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辺境の冒険者Aさん  作者: ミの人
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24 冒険者Aさんと後片付けと理解者達

あらすじ:冒険者カードの公開情報は 名前・ランク・クラス・クラスLv・特記事項 だけです。


視点:冒険者ギルド 疑惑は真実? 淑女間で人気 ノーヴェさん

『』:アルファさん


「・・・他の大陸かぁ・・・私はこの国からすら出た事ないのよね。(ボソッ)」


(ジャブジャブ、ギュッギュッ)



ふう、納品分の片付けも一通り済みましたし、書類整理も終わりました。


変更後で多少バタバタしましたけど、割と平穏に何とかなりましたね。


さて、これから血まみれのお二方が汚した床の掃除を・・・っと、おや?



「お疲れ様です、リマ先輩。

 もう床掃除始めてしまってたんですね。

 すいません、僕がやろうと思ってたんですが、少し遅れまして。」


「そちらもお疲れ様です、ノーヴェさん。

 まだ、時間かかるかと思いましたけど、意外と早かったですね。

 掃除は今始めたばかりですよ。」



危ない危ない、間に合いましたか。


乾いた血の汚れや泥汚れって、普通に掃除しても全然落ちませんしね。


リマ先輩に無駄な労力を使わせてしまうところでしたよ。



「ああ、それは良かったです。

 実はですね、アルファさんがクエスト報告で来られた際にこれを預かってまして。

 (スッ、トンッ)」


「え? その瓶は・・・?」


「これ、中身は【フェアリークリーナー】だそうです。

 アルファさんから、汚した床に使ってほしいと、たくさん頂きました。

 これだけあればギルド会館内全てがピカピカにできますね。」


「で、ですねって・・・ノーヴェさん、【フェアリークリーナー】なのよね?」


「はい、希少な【妖精の羽の鱗粉】が原料の{凄く希少な浄化アイテム}で

 滅多に市場に出回らないという{物凄く高価な品}だと聞いた事があります。

 僕は資料でしか見た事無かったんですけど、こんな綺麗な色の粉なんですね。」



石に鉱石、金属・木板・布地関係なく、汚れを綺麗に除去し


それだけでなく、数週間ほど清潔を保つ浄化の効果がある優れもの。


その用途は幅広く、使用も僅かひとつまみで十分。


だけど、そのたったひとつまみですら金貨相当だそうですが


教会関係者ならば{教会や大聖堂の浄化}や{呪いの解除}{上級聖水の材料}


豪商や職人であれば{宝石や水晶の不純物除去}や{製品の洗浄}


他にも人体にも悪影響は無い事から、王族や大貴族の{高級化粧水}等々。


例え高価であっても、このアイテムを求める人は非常に多いそうです。


確か【アルケミスト】による錬金でしか作成できないって聞いたことはあるんですが


そもそも、原料自体が滅多な事では手に入らない物ですしね。


は、ははははは・・・・・・そんな物をこれほど大量にポンと渡されましても。


しかも床掃除にですか・・・まあ、アルファさんらしいと言えば、そうかもしれませんね。



「(キュッ、ポン)では、入り口からひとつまみづつ振り撒いていきますね。」


「えっ!? 使うの!?」


「えっ!? 使わないんですか?」


「物凄く貴重な品なのは・・・。」


「ええ、それもちろん理解してます。」


「さすがに、お返しした方が良くないかしら?」


「・・・それは、アルファさんのお気遣いが色々と無駄になる行為かと。

 むしろ、逆に失礼に当たると思いますよ。」


「アルファさんのお気遣い・・・?」



まあ、僕もその場では違和感だけで、すぐ気付きませんでしたし。


アルファさんは、特にリマ先輩に、そうと気付かせないようにしていたと思うんですが


このままでは、リマ先輩だけでなく、他の方々も誤解してるでしょうし


あえて皆さんの耳にも届く様に・・・と。


あ、でも、それはそれとして、掃除も進めないとダメですね。



(ヒョイ、サラサラサラ・・・・シュワワワワワワ、キラキラキラキラ)


「うわぁ・・・・・・これは凄いですね。

 ねえ、リマ先輩。

 先程、アルファさんが来られた時、疑問に思いませんでしたか?」


「これが【フェアリークリーナー】の浄化・・・綺麗。

 ・・・えっ!? あ、はい?

 ぎ、疑問・・・ですか?」



ふわっ!?。


軽くひとつまみ振り撒いただけで、床の汚れだけでなく


周囲の空気まで綺麗になっていってませんか、これ。


えっ? 血の汚れだけでなく


床板自体が蝋でツヤ出ししたみたいに綺麗に!?



(サラサラサララ~~~、キラキラキラキラ)


「はい。

 リマ先輩、先程登録された半魚人の方? でしょうか?

 あの方どう思われましたか?」


「えっ? どうと言われても・・・。

 うーーーん・・・確かに驚きはしたかしら?

 他の国はそうでもないらしいですけど、この町では亜人の人自体が珍しいですし。」


「僕は凄いビックリしましたよ。

 でも、それ以上に側に居た血まみれのお二人にビックリしました。」


「そうですね、私も同感です。

 ・・・床の汚れは、もうその粉末だけで良さそうですね。

 せっかくですので、この雑巾に少し振り撒いてもらえますか?

 これで机とか拭けば、それだけで掃除完了できそうですし。」


「あ、はいお願いします。(サラサラッ、フワーーー)

 ・・・でも、同時にこうも思いませんでしたか?

 {せめて、水浴びしてから来て欲しかったです}・・・と。」


「はい、それも思いましたね。

 と言うより、登録へ戻ってきた際に、実際そうお伝えましたし。」



えっ!? お、思っただけでなく実際に言ったんですか・・・。


さ、さすがは先輩です。


・・・はっ!? 粉末を摘んだ指どころか手や腕まで綺麗に!?


ああっ・・・もう全身が凄い事に。



(キラキラキラ、ザワッ、ザワザワ)


「(何~~~? なんかキラキラしてるーーーーー!!!)」


「(えーーーー!? ノーヴェ君が光に包まれてない!?)」


「(イケメン君がキラキラしながら振り撒いてて、何か音楽劇みたい!?)」


「僕の場合は、特にクエスト報告を受けてた事もありまして

 さらに一つ思った事があったのですが・・・。」


「さらに、もう一つですか?」


(キラキラキラ・・・ザワザワ)



・・・ちなみに、今現在、こうしている間にも


更にもう一つ気付いてしまいましたが・・・。



「はい、クエストの期限が3日後だったんですよ。」


「・・・?

 ・・・・・・あっ!」


「ええ、お気づきの通り、報告は別に今日じゃなくてもよくありませんか?」


「そうですね。

 それこそ、サーバクンさんの新規登録だってそうです。

 何も今日じゃなくても、後日でも構わないはずです。

 ・・・・・・あれ?」


「ええ、いつものアルファさんであれば

 冒険者の方で混んでいる夕方や朝一番は避けていたでしょうね。」


「・・・そもそも、この粉末をご自身に使えば良かったのでは?」



あっ・・・やはり、先輩もそこに気付きましたか。


ですよね。


現在進行形で、僕の服どころか、体全体が石鹸を使って行水した後に


香油でも振り掛けたみたいな爽やか感覚に包まれてます。


これを使えば床掃除の心配なんてそもそも必要無かった訳ですし。



(キラキラキラキラーーーー)


「(キラキラ)ええと、床の掃除はこれでもう良さそうですね。(キラキラ)

 ・・・それでですね、リマ先輩。(キラキラ)

 アルファさんは、あえて{あの混んでる時間帯}に

 {血まみれの格好}で来られたんだと思いますよ?」


「・・・・・・はあ・・・何となくですが、私も分かってきました。

 このギルドで、一番長くアルファさん達と接してきたはずなんですが

 こんな気遣いにも気付かず、自分が情けなくなってきます。」


「いえ、僕も受付が終わった後、登録を行っているのを端から見ていて偶々気付いた訳ですし。

 アルファさんもそう仕向けてた訳ですから、気付かなくても仕方ないと思いますよ。」


「・・・それでも、ねえ。

 まあ、アルファさんらしいと言えばそうなんですが。」


「(ガタタン)よっこいしょっと。

 リマちゃん、ノーヴェちゃん、こっちの机拭きは終わったわよー。

 と言うか、そのキラキラする粉がこっちにまで飛んできて

 更に勝手に綺麗になっていくんだけどね。

 すごいわね、それ。」


「あっ、フォティさん、お疲れ様です。

 後は明日使う書類だけ補充してもらえますか?」


「はいよ。任せといておくれよ!

 で? ノーヴェちゃん! 勝手に耳に入ってきたんだけど

 結局、アルファさんがどうしたって?

 そっちだけで分かってないで、続きを聞かせておくれよ。」


「えっ!? あ、はい。

 まあ、ご本人が言っていた訳ではなく、僕が勝手に推察しただけなんですが

 半魚人の彼、サーバクンさんでしたか? 彼と我々への配慮って事なんですよ。」


「・・・ノーヴェさんの言葉に付け加えて説明させて頂きますと

 一つは、私達が第一印象で驚き過ぎない様にと言う事です。

 彼よりもインパクトの強いお二人の姿で、意識的に緩和を図ったんでしょうね。

 そしてもう一つは、それによって、彼が傷つかない様に気遣ったという事です。

 初対面の人から嫌な顔をされたり、拒絶されたりすればやはり傷つきますし

 彼の場合、故郷を出たばかりで、まだ若く性格も素直そうでしたので

 特にその辺りに気を使われたのでしょうね。」


「あーーー、なるほどねえ! 確かに、初対面であの子だけいきなり見ちゃったら

 私でもビックリして絶対顔とか態度に出ちゃうわ! うん、自信あるわね!」



そうなんですよね。


第一印象というのは意外と重要で、今後もずっとその印象が残りますから・・・。


正直、魚の頭部というのは嫌悪感を持つ人も居るでしょうし


血まみれ&臓物まみれという、もっと深い嫌悪感を放つ存在を側に置く事で


なるべく本人の印象は薄く・・・という配慮なんでしょうね。


でも、僕としては、更に他の冒険者の人達へのお披露目も兼ねてると思うんですよね。


一度姿を見ればある程度慣れますし、そこで悪くない印象を与えてさえおけば


今後、彼への風当たりも悪くはならないでしょうから。


この国は他国と比べても田舎で、田舎特有の排他的な傾向が多少あると言っても


やはり{冒険者}という人達は、好奇心も順応性も高いですし


受け入れの難易度を下げて、早い内に慣れさせておこうって事なんだと思うんですよね。



「・・・そして、恐らくですけど

 私達ギルド職員の事だけでなく、ここに所属する他の冒険者にも見慣れさせて

 その影響を和らげる、という思惑もあったのでしょうね。

 私も冒険者でしたので経験があるのですけど

 冒険者は{未知のモノ}に対して割とすぐに慣れてしまうんですよね。

 というより、道具に魔法に土地にモンスターに・・・冒険に{未知のモノ}は付き物。

 何にでも順応できなければ、冒険者なんて到底やってられません。

 もっと酷い対象を側に置いておけば、順応させる難易度はぐっと下がりますしね。」

 


おっと・・・、あっという間に僕と同じ予想にまで到達されましたか。


さすがは先輩、さすがは恋のライバルですね。



「なるほどねえ! 要するに

 アルファさんが、あの新人君の為に人肌脱いだって事だねぇ。

 うん、自分を低く見せてもとか粋な事するね! 実にイイ男じゃないか!

 何だったらうちの娘を嫁にやっても良いかもしれないね。」



・・・むむむ、意外な所からもライバル出現でしょうか?


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猟団の団長Bさん
こっちはチートや変態成分高めの傭兵稼業です。



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