245 冒険者Aさんと新拠点の安全性
あらすじ:妖怪って不思議生物ですよね?
視点:冒険者ギルド タンゴ支部 ギルドマスター ブラボーさん
『』:アルファさん
「じゃ、ごちそうさん、そろそろ帰るぜ」
「おう、慣れてるとは思うが
暗いと何があるかわからんからな。
油断しないで気をつけて帰れよー」
「ははっ、わかっとるって、お休みなー」
(ギーーー、チリンチリンチリン、バタン)
・・・うーむ。
そうなんじゃよなー。
やっぱりもう少し街灯増やさんとダメじゃな。
あやつは、ここが町になる前からずっと暮らしとるから
別に多少暗くても問題無いんじゃろうけど
寮を利用しとる職員や、町の方に住んどる人にしたら
点々と街灯があっても、真っ暗も同然じゃからな。
こんな時間になったら、もう誰も外を歩いとらんわ。
(スタスタスタ、ギー、パタン)
「・・・ん? アンタ、トロットはもう帰ったのかい?」
「おう、今さっきな。
{ごちそうさん、美味い料理をありがとう}って言ってたぜ?」
「何言ってんだい、ごちそうさんはともかく
アレがそんな気の聞いた事言う訳ないだろ?
私が何年、何十年、アレの面倒も見てきたと思ってんだい」
「わっはっは、タロさんにはバレバレじゃな」
「ああ、バレバレだよ・・・ところでアンタ?」
「ん? なんじゃい」
「寮の周りと街道の灯り、もう少しどうにかならないかい?
そりゃ、昔に比べたら比べ物にならないし
私は慣れてるから別に困ってないんだけど。
新しく入ってきた子達にとっちゃ
真っ暗とたいして変わらないみたいだねえ。
遅くなったら寮まで戻ってくるのが怖いって子も居たよ」
「あー、それな・・・。
俺も今、丁度それ考えてたんだわ。
せめて、寮と【ビアー】と住宅街への街道には
もう少し増やさんといかんよなぁ」
「おや、何だい? もう考えてくれてたのかい。
じゃあ、任せといて大丈夫そうだねえ。
あっはっはっは!!(ばんばんばん)」
「げっほげっほ!? いてえって、タロさん。
・・・ま、その辺は町長達とも話さねえとなあ。
いや、増やすだけなら、そこまで難しくないんだけどよう。
問題は街灯ってのは、蓄積式の【マナ結晶】使うだろ?
増やせば増やす程、地域に【マナ】が溜まるってのがなあ」
問題はそこなんじゃよなー。
昔だったら、街灯ってのはランプをぶら下げてて
1つ1つに油と火を灯すタイプの事だったんじゃが。
今の街灯って言えば、【マナ】を利用したタイプを指しとる。
街灯の先端に蓄積型の【マナ結晶】が取り付けてあって
夜に放出、昼に蓄積と、【マナ】を循環させる便利なやつだな。
まあ、さすがに劣化してくると、吸い込んだり溜め込んだりは
効率落ちてくるから、交換は必要になるんじゃが
それでも、便利な事には変わらん。
油とかの燃料もいらない訳だしな。
問題は吸い残しが、地域に残留するって事だ。
元々空気中には【マナ】が含まれてる訳で
勝手に広範囲に拡散しねえし、消えたりもしねえ。
特殊な道具を使えば、肉眼でも見えるんだが
見た感じだと、無風の時の霧によく似てる感じだな。
残留分は何かの方法で消費しねえと
どんどん溜まって、濃くなっていきやがる。
すると当然、色々と問題が出てくる訳だが。
やっぱり、一番の問題点は周辺の安全面じゃなー。
モンスターの中には、直に【マナ】を取り込むやつもいるし
【マナ】濃度が高い作物とか動物が好物のやつも多い。
結局、それ目当てでモンスターとかが寄って来るんじゃ
いくら明るくても意味無えからなぁ。
【ドラント王国】とかの、でかくて人口も多い町じゃったら
色々と消費も多いから滅多に問題化せんのじゃが。
この田舎町じゃと、増やしすぎるとなあ・・・。
「そうなんだよねえ、一部のモンスターにとっちゃ
餌ぶら下げてるようなもんだしね・・・。
そんなんが寄って来るんじゃ、安全どころか
余計に危険になっちまって、本末転倒だからねえ。
・・・・・・うん? なあ、アンタ?」
「どうしたんじゃ? タロさん」
「いま、あの子達が行ってる新拠点の候補地って
【マナ】が溜まりやすい土地なんだろ?」
「そうじゃな。
その為に泊まりがけで調査しとる訳じゃし」
「作物が育ちやすいのは良い事なんだろうけど
そこの安全性は大丈夫なのかい?
・・・と言うか、あの子達は武装して無いんだろ?
拠点がどうのより、あの子達の無事は大丈夫なのかい?」
「それは、大丈夫に決まっとるわい」
「・・・アンタ、そこには今回、リマちゃん以外にも
アルファさんのとこの小さい子も行ってるんだろ?
何でそんな事言い切れるんだい?(ぎろっ)」
「(あたふた)いや、本当に大丈夫なんじゃって!」
「・・・・・・(じー)」
「(あせあせ)えっとじゃな? タロさん。
その拠点に関しては、マジで安全なんじゃよ。
アルファのやつも保障しとるぐらいじゃ」
「あの子が保障? じゃあ、確かなのかもしれないねえ」
「まあ、俺も詳しい話聞くまで半信半疑だったんじゃが。
・・・下手すると、この町よりも安全かもしれんわ」
「・・・はあ?」




