177 冒険者Aさんと習性
あらすじ:海の中では日常的に凄惨な光景が広がってるようです。
視点:主従共々、燃やすの大好き ミケニャンさん
『』:アルファさん
(バチッバチッ、ゴオオオオ、シュワアアアア)
「・・・えっと・・・すっげえ燃えてるな」
「ああ、燃えてるな」
「何で自分から燃えに行ったんだろ? あの【ゾンビ】」
『あーーー、一応、薬草とか色々混ぜとるから
多分、有害なガスは発生してへんと思うけど
元が何かの【ゾンビ】やし、あんまし、煙は吸うなよ?
あと、燃え尽きるまでは警戒しとけよ?』
「気合の入った所に、水を差した様ですみませんわね~。
ご主人様も、本当は、あなた達に任せるつもりでしたが
ちょっと面倒そうな相手でしたので」
「えっ? いえ、まあ僕らは別に・・・うわ! くさっ!?」
『こら、アカンなー(ごそごそ)
あと【小オイル】2個ほど追加して、一気に燃やすか。
ほれ、みんな、燃え尽きるまでちょい離れるで~』
「あっ! はい! 2人共下がるぞ!」
『そりゃそりゃ(ぽいぽいっ)』
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
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▽ ▽ ▽
▽
「「「・・・・・・」」」
「ひゃっほ~~~い!!
さっすが、ご主人様の【小オイル】!!
素晴らしい火力でしたわ~~~~!!!」
『ミケは相変わらず、炎が大好きやな~?』
「いえいえ、ご主人様ほどじゃ~~(げらげらげら)」
「あ・・・あの・・・? 結局さっきのは一体?」
「【ゾンビ】ってあんなにしぶとかったか?」
そりゃまあ、幾らなんでも、そう思いますわよね。
{ご主人様の【小オイル】}を3本も・・・。
3本も使う必要があった相手ですからねー。
多分、アレの素体って、上級モンスターでしょうね。
耐久力からしたら{Bランク推奨}ってとこですか?
恐らく、さっきの{感知の罠}で解放された
このダンジョンの切り札的な戦力で、侵入者を探して
ウロウロと通路を徘徊してたってとこじゃないですか?
まっ! ご主人様の足元にも及びませんでしたけどね!!
『まー、それはともかくとしてなー。
相手の正体が分からんで、迷った時とかは、あんな感じで
手前ら辺に【小オイル】とかを投げこんどくとええで。
相手の習性を利用できるからな~』
「習性・・・ですか?」
「俺、【ゾンビ】って火を怖がると思ってたんだけどな。
だって【アンデッド】って火が弱点なんだろ?」
「僕もそう思ってたんだけどね・・・。
まさか自分から飛び込むとは思わなかったよ」
「まー、そー勘違いしてる人は多いでしょうねー」
「え? 勘違い? ・・・なんスか? 耳の姐さん!」
「そうですわよー。
だって、【アンデッド】には感情も知性も無いんですから
{怖がる}なんて考え、有る訳無いでしょう?
それに、アレはですね~、むしろその逆なんです」
「「「逆?」」」
『せやでー。
そもそも【アンデッド】ってのはな・・・。
死体に、彷徨っとる霊魂が乗り移っただの
強い未練があって、蘇っただのってのが大半なんや。
キミらも、そーゆー存在やって聞いた事はあるやろ?』
「ま、まあ、そういう存在らしいってのは聞いた事ありますね」
「・・・んで、それがどうしたんだよ、おっさん」
『つまりやな? 基本的に【アンデッド】ってのは
自我が有ろうが無かろうが{浄化されたがっとる}訳や。
本能とゆーか、宿っとる魂の習性みたいなもんやろな。
早くこの世の苦しみから解放されたいってなー』
「・・・・・・あーーーーー、それで!?」
「・・・そりゃ、そうか。
あいつらって見るからに苦しそうだし
死んで楽になれるなら、さっさと死にたいだろーな」
「・・・・・・あれ? つまり、どういうこと?」
「「・・・えっ?」」
「はあーーーーーーーーー、ケベック君。
あなた{パーティの知恵袋}なんでしょ?
それぐらい察して下さいな。
本能では魂の浄化、死にたがってるから
火を見たら飛び込みますし、燃えても抵抗しないんですよ。
それで、火が弱点なんて言われてるんですわよ。
ミケが勘違いと言った意味がわかりましたか~?」
「あ、いえ・・・、そっちは理解できてるんですけど
そうなると、別の疑問が出てきちゃいまして・・・。
えっと、ほら! 高位の【アンデッド】の中には
火に対する抵抗力が有るのも居るそうじゃないですか?
それって、どう言う存在なのかなって・・・?」
「あら? あらあら?。
あーー、それはすみませんでしたわ。
てっきり、いつもの・・・げふんげふん」
「えっ!? いつもの!?」
なるほどなるほど~~。
これは、ミケの早とちりでしたわね~。
ケベック君って{パーティの知恵袋}とか自称してますけど
知恵袋の後に(笑)が付く様な事をたまに言いだしますので
てっきり、今回もまたそれかと・・・。
まー確かに、そういう疑問も出てくるでしょうね~。
でも、その答えは割と簡単なんですよ。
『それはやなー、高位の【アンデッド】って、知性が残ってて
浄化させられたくないから抵抗してる・・・らしいで?
本能から来る衝動を、必死に精神力で押さえつけとる訳やな』
「あれ? それって・・・」
『おっ? それも聞いた事あるんやな、ええでええで~。
冒険者なら、そうゆー知識は持っとくべきや。
せや、【精神抵抗】って呼ばれとる、対抗方法やな。
もしくは、知性が残っとるんやったら、装備品やアイテムとかで
弱点補えるやろ? そこら辺は冒険者と同じやな~』
「あ、そっか・・・【リッチ】みたいな高位の【アンデッド】って
装飾品をジャラジャラ付けてるイメージが有ったけど
それが全部マジックアイテムだとしてもおかしくないんだ・・・」
「なるほどなー」
「まー、その他ですと、単純に元になった素体が
火とかに強いって場合もありますけどねー」
「ああ、なるほど・・・その場合もあるんですね。
確か、前に狩った【鎧ネズミ】の皮も火が効き難いらしいし。
それこそ【ドラゴン】の系統だったら
火だけじゃなく、他にも色々な耐性持ってそうですよね。
・・・まあ僕は【ドラゴン】が素体の【ゾンビ】なんて
絶対に戦いたくないですし、遭遇したら絶対逃げますけどね」
「あーーー、確かにアレは面倒でしたわね~、ご主人様~?」
『ほんまになー』
「「「え”っ?」」」
(パチパチ・・・パチ・・・パチ・・・)
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▽
(ザッザッザッ、カシャカシャカシャ)
「(もぐもぐ、ごくん)そういえば、アルファさん。
投げた火に対して【アンデッド】以外だと
何か判別方法が有るんですか?」
『お? おーー、他の判別方法も有るで~?
例えば、虫とかトカゲ系も割と火に近寄ってくる。
あのタイプは、真っ暗の中でも生きていく術として
熱や明るさで、周囲や対象を判別する習性が有るからな。
・・・まー、近付きすぎて火に飛び込んで
そのまま燃え尽きてまうやつも多いけどなー』
「何かそこだけ聞くと【アンデッド】みたいですね」
「生きる為と死ぬ為、目的としては真逆なんですよねー。
ちなみに、屋外のトカゲやヘビは鱗が強いので
火に対して耐性が有るのが多いんですけど。
こんな真っ暗の中に住んでるのは、大抵ヤモリみたいな
白っぽいフニャフニャしたのばかりですから
火に強いのってあんまり居ないんですよねー」
『他には、獣とかやと、火を警戒するから
一旦止まるか離れるかやな・・・なー? ミケ?』
「・・・なぜそこでミケに振るんです? ご主人様~?」
『(にやにや)いや~、だってお前、正真正銘の
けも「違いますわーー!!」のぬわーっ!?』
「ふがーーー!! ふがー! ふにゃ~(もがもが)」
んもーーー! ご主人様ってば!
ミケの事が大好きで大好きで仕方ないからって
たまにこんな意地悪を言うんですわ~~!!!?
だから、ミケがしがみついて、クンカクンカしたって
許されますわよね! ええ! ミケが許しますとも!!
というわけで、ふんがふんがふんが~~~~~!!!
「あ、あの・・・アルファさん、ミケニャンさん。
さすがに、じゃれ合うのは控えてもらえると・・・」
「『すんませーん』」
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▽
「(きょろきょろ)なるほど・・・っと。
左右両方とも、通路には何も居ないっぽいぜ。
どっち行くんだリーダー?」
「そうだな・・・ちょっと待ってくれ、ヤンキ。
ケベック、地図だとどっちの通路が長くなってそうだ?」
(ガサガサ、ガサガサ)
「(書き書き)えーっと、僕がマッピングした感じだと
入り口がここで、こう来て・・・今ここだから・・・。
マイク、多分長い通路は右だと思う。
左に行くと、行き止まりなんじゃないかな・・・」
「そっか、じゃあ左だな」
「『うんうん(にこにこ)』」




