18 冒険者Aさんとはじめての浜辺飯
あらすじ:ウルトラ上手に茹で上がりましたー!
視点:リューグー人 サーバクン・ミーソットさん
『』:アルファさん
(パチッ、パチパチパチ、グラグラグラグラ)
「アルファさん、この銀色のは【聖鉄紙】ですよね。
確かこれって【フソウ】の特産品の1つで
保温に皿とかに被せて使うものじゃないんですか? うおっ。」
『せやで。
ちなみに、ウチの【五十六商会】の主力商品の一つやな。』
「元々は、他の大陸で【鉄紙】っていうものがありまして
薄い鉄板として、木製の物に貼り付けると耐火・耐水になるので
壁や建物の他に防具や盾なんかに主に使われてるんですが
金メッキに比べて価格が安いので
燭台とか食器や家具等の加工によく利用されてますね。」
「なるほど! そういうのがあるんですね、うおっ。
そうすると【聖鉄紙】って何が違うんですか? うおっ。」
(ジュワーーーーグツグツグツグツ)
「あーーー、それはですね。
【鉄紙】というのは、薄いだけで鉄そのものなんですよ。
ですので、人体には色々と悪い成分も含まれてますので
食関係にはあまり向いてないんですよね。」
あ、それは【乙姫様】だけでなく【キノト様】にもよく注意されている事ですね。
鉄製の物は体に悪い影響があるから、絶対に食べちゃ駄目だし
海に沈んでる鉄製の物の付近の海草なんかも食べない方がいいとおっしゃってました。
特に地上でも、赤褐色の湧き水は絶対飲んじゃダメって厳重注意されてます。
『んでな、【ドラント王国】には【ドワーフ】って亜人種族がおってな。
彼らは鉱物に詳しくて、鍛冶とか細工物とかが大得意なんやけど
その中に【ミスリル箔】っていう、{【ミスリル】でメッキする秘術}があってなー
アレは人体にはほぼ影響ないらしいんやわ。』
「へえ、そうなんですね! うおっ。
【ドワーフ】の人はたまに【リューグー】でも見かけますよ。
おヒゲがもじゃもじゃで、凄く食べて飲まれる方々ですよね? うおっ。
そういえば、【乙姫様】が身につけておられる装飾品なんかは
ほとんどが【ドワーフ】の方々が作った物って聞いたことあります、うおっ。」
『あー、なるほどなー。
あそこは、【フソウ】だけやなくて【ドラント王国】とも割と近いし
新鮮な海産物に、色々な果実、そしてそれから作られる果実酒と
食材が豊富やから【ドワーフ】とか好きそうやな。
まあでも、実はあそこの大陸には、貴重な木や資源の宝庫でな
細工師や錬金術師なんかには垂涎モノの憧れの地でもあるんやで。
(カサカサカサ、クツクツクツ)
・・・おっと、今どんなもんか・・・・うーん、もうちょいやな。』
「え、そうなんですか? うおっ。
あっ、そういえば、商売で外から来てる方が出してるお店って
お金の代わりに森の素材とかでも売ってくれるんですよ、うおっ。」
「あーーー、【リューグー】は{多数の村の集合体}みたいなものですから
貨幣制度とかないですしね。(ゴソゴソ、パチッパチッ)
あっ、ご主人様、魚の方は丁度良い焼け具合ですよ。
・・・確か、前に商会で訪れた時に、【乙姫様】に頼まれて
素材とか各地の貨幣の価値表みたいなの作りませんでしたっけ?」
『おっ、じゃあ先に魚からいっとこか。
食ってる間に、こっちのもええ感じになるやろし。
んー、そういやそんなんも作ったような覚えがあんな。
さすがに16年ぐらい前の相場やしなあ、更新とかどうしてるんやろか。』
「えっ!? あの{相場表}の基礎って
アルファさん達が作ったんですか!? うおっ!」
驚きです!
あの{相場表}って、僕が生まれる前ぐらいに
外から来た商会の人が基礎を作ってくれたって、父さんから聞いてましたけど
それがまさかボクの目の前に居るお二人だとは!!
その縁から、今でもその商会とはお付き合いがあって
毎年、商会の方が定期的に訪れてくれるので
相場の変更は【乙姫様】や族長達が相談して決めてるって聞いた事あります。
(ガサガサ、ヒョイッヒョイッ)
『まあまあ、その話は食いながらでもええやんか。
(ジュワワワ、パチッパチッ)ほいっ、これキミのなー。
よっしゃ、ミケが頑張って釣ってくれた魚の串焼きや、ありがたく頂こか。
あ、おかわりはもう1本づつあるから遠慮せんでええよ。』
「うわっと、ありがとうございます! うおっ。
(シュワワワワワワ)
わぁ、1匹丸ごと串に刺して焼いてあるんですね!
ボクこういう風に食べるの初めてなんですよ、楽しみです、うおっ。
では、頂きます! うおっ。」
「ミケも頂きます!!
(ガブゥッ、ムシャーーー)うっほーーーー! ンマーイイ!!」
なるほど、ああやって豪快に食べるんですね。
(ガブッパリパリパリ、ジュワッ)
ふわっ!? まだチリチリと音がする程、熱々に焼けた皮へかぶりついた途端、
パリッとした食感の皮の下から、凄い量の甘い脂が口いっぱいに飛び込んできました。
(じゅるっ・・・もぐもぐもぐもぐ、フワッ)
そのまま、柔らかくほろっとした白身の部分まで噛みしめると
今度はこの魚特有の身の香り、脂の香り、そして焼けた皮の香ばしい香りが
口の中に広がり、鼻孔から抜けていきます。
かぶりつき、味わい、鼻孔から抜ける感触・・・こ、これはたまらないです!!
(ガブッガブッもぐもぐもぐ、ぷあーーーっうおっ。)
ああ、止まらないですっ! 何度も味わい、そしてまだまだ何度でも味わいたい!
今まで【リューグー】で食べたどの魚料理よりも美味しく感じますっ。
何ででしょうか!? 一応、【リューグー】でも焼き魚はあります。
ですが、この焼き魚はまるで別物です・・・比べ物になりません。
皮はパリパリで香ばしく、身もこんなにしっとり柔らかい上
たっぷりの脂と風味を存分に味わえる・・・焼き魚ってこんなに美味しかったんですね。
何が違うんでしょうか、素材の魚? それとも焼き方!?
もしくは、ここ最近、【リューグー】でも使われだした調味料というやつですか?
ああっ、知りたいっ! でも今はそれよりもこの感動をもっと味わいたい!!
(ガブッ、ムシャムシャムシャムシャ)
「ふわぁあーーー(ぐすっ)おいしいれすーー(じゅるっ) うおっ。」
『うおっ!? ど、どしたんやサーバクンくん。
涙?と鼻水? で顔ぐっしゃぐしゃやぞ。』
「あっ(ずるるるる)す・・・すいません! 感動しすぎちゃいまして、うおっ。」
「感動って・・・確かにおいしいですけど、大げさじゃないですかー?
(もぐもぐもぐ)・・・あー、そういえばそうでした。
【リューグー】って素材は超一流なのに、基本的に食事は生が主流なんでしたっけ。
それでしたら、単純な串焼きとは言え、ちゃんと調理した食事は、さぞ感動的でしょうね。」
『・・・あー、そう言われるとそうやったな、思い出したわ。
刺身とか海草サラダとか果物なんかは抜群に美味かったのに
何か鯛の焼いたやつとかは、単に捌いて焼いただけっぽくて
身の部分は水分も脂も飛んでもうて縮んでパッサパサやった上、味も塩気が無いもんやから
全体的に{硬っ! 干物か!? 素材もったいねえ!}って感じやったもんなあ。』
「というか、全体的に焼いたり煮たりとか、火を使った料理自体が
ほとんど無かったですよね・・・。
調味料も塩と魚醤?っぽいのぐらいしかありませんでしたし。
あの時、【乙姫様】に土産がてらに献上した{【フソウ】の醤油と味噌}が
ちょっと引くぐらいの喜びようだったのは何となく覚えてますよ。」
そうなんです。
【リューグー】では、【リューグージョー】でしか火を使えないという掟があるんです。
それは【リューグー】を創られた【キノト様】が{樹木の神様}という事と
ボクら種族全体的が火に弱いという事が理由だそうです。
そもそも【リューグー】は、日中は太陽の光、夜は月の光が常に淡く注いで来る為
夜でもそこそこ明るく、気候も常にポカポカと暖かいです。
そもそもボクらは種族の特性として、暗くても感覚器官で周囲が把握できますので
火を使う必要性が無いんですよね
ですが、その醤油や味噌を切っ掛けとして【乙姫様】が調味料に興味を持たれたおかげで
今では外の商人の方達から、ある程度調味料を交換で入手できるようになり
ボクらの食卓も少しは変わってきました。
とは言え、【リューグー】を訪れる方の大半が料理を作れる人達ではないので
外の料理自体は伝わってきても、それを実現できてはいないのが現在の状況です。
まあ、ボクが外の世界へ行きたいと思うようになった理由の1つですね。
(カサッ、グツグツグツグツ)
『おっ! こっちの包み焼きもええ感じに火が通ってきたな。』
「(はぐっはぐっはぐっむしゃむしゃむしゃ)ふぃふぃでふへぇ。
ふぉれではゴクン、ご開帳といきましょうよご主人様~。
・・・はっ!!?
何か、{ご開帳}ってエロい響きだと思いませんか! ご主人様っ!!!」
『・・・・・・さて、サーバクンくん包みを開けるで、よ~く見ときや。
この開けた瞬間の蒸気の向こう側に見える光景と香りが最高なんやわ。』
「は・・・はいっ!! うおっ(ワクワク)」
(ガサッ、ブワッモワワワワワワワ、ジュッ、グツグツグツ)
「!!?」
銀色の【聖鉄紙】の包みを開いた瞬間、一瞬前が見えなくなる程の白い湯気。
そして、湯気と共に広がる強烈にお腹が減ってくる程の香り。
これって、貝だけじゃなくて、他の具材や調味料の香りなんでしょうね。
まろやかな匂い、少しツンッとした刺激なのに猛烈にお腹が空いてくる匂い。
何かの香草でしょうか、混じり合う香りの中でも、その存在感が感じられます。
そして、少し湯気が治まり、その向こう側には
焼けた貝の中で沸々と泡を放ち、身の部分が自己主張をしているのが見えます。
あれは・・・ボクらもよく知ってる浅瀬で取れる貝のトコブシですよね。
ボクらはそのまま生で食べちゃいますけど、あれも焼いて食べれるんですね。
火を通したからか、身が少し縮んでますけど、何か汁っぽい液体と黒い・・・醤油でしょうか?
貝の中で身と一緒に火にかけられた事でグツグツと煮立ってます。
あまり経験は無いですけど、この醤油が少し焼けた匂いって良いですよね。
縮んでいるはずなのに、身の部分はぷるっと柔らかそうでつやつやしてる様に見えます。
そして漂ってくる、貝と醤油の焼けた匂いが混じり合った香り・・・・。
うわっ・・・これだけでいつの間にか口の中に涎が溢れてきました。
(ぎょ、ぎょぎょぎょぎょぎょ~~~~)
「ほわっ!? 今のってお腹の鳴った音ですか?
随分と特徴的というか種族主張の激しい音ですね。」
「す、すいませんっ! うおっ。
何かこの光景と香りだけで急激にお腹が・・・、うおっ。
『ええて、ええて。
むしろ思った以上に期待してもらえたみたいで嬉しいわ。
(ガサッ、ジュウウウ)とりあえず、貝は1人6個づついこか。
足らんかったら追加で食ってもええよ。』
「わあっ、頂きます! うおっ。
(ガブッ、じゅるるるるるる)あっふあふ熱っ、うおっ。」
ふわーーーーーーーー!!?
貝に入った熱々のトコブシの身にかぶりついた途端
まず口に広がった濃い目の醤油の塩気と風味! 圧倒的風味!!?
遅れて、トコブシの濃縮された貝の味がじわっと口から喉へ突き抜けてきました。
(もぐもぐもぐもぐ)貝を噛むと濃厚な貝の汁が溢れて、その風味も鼻孔に抜けていきます。
生で食べるとコリコリとした食感で、アレはアレで美味しいと思うんですけど
この(くにゃくにゃっ)柔らかくなってブリブリの弾力性になった食感と
噛む毎に身から溢れ出る旨みたっぷりの汁と少し濃い目の醤油の味が合わさって・・・。
「ふわああああ、(ポロポロポロ)お・・おいしいれう、うおっ。」
『ワハハ、また泣いてもうたか、感動屋さんやな。
(もぐもぐもぐ)んーーー、か~~~~~たまらんな。』
「(じゅるるるるる)米酒と醤油が合わさればやはり最強。」
『まあ、最強がどうかは知らんけど、(じゅるっもぐもぐもぐ)合うよなホンマ。
バター醤油もええんやけど、アレやると具材の味も風味も負けてまうしな。』
「(じゅるるっごくっ)ほふぅ~~うおっ。
それにしても、ボクらがいつも何気なく生で食べてた食材も
調理したらこんなに変わるものなんですね、うおっ。
魚の串焼きもびっくりしましたけど、これはさらに凄いですね! うおっ。
コレだけでも【リューグー】を飛び出てきた甲斐がありました!! うおっ。」
『なんやなんや? コレだけで満足ぅ~? 甘い、甘すぎるでサーバクンくん。
次は(ガササッ、ジュワワワワワワワワ)コレ! いってみよか。』
「こ、これって、さっきの蛙モンスターですよね?」
「ファーー!! コレ! ミケの好物なんですよ! 蛙の照り焼き!!!
(ガッシ、ジュウウウウ)いっただきますわーーーー!!!
(ミチィッがふがふがふ)HUUUUUUUUUUU!!!!」
「(ごくり)あ、じゃ、じゃあボクも頂きますね、うおっ。」
『って、チョイ待ち! 熱々やからキミは素手やと危険や!
ミケみたいな鈍感な野生のナマモノとは違うんやから。』
「(ムチィッミチィッはぐはぐはぐ)んっはーーーー!!!
ご主人様~~そのおっしゃり方は酷いですよーー。」
『やかましいわ駄狸、そんな事言ってるとコレやらんぞ?(スッ、チャプチャプ)』
「ふぁっ!!!!? そうですよ!!その存在をうっかり忘れてました!!!
やはり、それが無いと完結しませんよね!!!
さあ、ご主人様! (わきわきわき)それをミケにも寄越し下されませませませ!!!!」
『わーったっちゅうに、わきわきすんな、ほれ!(トクトクトクトクトクトク)
ところで、サーバクンくんは{成人の儀}終わったって事は酒はもういけるんか?』
「えっと、一応{成人の儀}は終わりましたけど、実はボクまだ14才でして、うおっ。
普通は16才で行うんですけど、外に出る為、特別に早めてもらったんですよ、うおっ。
ですので、せっかくですが遠慮させて頂きます、うおっ。
それに、今はお料理をじっくり味わいたいですので、あ、カエル頂きます、うおっ。」
(ジュワワワワワ)こ・・・これが{照り焼き}ですか
褐色でツヤツヤした見た目ですね、多分コレも醤油だと思うんですけど。
(くんくん)なんだか醤油の尖った香りとはまた違った優しい感じがする匂いですね。
では、さっそく、(ムチッ・・・ブチブチブチッ)・・・はうっ!?
これは・・・(もぐもぐもぐ)甘い!? いや、甘辛い? 甘じょっぱい!?
独特の甘みとしょっぱさと・・・後から来る素材の旨みがすっごい合いますねコレ!!
(もぐもぐもぐ)ボクらも自然に生息しているカエル自体は食べれるんですけど
身の部分も少ないし、ちょっと生臭いから、わざわざ食べるほどじゃ無かったんですよね。
でも、このカエルのお肉はすごいですね! 身がたっぷりでちっとも生臭くない。
これってモンスターだからなんでしょうか? いえ、それだけじゃないですね。
(ぱくっ、カリッ、もぐもぐ)やっぱり、この表面に塗ってあるタレ!
味や風味だけでなく、表面にバリッとした感触を加えてて
多分、これのおかげで中の汁が外に流れ出さないんでしょうね。
だから、身の部分がパサパサにならずに弾力性と旨みに溢れるお肉になってるんでしょう。
(カリカリッ、ジュワッ、もぐもぐもぐ)それにしても、このタレ・・・。
「あ、あのっ! アルファさん、うおっ。
この{照り焼き}でしたっけ、このタレって他の料理に・・・
他の魚やお肉に塗っても、ひょっとして!!? うおっ。」
『(ニヤリ)・・・そう! キミが今気付いた通りや。」
「そ・・それじゃあ・・・うおっ。」
『{照り焼き}のタレ・・・。
ぶっちゃけ、コレは肉魚だけやのうて、野菜だろうがキノコだろうが
大概の食材に塗っても大体美味くなる万能調味料!!
よう気付いたなー、中々見込みあるやんキミ。』
「ちなみに、タレの作り方は、お醤油と砂糖と【フソウ】の米酒を混ぜたものを
塗って焼くだけでもできますので、【リューグー】でも作れますよ。
お魚はもちろんの事、海老や貝なんかに塗っても合いますし
帰った時にでも色々試して、皆に振舞ってあげたら喜ばれると思いますよ。」
なるほど! それなら、ボクにでも作れそうです!
それにしても、不思議と後を引く味ですね。(はぐはぐはぐ)
食べても食べても飽きるどころかもっと欲しくなってきます!?
『(ニコニコ)そんなに嬉しそうに食べてもろたら
こっちも振舞った甲斐があったもんやってな。
さー、まだまだあるし、遠慮せんでた~んと食うんやで。』




