166 冒険者Aさんと戦争 ③ 納豆
あらすじ:亜神とそのお供が流した血溜まりは、不思議な粉でキレイキレイされました。
視点:昨晩フジョ汁を垂れ流しすぎて、疲労で寝坊した フジョ様
『』:アルファさん
(しゃかしゃかネチャネチャ、しゃかしゃかネバネバー)
「(くるくるくる)・・・ビーエルよ。
あまり食べ物で遊ぶのはどうかとわらわでも思うぞ?」
「(しゃかしゃか)遊んでなんていませんよ、フジョ様!
やっぱり、こう!! 【納豆】は!
糸でワシャワシャになるぐらいまで混ぜた方が美味しいですよね!?
クリーミーになりますし!
何か風味も増(した様な気が)しますし!!」
「はぁ・・・何を言っておる。
【納豆】はそっと混ぜて、豆の風味ととろみを楽しむものではないか」
「えっ!?」
「えっ!?」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
「長いね、叔父さん、もう10分以上たったよね?
まだ、どっちが美味しいかを言い合ってるよ?
わたしもう食べ終わっちゃったんだけど・・・」
「(にこにこ)はは、エイトちゃん。
ああなったら、口を挟まずに放置が一番なんだよ。
エイトちゃんはもう塾に行く時間だし
もうそろそろ送らないと駄目だね。
今日はもうアルファさん達は出た後だし
まだ、決着はつかなそうだから、私が送りに行く間だけ
お2人にお留守番頼んでみようかな?」
「うーん、叔父さんがそう言うなら・・・?
ねえねえ、おばちゃん達!!!
どっちでも良いから、お皿片付かないし
決めるなら早く決めちゃってね! 超早く!!」
「む!?」
「お・・・おば・・・!?(がーーーーーん!!)」
あっ・・・・・・。
わらわは、まあ・・・、おばちゃんどころか
とっくの昔に老人の域も越えておるから
別に童女の言葉など何とも感じんが。
ビーエルは・・・のう?
確か24才じゃったか? 一応、まだ20代前半と言い切れるし
見た目もまだまだ若々しいし、一般的には美人の類じゃろうて。
それほど気にする必要は無いと思うんじゃが。
本人は少し焦りだしておるみたいなんじゃよな・・・。
それにしても、時に、子供の言葉と言うのは
鉄の刃よりも、よう刺さりよる、ほんに恐ろしいのう。
「こらこら、エイトちゃん、失礼な事を言ってはいけないよ?
エイトちゃんから見れば、皆{お姉さん}でしょ?」
「あっ! 確かにそうだね、叔父さん!
うん! ごめんねお姉さん達! 超ごめんなさい!」
「ああ、わらわは気にしておらんゆえ、良いんじゃよ、童女よ」
「は、はは・・・も、もちろんわ、私も。
いえ、だ、大丈夫ですよ? ええ、大丈夫ですとも(ぷるぷる)」
嘘付け! 思いっきり動揺しておるじゃろ!!
何か、ぷるぷる震えとるし。
うむむむ、わらわの可愛い子が・・・。
何ぞ、話の矛先を変える良い切っ掛けは無いものか!?
(トコトコトコトコトコ、ガチャッ)
『おーい、ツリーさーん。
エイトちゃん、まだ居るんやったら
塾まで送ってく・・・あれ?
おーー、フジョ様にビーエルちゃんやんか。
わはは、遅ようさんやな~~!
丁度、朝飯食っとんのかー?』
「!! おおっ! アルファではないか!」
何と、都合の良い時に現れるのじゃ、お主!!
ここは話題を逸らす切っ掛けを・・・!!!
「(にこにこ)あれ? アルファさん、今日は訓練場では?
朝早くから皆さんで出かけられましたけど・・・。
あ、エイトちゃんを送って頂けるのなら
せっかくですし、お願いしてもいいでしょうか?
まだ、後片付けが終わってませんので」
「えっ!? アルファのおじさんが送ってくれるの?
うーん、本当はわたし一人でも大丈夫なんだけど
仕方ないな~! 超仕方ないな~~~!!(にこにこ)」
『わははは、俺もちょっと忘れもん取りに来ただけやけど
お世話になっとる宿屋さんの大事な姪っ子ちゃんやもんな!
そんじゃ、エイトちゃん行こかー? 準備できとるかー?』
「あっ! ちょっと待っててね!
急いで準備してくる! 超大急ぎだよ!!!」
(ガチャッ、ドタタタタタタタタタ・・・)
ああっ!? いかん、このままでは行ってしまうぞ!?
うむむむ、何ぞ良い切っ掛けは無いかのう!?
あやつが好みそうな話題、話題話題・・・!?
『(じーーー)ほーーーーーー。
フジョ様は{あまり混ぜ無い派}なんやな。
んで、ビーエルちゃんは{すごい混ぜる派}かー』
「!! う、うむ! そうじゃ!
わらわはこう・・・生卵を混ぜたり、わかめ等を入れて
サラダ感覚とかおつまみ感覚で食すのが好きなのじゃ」
『あーー、それも美味いよなー。
長芋すりおろしたのを混ぜても美味いし
お魚の刺身なんかと絡めて食うのもええよな~。
熱々ご飯にかけても、そのまま食べても良しや!』
「!?(ごくり) い、良いのう! 美味そうじゃな!!
・・・こ、今度やってみるかのう。
うむ、やはり、お主も{混ぜない派}であったか!」
「(ゆらりっ)それは聞き捨てなりませんね!!
アルファさん、糸が切れないぐらいにすごく混ぜて
ふわっふわになった【納豆】の方こそ美味しいのでは!?」
「あーー、あれも美味いよなー。
そのままやと、少し物足りんけど
からし多目にしたり、わさびやアボカドを
マヨネーズと合わせて、よ~く混ぜ混ぜするやろ?
で、仕上げに胡麻とか刻み海苔とかかけるとな
まろやかで刺激的な味になって、やみつきになるんやわ。
あれって、ご飯だけやのーて、食パンとかにも合うし
それこそ、サラダにのっけても美味いしな!」
「なっ!!?(ごくりっ)
そ、その食べ方は知りませんでしたっ!!
【納豆】と言えば【醤油】とばかり・・・・・・。
そこまでご存知とは、やはりアルファさんも
【納豆】は{混ぜる派}なのですよね! ですよねっ!?」
「(にこにこ)おやおや、また始まってしまいましたね」
「お主はどっちの食べ方じゃ!? アルファ!!」
「アルファさんは、勿論、こっちの食べ方ですわよね!?」
うむむむむ、ビーエルめ。
復活したのは良かったが、どうしてこう、頑固なのじゃ。
・・・そ、それにしても、わさマヨたっぷりで混ぜるのか。
今度、一度だけわらわも試してみるか?
い、一度だけじゃぞ!? 試してみるだけじゃ!!?
『えーー? 俺? どっち派ってゆわれてもなーーー。
どっちも美味しい食べ方が有るしなーーー?
それに、個人的に好きな食べ方ってゆーと【納豆汁】やし?』
「「なっ!? 【納豆汁】っ!!!?」」
「(にこにこ)ああー! 良いですね、私も好きです」
あのぐつぐつと煮えたぎった臭い汁じゃと!?
あんな臭いだけで、風味もとろみも無いまずい汁が好きじゃと!?
見損なったぞ! お主を味方に引き入れようとしたのが間違・・・。
『えーっと、納豆をお椀に入れてな?
たっぷりとかつおぶしを上にかけるやろ?
そんで、味付けに【味噌】少し入れて、熱々のお湯をお椀に注ぐんや。
その後で、軽~く混ぜたら出来上がりやな!!
これがな・・・豆とかつおぶしのええ香りがするんやけど
【納豆】を熱した時の特有の臭みはせーへんねん。
少しとろみのついた汁も、塩気は薄めやけど
その分、温まった【納豆】の味が際立つ感じなんやわ』
「「!?(ごくりっ)」」
『これがな? お茶漬け感覚でさらさら~っと食えてな~。
飲み込んだ後にじわ~~~っと風味が残って、割と癖になるんやわ。
刻みオクラとか、【とろろ昆布】入れても良かったな。
しかも、食べ終わったお椀が、そんなにぬるぬるせーへんから
洗うのも楽ってゆーおまけつきや! わははは』
な、なん・・・じゃと!?
昔出されて、これは無理・・・と思わざるをえなかった【納豆汁】に
そんな食べ方が!? そんな可能性があったじゃと!!!?
・・・ところで、その食べ方美味そうじゃな。
「(にこにこ)うん、それは美味しそうですね。
塩漬けの魚卵とか入れても美味しそうですし、【味噌】の代わりに
野菜のお漬物で塩気を補うのも有りかもしれません」
『おおー! それも美味そうやな~!
俺も今度色々やってみるかー・・・おっ、来たっぽい?』
(・・・ドタタタタタタタ! ガチャッ!!)
「お待たせ、アルファのおじさん!
準備できたよ! 超準備できた!!
行って来るね、叔父さんっ!!(ばっ! ばばばっ!!)」
(ドタタタタタ)
『んじゃ、俺も行くわー。
おいおい、エイトちゃ~ん、ちょい待ちーや~~。
俺を置いてってどーすんねーん~~~』
(スタタタタタタ)
「「・・・・・・」」
「(にこにこ)さて、それでは。
私は少し試したい事ができましたので席を外しますね?
お二方は、ごゆっくり・・・(ガタッ)」
「(くわっ!)わらわの分も!!!!」
「(くわっ!)わ、私の分もお願いしますっ!!!!」
「(にこにこ)はは、わかりました。
それでは、3人分ご用意しますね?」




