175 冒険者Aさんとダンジョン向きの行動食
あらすじ:多少無理してでも、こまめに水分・栄養補給することが大事だそうです。
視点:Dランク冒険者 ソーサラーLv4 ケベックさん
『』:アルファさん
「そ、それは、出発する前に教えて欲しかったですよ~」
「なるほど・・・ダンジョンだと、疲れてからの回復よりも
疲れない様にする事に重点を置いた方が良いんですね」
『わはは、すまんすまん。
いや、キミらダンジョン探索の経験が有るってゆーとったし。
そこら辺は知っとって、あえて小休憩でガッツリ休む!
・・・のパターンかと思っとったんで
道中何も言わんかったんやけどな~』
「そうですわ~~~。
ミケもご主人様も、あなた達が道中どうするのかな~って
後ろからワクテカしながら眺めてた訳じゃ無いんですわよ~?」
うわーーー・・・・・・絶対嘘だっ!!
これ、僕らが知らなさそうだからって
後ろでニヤニヤしながら観察してたに違いないよ!!
でも、その通りだったから反論できないっ。
うぐぐぐ・・・。
「いやいや、アルファさんもミケニャンさんも
僕らが知らなさそうって分かってたんなら
早めに言って下さいよ~~~」
「いや、ケベック、これは、知らなかった僕らが悪い。
ダンジョンと屋外と同じ感覚だった事を
教えてもらえただけでもありがたい事じゃないか」
「(ぶつぶつ)・・・そっか。
それはそれで、そういうパターンも有りって事か」
いや、僕も本気で文句言ってる訳じゃないし。
・・・って、ごねてるの僕だけなのか。
それにしても、優等生なマイクはともかく
ヤンキは少し意外だったかな・・・。
前だったら絶対に文句ぐらい言ってたと思うけど
何か意識が変わる切っ掛けでもあったんだろうか?
・・・こっちとしても良い事なんだけど
最近、ミケニャンさんの子分っぽくなってきてるのは
なぜなんだろうか・・・。
「ところで、アルファさん。
行動中に軽く飲んだり食べたりする場合は
どんな物がオススメなんですか?」
「あっ! それは僕も聞いておきたいです!」
『んーーーー? せやな~。
そこら辺は個人の好みも有るから
絶対にコレってのは無いんやけど
俺個人のオススメとしては幾つか有るな~』
「へえ・・・例えばどんなのが有るんだ? おっさん」
『例えば? せやなー・・・(ごそごそ)コレとか?』
「・・・これは・・・干し肉・・・ですか?」
「これは、鶏の{せせり}・・・首の部分の干し肉ですわ。
モモ部分よりもしつこくない上質な脂が乗っていて
ムネ部分よりも深い味わいで程よい弾力。
噛めば噛む程、やみつきなる一品ですわ!!」
「「「・・・(ごくりっ)」」」
何それ、うまそう!!
鶏の首の部分のお肉って言ってたよね?
【ビアー】で売ってないかな・・・。
『わははは、まー、キミらにも分けたるから
道中に味見してみたらええ。
だけど、塩とか色んなハーブとか使っとって
食うと喉が渇きやすくなるから
ちょっとづつ食うんやで~?』
「「「ひゃっほー!!」」」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
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▽ ▽ ▽
▽
(カツカツカツ、ガシャガシャガシャ)
「(もぐもぐ)うわっ・・・、うめえコレ」
「形が細長いから食べやすいのも良いよね」
『食うんは、一口かじる程度にしとけよ~。
後引く味なんはしゃーないけどな~』
「はい! ・・・それにしても、移動しながらだと
もっと集中力が散るかと思ったんですけど
意外と・・・いえ、むしろ調子が良い気が?」
「まあ、塩気や栄養が補給できてるってのも有りますけど
物を噛むって行為自体も良いんですわよね~。
頭がシャッキリしますし、適度に緊張も解せますから」
ああ、そっか・・・、なるほど。
集中力は少し散るのかもしれないけど
集中しっぱなし、緊張しっぱなし状態に比べたら
結果的に、その方が集中できてるのかもしれない。
何よりも、小休憩前に比べて疲れ感じてないし。
『ちなみに、{せせり}って割と希少部分やし
売ってなかったら、ムネ肉でもええけどなー。
アレの燻製も行動食に向いとるし。
・・・あー、そうや(ごそごそ)
こーゆーのも有るで? そんな美味くは無いけどな~』
「えっと、これは?」
「・・・・・・緑の・・・玉?」
「ええ、ご主人様お手製の行動食、と言うか丸薬ですわ」
「丸薬? 薬なんですか?」
『まーーーー、薬と言えば薬やな。
{炒った大豆と胡麻}をすり潰して粉にしたもんに
{黒砂糖}と{刻んだ薬草}混ぜこんでな
薬草の水分だけで練り練りしたもんなんやわ』
「あ、あの・・・1つ貰って『ほいっ』うわっと!?
(ぱしっ)あ、ありがとうございます。
じゃ、じゃあ早速・・・(ぱくっ)」
「・・・ど、どうだ? リーダー」
「(もぐもぐもぐ、ごくん)・・・まあ、うん。
味は悪くないよ? 僕は割りと好きな味だけど・・・」
「「だけど?」」
「はい、マイク君っ(ぽいっ)お水ですわよ~」
「げほ、げほ、あ”り”が”(ごきゅごきゅごきゅ)
ぷはっ、あ、ありがとうございます、ミケニャンさん」
「ああ・・・喉渇くのか」
「まあ・・材料聞いてただけでも
口の水分全部持ってかれそうだったもの」
『・・・っとまー。
明らかに栄養たっぷりで体に良くても
喉が乾き過ぎるやつは、行動中にちょこちょこ食うには
あんまり向いてないって訳や。
どっちかとゆーと、コレは小休憩向きやな。
戦闘後とかで、疲労溜まってる時なんかに
お湯と一緒に飲むと、よー効くで~?』
「逆に水分補給控えるんでしたら(ごそごそ)これ!!
こんなのも有りますわよ~~!
ささ! ケベック君にあげますわ!
さあ! 一口で! ほら! さあ!!(にやにや)」
「え!? えっ!!? 何ですか!?
わ、わかりましたから! で、では・・・(ぱくっ)」
「「・・・・・・(じーー)」」
「!!? 酸っぱーーーー!!!?」
「「!!!?」」
「ぬっふっふっふ~~(にやにや)」
酸っぱい!!? そしてしょっぱいよコレ!!
うわっ!? 口の中、唾液が溢れてくるっ!!!
痛っ!? 塩辛くて舌が痛いよコレ!!!
何!? 何だコレ! んぐぐぐっ。
僕、一体何食べさせられたのっ!?
『おいおい、ミケ~~。
それは事前の心構え無しやときついやろ~。
大丈夫か~? ケベックくん。(ごそごそ)
ほれ、(ぽんっ)この【氷砂糖】やるから
これ舐めながら、ゆ~っくり水飲むんやで~?』
「(わたわた)あ、あうわわはわ!!
ん、んぐんぐ(ころころ、ごくん、ごくん)
・・・・・・甘ぁ~~~い!!」
「(げらげらげら)あっはっはっはっは!!!
どうです! ケベック君!?
【フソウ】名物の【梅干】は美味しかったでしょ!?
しかもコレは甘味一切無しの、ミケ特製!!
種は取ってますので、そのまま飲み込めますわよ!!」
「うう・・・酷いですよ、ミケニャンさ~~~ん!
どうです? と聞かれても
凄かったですとしか言えませんよ~~。
ぼ、僕も【梅干】は食べた事ありますけど
さっきのは、一切の遊び無しって感じでした~~~。
んんん~~、まだ、舌がヒリヒリします~~」
「ひ、ひでえ・・・さすがは耳の姐さんだぜ・・・」
『まー、一口で丸ごと行くとそうなるわな・・・。
それな? 端っこだけちょっとかじる程度に食ってみ?』
「え? そうなんですか?
・・・えっと、ミケニャンさん。
少しだけ、欠片だけもらってもいいですか?」
「お、おい、リーダー!? やめとけって!」
「ほうほう! チャレンジャーですね! マイク君!
いいですわよ~~(ごそごそ)こんなぐらいでどうです?」
「で、では・・・! (ぱくっ、もごもごもご)
(こくんっ)・・・うん、何か気合入りました!」
『な? そんぐらいやったら、丁度ええやろ?
お目々ぱっちり、意識シャッキリってな』
「うぐぐ、僕だけ凄い弄ばれた感が・・・」
「・・・ところで、おっさん。
今更だけど、ダンジョン内でこんな騒いでて良いのか?」
「はぁ~~~~~~~~~~~、やれやれ。
駄目に決まってるじゃないですか~~~~。
何、分かりきった事言ってるんです? ヤンキ君。
そんな事、聞かなくても分かるでしょ~~~?」
「ぐっ、うぐぐ・・・(ぷるぷる)」
『ほれほれ。
ミケもいい加減ヤンキ君らで遊ぶのはやめとけよ~。
それに、ほれ、ヤンキ君。
次のお客さんはもう来とるみたいやで~?』
「「「っ!!?」」」
(シーーーン、・・・・・・ズリッ、ズリッズッズッ)
「ヤンキ、数と距離はどうだ?」
「数は6・・・いや、中型が3だな。
まだ視界内には入ってねえが、距離は20mぐらい前方。
移動速度は・・・かなり遅いな。
先制しようと思えばできるぜ? リーダー」
「どうする? マイク」
『(にこにこ)マイクくんら、後ろは気にせんでええで~。
な~んも来とらんから、キミらが好きに決めたらええ』
「はい!!」




