176 冒険者Aさんと接敵前の対応
あらすじ:ダンジョン内でバカ騒ぎしてはいけません。
視点:Eランク冒険者 ソーサラーLv2 サーバクン・ミーソットさん
『』:アルファさん
「私、このぐらいの微妙な距離って苦手なんですよ。
いっつもどうしようか迷っちゃうんですよね・・・」
「お、おでも苦手なんだな」
「ぼ、ボクもです、うおっ」
(ズリッ、ズリッ、ズッ、ズッ)
「まあ、苦手と言うのは、私も理解できますよ?
相手との距離が適度にあって、先手を打てそうだから
戦うべきかどうか迷ってしまうんですよね?」
「はい」
で、ですよね?
ダンジョンは今回が初めてですけど
今まで、クエストに行った時に何回かこんな場面があって。
相手とは距離がある上、向こうも気付いてないから
先制できそうなんだけど、戦うべきかやり過ごすか
毎回、すごい迷っちゃうんですよね。
ボクはまだ地上に来てからの日も浅いし
冒険者としても、駆け出しも駆け出し。
正直、全然自分の判断なんて全く信じてないから
いっつも、ローさんやモブコさんに頼りっきり。
それはそれで、自分でも情けないと思うんですけど
勝手な判断とか思い込みで行動して
迷惑かけちゃうよりは良い・・・よね?
「そして、先手を打つなら打つで、弓矢や魔法スキル。
どの手段を使って遠距離から攻撃するか?
それも迷う理由ですよね?
現状では、まだ相手の正体がわかりませんし」
「そ、そうなんだな」
そうなんですよね・・・。
戦う事が決まって、じゃあ先制攻撃! ってなっても
それはそれで、今度はどの方法で攻撃するのか
そこで、迷っちゃうんですよねー。
弓? は持ってませんし使った事も無いので無理として
石を投げる? それともナイフを投げる?
まあ、ボクの場合だったら魔法スキルかな?
でも、じゃあ・・・。
「そして、サバミソ君の場合、使うスキルで迷いますよね?
何しろ【ソーサラー】の魔法スキルは、回数制ですから」
「はい、そうなんですよ。
ボク、まだ{1ランク魔法}しか使えませんし
最大でも4回なので、使っていかわからないんです、うおっ」
「あれ? 最大4回とは、すごいですね、サバミソ君。
私なんてまだ2回ですし。
そういえば、サバミソ君は{魔力容量}が高かったと
お師様から聞いてましたし、将来有望ですね」
「へえ・・・すごいのね! サバミソ君。
私には、良くわからないけど!」
「うん、す、すごいんだな! サバミソくん。
お、おでも良くわからないけども!」
え、えへへ、誉められちゃいました!
・・・はっ!? で、でも、そうですよね?
ユキさんの言った通りなんですよね。
ボクの場合、【ソーサラー】のスキルが有るけど
【コモンスキル】も便利なのが有って
そのどっちを使うか、いつも迷っちゃう・・・。
【ソーサラー】のスキルって、回数制で
1日に使える最大回数が決まってるらしくて。
回数の回復も1日の変わり目に一気に回復!
じゃなくて、寝てる間に、1つづつ回復するって
前に、アルさんに教えてもらいました。
でも、【ソーサラー】Lvが低い内って
最大回数も少ないし、ボクって決断力無いから
どうしても出し惜しみしちゃう。
この間も、クエスト終わって帰ってきた時に
4回中3回も残しちゃった時があったし・・・。
うーん・・・、さすがにもったいないから
その辺りは、またアルさんに相談してみよう。
(ズリズリ、ズリズリ)
「・・・と言った感じに、皆さんの苦手にしている理由を
挙げさせて頂きましたけど、その解決方法の1つとして
(すっ)このお師様式の方法をオススメします」
「えっ・・・と? それは、皮袋・・・ですか? うおっ」
「んんん? あっ! それって【小オイル】ですよね?
【ビアー】でも売ってました! 買った事無いですけど!」
「はい、【ビアー】では1袋、小銅貨3枚で売ってますね。
これは、私が練習で作った分です。
この導火線に・・・(カチッ、シュボボボ)火をつけて
えいっ(ぽーーーーい)・・・と投げます」
(ボワッ、ボボボボボボボ)
「あっ! 燃えたっ!?」
「あ、あれ? 相手まで届いて無いけど、いいだか?」
「ええ、これで良いんですよ」
【小オイル】って、こんな感じに燃えるんですね。
・・・え!? 良いんですか? 多分、位置的に
相手の少し手前辺りに落ちて燃えてるんですけど。
(ズリッ、ズリッズリッズリッズリッ)
「えっ? 移動速度が上がった?
・・・あっ! 見えてきたわよ!?」
「(ズリッズリッ)あ”あ”あ”あ”あ”~~~」
「う、うわっ!?」
「あれは・・・【ゾンビ】ですよね? ユキさん」
「ええ、そうですね、死体に悪霊が乗り移ったとか
この世の未練で生き返ったとか言われてますが
真相は良くわかっていない【アンデッド】の1つ。
あれは【ゾンビ】で合ってると思いますよ?」
「やっぱり、そうですよね? うっ、グロい・・・」
「へえ・・・アレがそうなんですね? うおっ」
「あわわ、さ、サバミソ君、へ、平気そうなんだな!?」
「えっ? あ、はい。
【リューグー】は海の中に有りますので
海だと割とよく見かける光景ですから、うおっ」
「えっ!? あーーーー、な、なるほどね?」
海の中だと、食べかけで腐りかけの魚の死体とか
そこら中にプカプカしてて、小魚につつかれてますし
樽とか箱に詰められた人の死体っぽいのも
海流でよく流されてきますしね~。
なぜ、そんな事になってるのかは知りませんけど
さすがに見慣れちゃってますよ。
「・・・と言う訳で、これがお師様式の解決方法の1つ。
遠距離で相手の姿を視認できない時、迷ったのなら
{間に【小オイル】を投げる}です」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”~~~~!!!」
「あ、あの!? その後は!?
投げた後、姿が見えたのは良いんですけど!
ぞ、ぞ、【ゾンビ】はどうすれば!?
段々近付いてくるんですけどっ!?」
「ええ、それはですね」
(ズリッズリッズリッ、ボワッ、ボオオオオオオオオ)
「あ”・・・あ”・・・・!? あ”~~~~」
(ボオオオ、パチパチパチ、ボボボボッ)
「あっ! 燃えたっ!?」
「・・・ええええぇぇ!!!!?
自分から火に飛び込んだーーーー!!?」




