220 冒険者Aさんとどうする? ③
あらすじ:新弟子とその親友の引越しが(強制的に)確定しました。
視点:酒場&木賃宿 セイラーズバース 店主 シックスさん
『』:アルファさん
(ワイワイ、ガヤガヤガヤ、ワイワイ)
「(ごくごくごく、ドンッ)っか~~~~!
仕事終わりのこの1杯は効くな~~~~!!!
ふい~、次は何頼むか・・・ん~?(きょろきょろ)
あれ? マスター、今晩はライスちゃんいねーの?」
「(キュッ、キュッ)あ? ああ、今日は休みだな。
ちなみに、明日も休みになったとこだ」
「へ? 急にどうしたんだ?
風邪でもひいたのか?」
「いや、あの娘なあ・・・。
色々と面倒見てくれるって人が出たんだわ。
上手くいけば冒険者に復帰できるかもしれないんだと」
「おっ!? そりゃめでてぇ!
・・・めでてぇんだよな?」
「おう、めでてぇぞ」
めでてぇに決まってる。
なんせ、小娘のやつ。
3ヶ月・・・、いやもう4ヶ月前か・・・。
大怪我した直後は、怪我の回復と立ち直るのに
1ヶ月近くかかりやがったんだよな。
1人で冒険者続けてたモブコの方も、上手くいってなくて
あいつら、泊まる金どころか飯まで節約しやがってたしよ。
それでなくとも、ヒョロガキだったから見てらんなくて
こっそりと何度かタダ飯食わせてやったんだよな。
で、丁度給仕係が足らなかったから、あいつに声かけて
ここで働いた金で、ようやく生活がマシになったんだよな。
へっ、何だかすげぇ昔の出来事みてぇに感じるぜ。
(ワイワイ、ワイワイ)
「それにしても、冒険者に復帰ねぇ・・・。
大丈夫なのか? ライスちゃん」
「友達のモッブコットンちゃんだっけ?
あの子はまだ続けてるんだよな? 確か。
あ、そっちの燻製肉くれよ、マスター」
「さあねえ? 俺にもわからねえよ。
おう、肉は薄切りでいいのか? ちょっと待ってな」
「マスター、外っかわの部分多目に頼むな~」
実際、大丈夫なのかって聞かれてもな。
まあ、怪我した後は何度か夢でもうなされてたらしいが
ここで働き出してからは、だんだん見なくなってきた
・・・って言ってたし、マシにはなったんだろ。
それに預かってくれるって言ってきたのが
あのアルファさんだしな。
ま、何とかなる・・・いや、何とかするんじゃねえか?
(ガヤガヤ、ガヤガヤ)
「あ~疲れたー、おーい、給仕のねーちゃん。
こっち注文たのまー、俺エールなー!」
「あ、俺も俺も! それと、つまみも適当に頼むわ」
「はーい! ちょっと待っててね~!
店長~! エール2つお願いしまーす!」
「おう」
(カチャ、シューー、カチャ、シューーーーー)
「おーい、できたぞー、持ってってくれー」
「はーい! 今いきまーす!(ととととと)」
「おっ!? 何だそれ? サーバー?」
「マスター、そのサーバーって前から有ったか?」
「ああ、これか? これはな、貰ったのよ。
俺以上にお節介焼きな、とある人からな~。
良いだろ、これ? このボタン押すだけで
毎回同じ量が出てきて、しかも良い感じに冷えてるんだぜ?
こっちのは逆に温かい用だな」
「何それ、すげえ!?」
「すげえな! 俺の乗ってる船にも欲しいぜ!」
「貰ったって誰からなんだ? マスター!」
「がっはっはっは、そいつぁ内緒よ!」
・・・・・・にしても、このサーバーすげえ便利だな。
エール自体が冷えてるから、氷で割らなくてもいいし
それで、味が薄くなっただの何だの言われなくて済む。
温かい方はもっと便利だ。
何しろ、わざわざ小鍋で温めなくていいんだからな。
アレすげえ手間なんだよな。
温めすぎたら焦げるし、足りなかったら変にぬるくてまずい。
ホットで飲みてえってやつに限って、文句も多いんだよなぁ。
その点、こいつぁすげえ。
全体的に適度な温度を保ってて、焦げねえし、風味も飛ばねえ。
・・・何よりも俺が楽だしな!
そして、どっちにも言えるが、地味に有り難えのが量だよな。
必ず設定した量が出てくるって、すげえ有り難え。
何せ、うちみてえな安い酒場に飲みに来るやつらときたら
うるせえと言うか、妙にみみっちいと言うか・・・。
あっちの方が量が多いだの何だのと、一々文句を言いやがる。
がっはっはっは、今後は全部同じ量で出せるからな
もう文句は言わせねえってもんだ!
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(カチャカチャ)
「店長~、厨房の片付け全部終わりましたよ~」
「店内の方も掃除終わりました~」
「おう! みんなご苦労さん。
もう、あがってくれていいぜ!」
「はーい! じゃあ帰る準備してきまーす!」
(ワイワイ、ワイワイ)
ライスのやつ、ここの人手が足りてねえ事を気にしてて
ギリギリまで迷ってたみてえだが、余計なお世話だっつの。
こっちが勝手に面倒見てやってただけだっつの。
あいつは、しばらくは一番混む夕方だけ来るって言い張ってたがな。
うちの酒場で働きてえって子も次々に来て、人手も足りてるしよ。
お前ぇは、これからの自分の心配でもしてろってんだ。
それにしても、うちみてえな酒場ってのは夕方以降がメインになるし
客だって、漁師や船乗りに、稼げてねえ冒険者とか荒っぽいのが多い。
そりゃ当然、イメージは良くねえし、若い子らだって敬遠しがちになるから
前は給仕の募集とかは人伝に頼んで来てもらってたんだが・・・。
まさか、屋台広場の掲示板に張り紙するだけで、ここまで集まるとはな。
ついこの間、この方法を教えてもらって試したばかりだってのによ。
しかも、頼まれてしぶしぶじゃなくて、どの子もやる気に溢れてやがる。
ついでに、その副産物とでも言うのかねえ?
段々と町からの客も来るようになってきたんだよなあ。
若え恋人やら夫婦やら親子連れやら、明らかに違う客層のな。
・・・しっかし、結局、迷ってたあいつが決断できたのって。
人手不足の解消と、このサーバーのおかげだよな?
どっちも、アルファさんには口止めされてたけどよ。
・・・・・・あの人、どんだけ前もって根回ししまくってんだ?




