181 冒険者Aさんと行きはボチボチ帰りが怖い
あらすじ:日帰りの時は帰りの時間も考えましょう。
視点:Dランク冒険者 ファイターLv4 マイクさん
『』:アルファさん
何だコレ・・・。
帰り道に、罠多すぎぃ!!?
何で!? 行きにはこんなのなかったよな!?
明らかに帰りに狙い絞ってきてる!!
「あっ、マイク君、ストップですわよ。
その4歩先の辺りに床の罠が有りますね~」
「ひっ!?
えっと・・・4歩って事は、左足側ですか?」
『せやでー、ほれ、マイクくんもヤンキくんも見てみ?
ソコの床だけ丸型に線が繋がっとるやろ?』
「・・・本当だ、うっすら線が見えますね」
「一周してるって事は、踏むと沈んで発動する?」
『ヤンキくん、惜しいけどちょっとちゃうな~。
踏んで沈み込むとこまでは合っとるんやけど
足を離して元に戻った時に発動する罠やで~』
「元に? ・・・あっ!! な、なるほど。
だから線が残ってるんだよな? おっさん」
『わははは! そうゆーことや。
よー分かったな~、ヤンキくん』
「「??」」
線が・・・? どういう事?
うーん、ヤンキは分かったみたいだし
なら・・・まあ、いいかな?
「いや、よく無いでしょ。
この辺は基本の罠なんですから、【シーフ】に頼らないでも
ちゃ~んと理解して、覚えるんですわよ~?」
「あっ、はい! すいません、ミケニャンさん」
『せやなー。
さっきからチラホラ有る本格的なんはしゃーないとしても
このぐらいは初歩やから、全員覚えておいた方がええわ。
全力で解除せなアカンよーな罠って、神経使うからな~
それ以外の負担は極力減らしたるのもパーティの勤めやで~?』
「はい、分かりました!」
「ちなみにヤンキ?
線が残ってるからって言ってたけど、どういう事?」
「え? あー、えっとだな、線が残ってるって事は
そのまま踏み抜けたりしないで元に戻るって事だろ?
で、周辺にそれらしい跡が無いって事は
動いた後に発動する大掛かりな罠って可能性が高いわけだろ?」
「うん?」
「お、おう?」
「あーー、この類のって、説明ってが難しいな」
『わはは、こうゆーのは慣れやしな~。
まー、ヤンキくんの補足しとくとやな。
踏んで即、発動する罠ってのは、簡単な構造のもんが多いんや。
踏んだら崩れ落ちるとか、矢が飛び出るとか、爆発するとか
【スライム】や岩が上から落ちてくるってのも有るな~。
そこまでは分かるやろ?』
「「はい」」
「ですが、即発動の罠っていうのは、1回切りの罠なんですよね。
ですので、発動後の回収も再利用も考えてない訳です。
さあ、周辺にはそれっぽい跡って何か有りますか?」
「「・・・無いですね」」
「って事は、まだ罠は発動して無いって事になるだろ?」
「「そうだね」」
『基本的に、単発式の罠を仕掛ける時ってのは
一目ではわからんよーに、目立たんよーに仕掛けるもんやろ?』
「あっ! そっか・・・」
「つまり、線が見える、しかも1周してるって事は
踏んで沈んだ後に、元に戻るって事なんですね?」
「即発動しない罠というのは、その後の移動距離や行動も
予測に入れてますから、大掛かりで強力な物が多いんですよね。
発動させたら仕掛けた方にも被害が出る場合は
どっかに、途中で停止できる仕掛けもセットで用意してますし」
『ほれ、よく有るパターンやと扉付きの部屋とか有るやろ?
扉開けて中に入ったら勝手に扉が閉まって
天井が落ちてきたり、中に毒や睡眠ガスが充満したり』
「「「あーーー」」」
確かに、部屋に入ると扉が閉まって~っていうのは
ダンジョンや遺跡の罠としては定番中の定番!!!
まあ、まだ実際に遭遇はしてないんだけどね。
僕ら、基本的に屋外ばっかりだし。
「・・・あの、アルファさん? 謎なんですけど
{中に入ったら扉が閉まる}って、どういう仕組みなんです?
来る途中にあった{感知の罠}とかですか?」
『あー、アレな~。
アレって部屋の床全体が1つのスイッチになっとってな。
①扉が開いた状態で、床に一定の重さが乗ると仕掛けが作動。
②扉が閉まって、天井が落ちてくる。
③扉が閉まった状態で、床に天井の重さが加わると仕掛けが作動。
④天井が元に戻っていき、床掃除と内装再生開始。
・・・って感じやな~』
「ひえ・・・」
「ふあー、そういう仕組みだったんですね」
「なるほどなー・・・」
(ぱん、ぱんっ!)
「はいは~い! ご主人様の罠講座はここまでですわ~。
こんなとこ、さっさと出てしまいましょー」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
(ゾロゾロゾロ)
「や、やっと外だ・・・」
「はひぃ・・・つ、疲れた」
「やれやれ、若いのに情け無いですわね~。
それにしても、糸の大切さが分かったでしょ? あなた達」
「は、はい。
・・・まさか、帰りの通路の外見が丸々入れ替わってるとは」
「パッと見とか、目印にしてた特徴的な岩だけじゃなく
まさか、【ヒカリゴケ】のチョークで書いた印まで
入れ替わってると思いませんでしたよ・・・」
「糸回収しながら帰ってなかったらヤバかった・・・。
ホント、{【ダンジョン糸】だけは疑っちゃいけない}って
言われてる意味が実感させられたよな・・・」
何だこのダンジョン・・・殺意高すぎるだろ!!?
アルファさんとミケさん居なかったら
僕ら何回全滅してたんだ・・・。
うん・・・、コレは僕でも分かる。
このダンジョンって絶対に{Cランク推奨}じゃない!!
「正解ですわよ~、マイク君。
ギルドへ報告しなくちゃいけない案件ですわね~。
調査の甲斐があったって訳ですわよ。
・・・良かったですわね、あなた達。
多分、追加報酬もらえますわよ~?」
『わはは! ほれみんな、もうちょい頑張れよ~。
美味い飯と酒がキミらを待っとるで~?』
「・・・正直、今日はもう、飯や酒よりも寝たいです」
「僕も・・・」
「俺も・・・」
「は~~、やれやれ、情け無いですわね~~~~」




