのは間違いないんやけど
でも、実際に住んどる人らがそんな食生活してるわけでも無いんやわ。』
「えっ? そうなんですか?
じゃあ、どういう感じの料理が・・・? うおっ。」
「まずは意外な程にパン食が多いですね、{町中パン屋だらけ}なのに
それで店が潰れないって事は、それだけ食べる人が多いって事ですし。」
「えーーーー!? ぱ・・パンですか? うおっ。」
『そして、{蕎麦}はあんまり食べへん代わりに{ラーメン屋}がめっさ多い。
しかも何故かどの店も{とんこつ醤油+背脂で細ストレート麺}なんやわ。』
「ええっ!? 【ラーメン】って熱々の麺入りスープですよね? うおっ。」
まあ、ミケ的には、あの【都ラーメン】って
基礎が濁りの少ない系のスープなのに、背脂やら何やら足しちゃうから
{お上品したいのかしたくないのかどっちなの?}って感じで中途半端な上
スープがお上品もしくは逆にこってり濃厚なら、{細ストレート麺}でも問題ないけど
中途半端だから{味が絡みにくいし、麺自体のコシも風味も無くない?}って感じで
あまり好みではなかったんですよね。
そういえば、変わり種で【酒粕ラーメン】なんてのもありましたけど、
あれも結局、基礎は【都ラーメン】なんですよね・・・良い酒粕使ってるだけに惜しい。
「(ニコニコ)そうなんですよ・・・まあ、地域差もありますけどね。
例えば、お豆腐屋さんとかでも、{湯葉}や{湯豆腐}より
{薄揚げ}や{がんもどき}の方が圧倒的に好まれてる地域も有りますし。」
『あー・・・、あとあれやな、外向けには{鴨ロース}とか鴨料理が有名やけど
全般的にはやたら【鶏のからあげ】推しやな。
鶏肉専門のお肉屋さんなんてのもそこらにあるし。
その上{お肉屋さんのコロッケ}みたいな感覚で{鶏肉屋のからあげ}が
普通に店先で売ってたりするんやわ。』
「ふわーーー・・・僕の中での【ヘイアンの都】のイメージが
すっかり書き換わっちゃったんですが・・・、うおっ。」
「まあ、そんなものだと思いますよ?
地元の名産とかは地元で消化する事も多いですけど
加工品って、大抵は外との交易品に作ってる物が多いんですよ。
他の地域や町でも、似たような例はいくらでもありますしね。」
『さてと、そんじゃ、朝飯も食ったし
ちょい休んだら、町へ繰り出そかー。』
「かしこまりっ!」




