225 冒険者Aさんと魔法使いの悩みの種
あらすじ:マイクさんは少し伸び悩んでるようです。
視点:Dランク冒険者 ソーサラーLv4 ケベックさん
『』:アルファさん
うーん、マイクの悩みってそれだったのかー。
何か悩んでるのだけは気付いてたんだけどね・・・。
まあ、マイクって昔から何でも卒なくこなすけど
何かに突出してる特化タイプじゃ無かったし。
それは冒険者になっても変わらなかったんだけど
最近特に、アルファさんのおかげで全体的に強化されて
心に余裕ができちゃったせいなんだろうね。
今までは気にしてなかった所が気になってきた。
そして、自分に必要な事とか越えなきゃダメな壁も
見えてきた・・・って、感じなのかな?
(ズザッ、ブンッ、ズザッ、ブンッ)
「・・・・・うーん・・・何か違うんだよなあ。
でも振りかぶりすぎたら、今度は守りが・・・うーん・・・」
マイクの場合は・・・何だろう?
威力の高い攻撃? それとも壁役としての高い防御力?
多分だけど、課題はいっぱい見えてきてるんだよね。
でも、どれから手をつけていいのかわからないんだと思う。
・・・それは僕も同じだったりするから、よくわかる。
実は僕の場合、更に厄介なんだよね・・・やれる事多すぎて。
僕らのパーティは、前衛の【ファイター】が2人に
中衛もこなせるけど基本的に前衛の【シーフ】が1人。
そして、後衛が【ソーサラー】の僕だ。
はっきり言って、この組み合わせだと
僕が攻撃魔法のスキルで、攻撃役になる意味は無いと思う。
と言う事は、搦め手や補助をメインにすれば良いんだけど
正直、どれ覚えて、どれ使ったら良いのかわからないんだよね。
僕も、新しくスキルを覚えようと思って
朝からギルド会館でスキル一覧の図鑑を見てたんだけど
改めてじっくりと見て、実はびっくりした。
(ズズズッ、シュバッ、ズズズッ、シュバッ)
「うん、これが今の所、一番しっくりくるかな?
今はこれ以上の威力を求めないで、慣らしていく方が良いかも」
「それも良いかもね、マイク。
多分、今の僕らってちょっと焦りすぎなんだよ。
それじゃ、僕も今日の分使いきっちゃおうかな!
色々試したい事有るしね・・・」
何にびっくりしたかって、【ソーサラー】が修得できるスキルには
搦め手や補助スキルが半分近く有ったって事。
・・・しかも、これらのスキルって、正直ヤバくない?
戦闘だけじゃなく、探索にも役立つスキルばかりじゃないか。
効果見るだけで、アレにもコレにもって想像しまくっちゃったよ。
(ペタペタ、グッグッ)
「・・・よし、これぐらいならいけるかな?
じゃあ【フローティング】!!」
(フワッ)
「おおっ!? な、何だ、そのスキル!?
鉄の盾が・・・う、浮いた?
・・・ケベック、新しいの覚えてきたのか?」
「そうだよ、さっき覚えてきたばっかりさ!
凄いだろ? コレ!」
そして何より、僕自身、今までその事に気付いてなかった
・・・って事に1番びっくりしたんだよね。
改めて見た時に、あれっ? こんなのあったっけ?
とか思っちゃったぐらいだからね・・・。
それって結局、前にアルファさんに言われて
攻撃魔法系以外にも目を向ける様にはなってきてたけど
全然それでも甘かった、見れてなかったって事だからね。
いやー・・・自分の事ながら呆れちゃうねー。
これで、{パーティの知恵袋}名乗ってたんだから。
(プカプカ~)
「おっ!? ちょっとびっくりしたな。
触った物を浮かせられるのか?」
「うん、1回で1つしか無理だけどね。
自分の体重の半分までの重さなら何でも浮かせられるんだよ」
「・・・それって 凄いんだか凄くないんだか
イマイチよくわからないんだが。
例えばどんな時に使うんだ?」
「それはね、マイク。
これってスキルを発動した箇所が起点になってて」
「ああ」
「触ってる間はゆっくりだけど上下に操作可能なんだよ。
(ぴたっ)ほら! むむむむむっ!」
(プカプカ、ニョニョニョニョニョ)
「ああ」
「しかも、上に乗れるんだよねコレ(ひょいっ)」
「はあっ!!? 乗れるの!?」
「そうなんだよ、上に乗った重量は含まれないらしいんだ。
しかも、上に乗ったまま操作できるから
そのまま、こんな感じに、よっと・・・」
(プカプカ、ニョニョニョニョニョ、プカプカプカ)
「ええっ!? それって凄くないか?
要はどこでも足場が使えるって事だよな?
な、なあ、ケベック! それって上下だけなのか!?
高さは!? どこまで行けるんだ!?」
「ま、まあ落ち着きなよ、マイク。
今降りるからちょっと待って・・・」
(ニョニョニョニョニョニョ、プカプカ)
「おおーーーー、上だけじゃなくて下にも・・・んっ!?
起点って事は、それって、高い所だけじゃなくて
落とし穴とか下層の探索にも使えるんじゃないか?」
おっと? マイクもさすがだなあ。
ちょっと見ただけでコレの凄さに気付いちゃったかー。
そうなんだよね、発動した箇所が起点になるから
乗ったまま高い所に上がれるだけじゃなく
下にも安全に降りていけるんだよね。
・・・この間のダンジョン探索も
コレがあったらもっと楽だったんだろうなー。
まあ、魔法のスキルは回数制だから
頻繁には使えなかっただろうけどね。
「(すたっ)よいしょっと・・・。
えっと、この【フローティング】の魔法スキルはね。
操作できるのは上下だけなんだよ。
スキルの名前通り{浮いてる}だけ。
範囲は起点から{半径50cm×クラスのLv}だから
今の僕の場合だとLv4で2mまで上下可能だよ」
「2mもか!? うん、それだけでも凄いな。
これが、前のダンジョンの時有ったらなあ・・・」
はは、マイクもやっぱり同じ意見になっちゃうか。
そりゃそうだよねー。
「だね・・・さっき僕もスキルの説明見てそう思ったよ。
と言うか、それで修得したんだよ。
・・・これって多分、ダンジョンだけじゃなくて
色んな所で使えそうじゃない?」
「そうだなー、屋外だったら・・・。
林の中とか、崖なんかでも便利だろうな。
木の上とか崖の中腹の探索にも使えるし。
・・・上に乗って大丈夫な重量ってどのぐらいまでなんだ?
あと、対象の大きさもだな。
それ次第で、汎用性が大きく変わってくると思うけど?」
「さあ、そこまでは載って無かったから僕も知らないけど
どれぐらいなんだろうね? 試しに2人乗ってみようか。
この盾じゃ小さすぎるだろうし・・・(キョロキョロ)
あっ! あの扉ぐらいの大きさの板なんか良いんじゃない?
まだ回数3回残ってるし、あれにもう1回かけ直してみるよ」
「わかった、じゃあ僕が取ってくるよ。
ちょっと待っててくれ」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
「「うわ、マジかー・・・」」
(プカプカ、プカプカ)
乗れちゃったよ、2人共。
しかも片方は、一部だけだけど鉄製の防具を装備してて
武器と盾まで持っちゃってる戦士だよ?
重量で言ったらマイクだけで、僕の倍近いんじゃない?
つまり、今の所は体重3倍まで上に乗ってもOKって事か。
・・・で、対象にしたこの木の板だけど
大きさはさっきの盾の3倍以上有るし
多分、重さもギリギリ僕の半分ぐらい・・・だよね?
うーん、対象の許容範囲はちょっとあやふやだなぁ。
(ニョニョニョニョニョ、プカプカ~)
「おいおい・・・乗れちゃったよ、浮いちゃったよ。
これってもう、汎用性が有るとか無いとか
そんなレベルの話じゃ無いんじゃないか?」
「・・・何かすっごい今更なんだけど」
「うん?」
「魔法スキルって凄かったんだね」
「本当に今更だよ。
でも、気持ちはよく分かる」
「うわ・・・この先、どのスキルを優先的に覚えるとか
どの場面でどれを使うとか、すっごく迷う気がする。
選択肢広がりすぎだよ・・・」
「うん、その気持ちも良くわかる」
うーん、スキルの詳細についてもそうだけど
この辺の事って誰に聞いたら良いんだろ?
ギルド・・・には、当てになりそうな人居ないんだよね。
職員の人にしても冒険者にしても。
よし、ここはアルファさんに聞いてみよう。
どの道、後でマイクと一緒に行くんだし・・・。
さすがに魔法スキルにまで詳しいかは分からないけど
・・・案外知ってそうな気がするんだよなあ。




