232 冒険者Aさんと混迷の職員
あらすじ:タンゴの町より長命な女性職員さんは、色々と見抜いてるようです。
視点:準備の為に早めに帰された リマさん
『』:アルファさん
「とりあえず、これは必要として・・・」
(ごそごそ、パサッ)
「・・・さすがにこれは要らないわよね?」
(ポイッ、ごそごそごそ、バサッ)
「・・・・・・困ったわね」
本当に困った・・・。
どんな服装で、何持って行けば良いのかしら?
前例が無いからさっぱり分からないのよね・・・。
一応、監査って非戦闘員扱いだし
{動きやすくて汚れてもいい服装}って言われてもね。
近場の森って言っても、モンスターの居る地域に行くんだし
最低限、【ソフトレザーアーマー】ぐらいは・・・?
でも、武器や防具の類は必要無いって言われたのよね。
じゃあ、厚手の作業服ぐらいで良いのかしら?
とりあえず、タオルと厚手の手袋に皮袋とかは用意したけど。
う~~~~~~ん・・・困ったわ・・・。
「(ぽつり)・・・それにしても、狩場・・・ね」
何年ぶりかしら? 8年? 7年?
少なくとも6年前に、新ギルド会館に移転してから
近くまで視察には行っても、一度も奥まで入って無いわよね?
これからも入る事はもう無いのかなって、思ってたけど
どうしてこうなっちゃったんだろ?
・・・まあ、どうしてもこうしても無いわね。
全部、アルファさんが言い出した事が原因なのよね。
あの人、私に何をさせたいのかな・・・?
普段からそうだけど、何らかの思惑が有るのよね、多分。
私にギルド職員として、色々な経験を積ませて
新しいギルド長にでも押し上げたいの?
それとも単に、職場の皆みたいに気遣ってくれてて
ストレス解消の気晴らしにでも誘ってくれてるの?
・・・まさか、モッブコットンさんみたいに
冒険者に復帰させようとか思ってたりしないわよね?
あ、あははっ、無い無い、さすがに、それは無いわね。
だって、引退して10年経ってるし、もういい年だもの。
体だって昔みたいには動か・・・いや、調子戻ってない?
貰った、例の【フルーツ水】のせいで・・・。
いやいや、これだってきっと一時的なものなのよ。
それに貰った水ももう・・・いや、まだ結構残ってる。
私だって今更、未練なんて・・・、未練なんて無いもの。
・・・・・・うん、きっと気晴らしよ、気晴らし!
アルファさんの、いつもの冗談みたいなものなのよ!
(ごそごそ、ごそごそ)
「・・・・・・・・・」
いけないいけない、途中から現実逃避してたわ。
・・・それはそうとして、どうしたものかしらね?
こうも準備が捗らないとは思わなかったわ・・・。
監査に同行云々は、もう気にしてないんだけど。
どうせだったら、準備に関しても
もっと具体的に伝えといてくれても良かっ・・・。
(コンコンコン、「リマちゃん? ちょっと良いかしら」)
「(びくっ)ふぁっ!? は、はい! ど、どうぞ!」
(ガチャッ)
「ああ、準備中だったのかい? 急にごめんね」
「いえ、寮母さん、どうかされましたか?」
「いや、さっきアルファさんの所のミケちゃんが来てね?
あなたにコレを渡して欲しいって頼まれたのよ(スッ)」
「(ひょい)えっ? これは・・・メモ? あっ!?」
「何でも、明日の準備に必要な物のメモらしいよ。
大丈夫だと思うけど、念の為に渡してって」
「は、はは、このタイミングでこれですか・・・。
あっ! えっと、ありがとうございます、寮母さん。
丁度、準備に困ってた所ですので、助かりました」
「いえいえ、私は頼まれた物を渡しただけだしね。
それじゃ、リマちゃん、準備頑張ってね~(ひらひら)」
「あ、はい、これで捗りますので・・・」
(パタンッ)
・・・本当にあの人、何なのかしらね?
まるで、見透かされてる様なのは、ちょっとアレだけど。
実際に困ってたのは確かだし・・・。
・・・はあ、考えても仕方ないわね。
早く準備を終わらせま・・・。
(ガチャッ)
「(ひょいっ)あ、そうそう、リマちゃん!
明日の準備ってひょっとして、デートか何かかい?
だったら、頑張るんだよ! 女は度胸だよ! 度胸っ!
アルファさんって押しに弱そうだから
押して押して押しまくるんだよ! 結婚のチャンスだよっ!」
「(かあああああ)ち・が・い・ま・すっ!!」




