169 冒険者Aさんと槍の訓練
あらすじ:インディさんは未来の幹部候補でツッコミ担当らしいです。
視点:Dランク冒険者 シーフLv4 ヤンキさん
『』:アルファさん
・・・そっか、なるほどなーー。
何でわざわざ槍の練習なのか?
疑問に思ってたんだけどなー。
「よーするに、洞窟の中だと振り回す武器は使いにくいから
コレで突けば良いって事だろ?
でも、短剣や小剣だったら・・・」
「はあーー? ヤンキ君、あなた。
飛んでるコウモリとか天井に張り付くモンスターを
短剣でどーやって倒すおつもりで?」
「・・・・・・うっス、無理っス! ケモ姐さん」
「誰がケモ姐さんですか、誰が」
「す、すんませんっス! 耳の姐さん!」
「・・・耳の姐さん・・・まあ良いでしょう」
「アルファさん、この【ショートスピア】って
普通の長さよりも、ちょっと短めですよね?」
『せやでー、マイクくん。
一般的な【ショートスピア】ってのは
1m~2mの長さが有るからなー。
これは大体80cmぐらいやし、普通よりも短いタイプやな』
「えっ!? {ショート}なのにそんなに長いの!?
「そのぐらいの長さって・・・。
普通の【スピア】のイメージだったんですけど?」
「はー? 普通の【スピア】って何です?
それって、総称ですわよね?
槍の種類なんて、長いか短いかだけでしょ?」
「え? 総称!? ・・・ま、まあ確かにそうかも?
ち、ちなみに{ロング}だと、どのぐらいの長さが有るんですか?」
『長さでゆーたら、2m以上は大体全部そーやで?
【フソウ】には【三間槍】って呼ばれとる5mちょいの槍も有るし。
長槍の中には、8mとか10m越えるやつも有るしなー。
・・・・・・まー、長槍ってゆーのは、防衛用ってゆーか
基本的に人と人との戦争用やからなー。
戦争と縁の無い冒険者が知らんのは、しゃーないやろ』
「な、なるほど・・・」
へえ・・・槍ってそういうもんだったんだな。
全然、知らなかったぜ。
【ビアー】の武器屋に行っても、そんな説明どこにも書いてないし
ギルドにたむろしてる{先輩冒険者}の人らも
そんな事教えてくれなかったしな~。
って言うか、あの人らも知らないんじゃね?
「ふーーん、なるほどなー。
そんじゃ、おっさん、早速教えてくれよ!」
「(ぎぬろっ!)ご主人様に対して何という口の利き方ですのっ!?」
「す、すんませんっした! 耳の姐さん!!(あせあせ)」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
(ガッ、ガッ、ドシュッ、ブスッ)
『おっ? 中々上手いやんか、サバミソ~。
何か使い慣れてるって感じやわ』
「えっ? そ、そうですか!?
ありがとうございます、アルさん! うおっ」
「そう言えば、サバミソ君は【リューグー】出身ですし
割と普段から、銛とか二叉・三叉の槍とか使ってそうですね?」
「あっ! そうです、ユキさん! うおっ。
ボクの故郷では、網や籠で食料を捕まえる人が多いんですけど
銛とか三叉を使ってる人も結構居るんですよ! うおっ。
岩や海草の隙間に使うのに便利なんで、ボクもよく使ってました。
丁度、このぐらいの長さでしたし、うおっ」
「なるほどね! ね、ね!? サバミソ君っ!
持ち方とか突き方とか、何かコツが有るの?」
「えっ!? コ、コツですか? うおっ。
ご、ごめんなさい、モブコさん。
ボク、そこまで意識して使ってる訳でも・・・(もじもじ)」
『わはは! まー、普段の慣れってのは人に伝えにくいやろ~。
代わりに俺が~っと言いたい所なんやけど
コツと呼べる程のコツってのは、あんまし無いんやわ~』
「えー!? 無いんですか? ・・・え? あれっ?」
「え、えっと、アルファさん。
あんましって事は、少しは有るんですよね?」
『ん? 有るでー。
・・・ちなみに、そのコツを教えんでも
既に実践しとる、えー見本が・・・リッちゃんや!(ずびしっ)』
「「「「「「えっ!!?」」」」」」
(じーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!)
「(びくっ!)ええっ!? な、何ですか? 皆さん」
「せ、先輩が!?」
「まー、そうですね。
確かにメガネさんのが理想的ではありますねー」
は!? あの受付のおばさんがか!?
そういや、あのおばさんって、元冒険者だったんだよな。
確か、【グラップラー】だったっけ?
・・・何だ? 何かが違うのか?
「・・・・・・・・・ああ、なるほど」
『おっ? ユキはどんな事に気付いたんや~?
ユキの気付いた範囲でえーから
皆にもわかるよーに説明したってくれるか?』
「あっ、はい! お師様。
・・・それでは、皆さん。
最初に再確認となりますが、今回使用する武器は
80cmほどの【ショートスピア】です」
「うん? そ、そうなんだな」
「え? はい、そうですね、うおっ」
「そして、その長さの槍と言うのは片手で扱える長さです。
私達は既に、お師様から左手で盾を扱いながら
右手で武器を使用する術を教わっていますよね?
恐らくお師様は、私達の安全面を一番とされるでしょうし
今回のダンジョン探索でも、盾の使用が前提となります。
ですので、今日は、片手で槍を扱える様に訓練するべきです。
ここまでは、皆さん理解されてますよね?」
「・・・そうなの?」
「そう言われれば、確かにユキさんの言う通りね」
「ああ、なるほど! 確かにそれはそうですね」
「えっ!? おお!・・・も、もちろんだぜ!」
おお! 俺は全然気付いてなかったけどな!!!
・・・ん? そしたら、俺も盾持つのか?
えーーー!? やだぜ!? シーフ的に!
「やだぜ! じゃないです。
良いから、黙って従ってなさい」
「(びくっ!)は、はいっス! 耳の姐さん」
「あれ? ヤンキってそんなキャラだっけ?」
「うるせーよ、ケベック」
「私も両手槍はそれなりに扱えるのですが
片手槍はまだ感覚が掴めていませんね。
・・・それで、続きなのですが。
お師様のおっしゃったリマさんの動きを拝見していて
格闘技の構え方と突き方は、槍を使った場合でも
通じる物が有る、・・・と言う事に気付いた訳です」
「へ? 格闘技?」
「ど、どういう事だか?」
「・・・ああ! そうか! 格闘技の!」
『おっ! マイクくんも気付いたっぽいな。
よっしゃ! ここまで、ええ説明やったでユキ~。
誉めたるわー(なでなでなで)』
「っ!! ・・・えへへへ(ぽわー)」
「「「っ!? (可愛いっ!?)」」」
・・・やべえやべえ! 何て破壊力だ!!!?
危うく、惚れちまうとこだったわ。
・・・いや、別におっさんの弟子ってだけで
俺が惚れちまっても良いんじゃね? 問題無くね?
チラッと見たら、リーダーも知恵袋(笑)も
今のには、やられたっぽいし!!
いや、仕方ないだろ、うん。
仕方ないよな!!?
「そーそー。
仕方ないですわよ~? 問題無いですわよ~?
ぬっふっふっふ! (にやにやにや)」
「う・・・姐さん、マジ勘弁して欲しいっス」
「~~~~っ!(ぽわわわ)」
「(じーーーーー)・・・・・・仲良いなぁ(ぼそっ)」
『さてと! んじゃ、ユキの続きやけど・・・。
リッちゃん、ちょっと構えてみてくれへん?』
「(あせあせ!?)えっ!? あ、はい!
こ、こうで良いですか?(さっ)」
『おー! ありがと~な~!
・・・で、見ての通りや』
「・・・あーーーー」
「あっ! 左手に盾としたら、あーーー」
「確かに、右手もあの持ち方だったら・・・」
「・・・そっか・・・なるほどね」
「皆さんご覧の様に、メガネさんの構え方は
右足を後ろに引いた半身の構え。
左腕は顔の前で、右手で槍の中腹を持って
槍の柄を脇に挟み込んで固定しています。
ほぼ、水平に持ち、ちゃんと穂先が前を向いているのが
地味にポイント高いですわよねー」
『な? 綺麗で合理的な構えやろ?
まるで、リッちゃんを表現したみたいに綺麗やな!
そんじゃ~、リッちゃん。
悪いけど、また、カカシを突っついてくれるか~?』
「・・・・・・えっ?(びくっ!) あ、は、はい!」
「・・・(顔赤い先輩とか、レア顔よ! レア顔!!)」
(しゅっっっ、ドシュッ!! しゅっっっっ!!!)
「「「「「「ふぁっ!!?」」」」」
「わっ! すごいです!」
「うん・・・お見事な槍捌きですね、リマさん」
・・・正直驚いた!
すげえな、おば・・・メガネ先輩!!
槍を固定した状態から、上体を回転させて
真っ直ぐ突き出したかと思ったら
また、真っ直ぐ元の位置に戻りやがった。
しかも、槍の軌道が全然ブレてなかったから
まるで、一瞬腕が伸びたのかと思うぐらい
無駄の無い動きだったよな!?
さっき、格闘技に通じる物があるって言ってたけど
実際目にして見て、意味が分かった!
今のは、構えから攻撃して戻る所まで
確かに、格闘技の動きだったわ。
いや本当に、メガネ先輩すげえな!!!?
『お~~~! さすが俺のリッちゃん!!
すっげえ、綺麗だったわ!!
槍捌きも、リッちゃんも!!!
改めて惚れ直したわ~~~~!!』
「!!?(かああああっ)
も、もうっ! からかわないで下さい!
それに、どさくさに紛れて何を言ってるんですか!
だ、誰が、あなたのですか、誰が! 全く!
本当! アルファさんは冗談がお好きなんですね!
全く! もう! 全くっ!!(ぷりぷり)」
「あれ~? 先輩~~?
何照れてるんですぅ~~?(にやにや)」
「おやおや~? どうしたんです~?
メガネさん、顔真赤ですわよ~?(にやにや)」
「も、もうっ!! 何もありませんっ!! 全くっ!」




