223 冒険者Aさんとさらなる根回し
あらすじ:お腹が減ってない時のフォウさんは優秀なのです。
視点:最近余裕ができてきたギルド職員 リマさん
『』:アルファさん
「なるほどぉ、それで町の依頼が少ないんですね~。
町で自給自足できてるんだったら
わざわざ依頼する理由って無いですもんねぇ~?」
「ええ、鍛冶や建築とかで使える資材やモンスター由来の素材も
ギルドでまとめて一括で買い取って、適正価格で卸してますしね。
依頼で頼むと、緊急用の価格なので市場価格より割高ですし
さらにギルドへの手数料も加わりますからね。
まあ、それでも他の依頼主の依頼よりは報酬額が安いので
人気薄の原因になってるんですよね・・・」
「そうだったんですか~、為になるお話ありがとうございますぅ。
ところでぇ、リマ先輩~、もう1つお聞きしたいんですけどぉ?
先輩の美容の秘訣! 教えて欲しいなぁ? 駄目ですかぁ~?」
「えっ!? と、唐突ね・・・それで、えっと・・・美容?
でも、美容って言っても私は特には・・・」
「良いじゃないですかぁ~~、リマせんぱぁ~~い。
教えてくださいよぉ~~? (じーーーーー)」
「ほ、ほら! 自分で言うのも何だけど
私って、もう若くないし、見た目もこんなので地味だし。
そうだ! 化粧のせいじゃないかな? 普段より濃くしてるし!
秘訣なんてある訳無いわよ? あ、あはは・・・」
「(ずいずいっ)え~~~? 本当ですかぁ~~~?
でも、お化粧してない所の地肌が綺麗ですし~~~?
そうじゃなかったら、こんな良い具合にノらないですよぉ?
それに、髪だってツヤツヤじゃないですかぁ~~~?
絶対に前より綺麗になってますってぇ~~~?」
ううっ・・・、さすがに誰か気付くと思って、ごまかす為に
前よりも少し濃い目に化粧してきたんだけど・・・。
普段からお洒落に気を使ってる子には、逆にバレバレ!?
うぐっ、完全に裏目だったかも!?
・・・うう・・・インディアさんのこの目は
もはや、疑ってるというレベル通り越してて
完全に{分かってます、分かってますよー}って確信してて
その上{いいから早く教えてくださいよ}って催促してる目だわ。
でも、マリさんからは、あの【フルーツ水】の事は
絶対秘密、他言無用、門外不出って、何度も念を押されてるから
さすがに教えれないわよね・・・。
「ほ、ほら、皆さんが気を使ってくれたから
ちゃんと休みを取れるようになって体調が良くなっただけですよ。
そんな秘訣とか有る訳ないでしょう?」
「え~~? でもそれだったらそれで凄いと思いますけどぉ?」
「ま、まあ、私の事はどうでもいいじゃないですか。
それよりも、最初の話に戻りますけど
先程も言った通り、この町や町の人達からの依頼は人気薄で
あなたの担当でもそれは変わらないでしょ?」
「・・・そう言えばそう・・・かもしれませんねぇ?
あたしが担当してる冒険者さん達も
大体【ビアー】とか商人経由の割りの良い依頼ですし。
でも仕方ないんじゃ無いですかぁ?
町からの依頼って、報酬額安いですしぃ~。
あたしが冒険者だったとしても、割りの良い方受けますよぉ?」
「そうなの、仕方ないと言えば仕方ないのよね。
そもそも【冒険者ギルド】の規定で、町からの依頼は割引されてるし
納期がほぼ無期限で緊急性が無い依頼の場合だと
重要度も下がるので、さらに依頼料が下がるのよ。
まだ、インディアさんには、窓口での飛び込み依頼だけで
町から直接受ける依頼の算定まではさせてませんでしたけど
その規定の事自体は教えてもらったでしょう?」
「あ、はい~、規定の事は習いましたぁ~」
「その上、内容だって近場の森で薬草の採取とかならまだしも。
樵や猟師のお供に、畑や牧場の手伝いなんてのも有りますよね。
所謂、{命懸けの冒険者っぽい}仕事とはかけ離れている
{地味で危険性も低いけど、結構キツイ}お仕事です。
当然、危険度は低いので料金も安いんですよ・・・。
まあ、開拓された町らしいと言えば、らしい依頼なんですけどね」
窓口で受ける依頼の場合は、料金設定は一応有るけど
基本的に依頼主の提示額に手数料を加えただけだから
ほぼ、そのままに近い金額が反映して貼り出されるのよね。
あくまでも支店内で受けて、支店内だけで管理してる扱いね。
でも、ギルド会館の内務で直接受ける依頼の場合は
【冒険者ギルド】の規定に則って算出してる。
所属している町や村からの場合、規定料金からの割り引きがあり
その差額分は、【ドラント王国】にある本部に申請すれば
補填されるという仕組みになってるのよね。
だから、どの町でも、町からの直接の依頼は安くなるし
その分、冒険者への報酬額安くなる・・・のだけど。
これって、冒険者数が依頼数より多くて取り合いになる様な
大都市とかだったら有効だと思うわよ?
冒険者も依頼数も少ない場合も、問題は無い・・・かな?
でも、この町みたいに冒険者が少ない癖に依頼数が多い場合。
皆、割りの良いのを選ぶから、地元に貢献したいって人や
誰かさんみたいに、よほどの物好きな人じゃないと
どうやっても余る依頼は出てくるのよね・・・。
「う~ん、それで報酬額低いんですねぇ~?
それは確かに人気が無いのも分かるかもぉ・・・」
「まあ、冒険者になる人と言うのは、その手のお仕事を避けた人や
英雄譚に感化されたり、一攫千金を狙う人が大半ですからね。
むしろ、依頼をこなしてくれる人の方が希少なんですよ」
「あ~~~、なるほどぉ~!
それで、先輩大好きのアルファさんに頼りすぎてた~って
さっき言ってたんですねぇ~? (にこっ)」
「ええ、そうそ・・・・・・、ち・が・い・ま・す!!(かあっ)」
「え~~? 先輩をって意味ですよぉ~?
あれぇ~? どうしたんですぅ? 先輩~。
なんだかお顔が赤くなってないですかぁ?
・・・あっ! 先輩・・・もしかして~~~~?(によによ)」
「(かああああ)おほん、何の事でしょうか?
違いますよ? ええ、勘違いなんてしてませんし。
全く、インディアさん、おかしな事を言わないで下さいね」
「はぁ~~~~い! (によによ)」
ううっ・・・この子、苦手だわ・・・。
再教育中のデルタさんと違って、仕事も真面目にするし
色々と気が利く子ではあるんだけど
・・・こういうのを、小悪魔系って言うんだっけ?
人を弄ったり茶化したりするのが好きな上
明らかに反応見て楽しんでるわよね?
普段の仕草や言動も、頭の弱い天然少女装ってるけど
アレって、わざとと言うか、狙ってやってるのよね。
相手によって対応変えてる所が特に。
まるで、どこかの誰かさんを女の子にしたみたい。
・・・本当に、全くもう。
「それでですね。
この手の依頼を一気に引き受けてくれていた
アルファさんなんですが・・・」
「(にやっ)はい、先輩を大好きなアルファさんですね?」
「・・・・・・そのアルファさんですが。
またお弟子さんが増える予定・・・との事で
本格的に、教えたり鍛えたりしたいそうなので
今までアルファさんが自主的に受けてくれていた町の依頼等は
他の人達に割り振って欲しい、と言われてたんですよ」
「へえ~~、あのおっちゃ・・・アルファさんに。
またお弟子さんが増えるんですかぁ?
・・・あれっ? 増える・・・予定?
んん? 言われてたですかぁ~?」
この子、隙あらば私を弄ろうとしてくるわね・・・。
でもね? インディアさん。
私がアルファさんを少し苦手にしてる事を、あなたが気付いてる様に。
私も、あなたがアルファさんを苦手にしてる事は気付いてるのよ?
しかも、かなり苦手よね?
恐らく、アルファさんとは同類だけど・・・いや同類だからこそ
1段どころか2段も3段も格上って気付かされたんじゃない?
おまけに、気持ちではその事を否定したいけど
アルファさんが話す薀蓄や忠告は自分に利益が有るって
頭でわかっちゃうから、否定する事もできないのよね?
「そう、2週間ぐらい前だったかしらね?
ほら、市場で夜通し大宴会していて
2・3日ぐらい閉鎖してた時、あったでしょ?」
「あ~~、ありましたねぇ~!
実はあの時、あたし野菜買いに行ってたんですけどぉ。
何かおめでたい事があったからってぇ
野菜だけじゃなく、お肉とかも色々貰えたんですよ~!
しかもタダですよ、タダ!
おまけに串焼きとかまでご馳走になっちゃってぇ。
すっごい得しちゃいましたよぉ~!」
「・・・まあ、ギルド長から聞いた話では
アレもアルファさん絡みだったんですけどね」
「はぁ・・・、またあのおっちゃん絡みですかぁ~。
どこにでも絡んできますねぇ・・・あっ!」
「・・・まあ、今のは聞かなかった事にしておきます。
それで、その後に訓練場使用した時があったでしょ?
インディアさんも見学として参加した。
・・・その時にアルファさんに言われてたんですよ」
「ありましたねぇ・・・特別研修ぅ。
・・・そういえばぁ、先輩?
あの時、ギルド用に貰った槍ってどうしたんですかぁ?
光る粉が出るの貰ったじゃないかぁ」
「え? アレですか? あの槍は倉庫に保管してますね。
発動に【マナ結晶】が消耗品として必要なので
もう少し備蓄に余裕ができてから、と言う話になりまして。
まあ、飾っても良いんですけど・・・」
あの槍ね・・・聞いた話だと、消耗効率は良いみたいだから
もう少し、結晶が集まったら設置してみますか。
使わないのも勿体無いし。
「・・・それにしてもぉ、先輩?
あの時って言ってましたけど、まだその時ってぇ~
お弟子さんの話って、決定じゃなかったんでしょぉ~?」
「そうですね、決まったのは昨日って言ってましたよ?」
「えっ・・・昨日・・・?」
「ええ、昨日。
しかも、お昼ご飯食べてる時に決まったそうよ?」
「・・・お昼ご飯中に?」
「「・・・・・・・・・」」
「(パンパン!)さっ、雑談は終わりにしますよ。
インディアさんもお仕事、お仕事。
一応、マイクさん達やモッブコットンさん達に
優先的に割り振って欲しいとは言われてますけど
そちらでも任せられそうな人が居れば
声をかけられる様に準備しておいて下さいね」
「は~い、わかりましたぁ~」




