148 冒険者Aさんとこの町のダンジョン事情
あらすじ:リマさん働き過ぎ問題。
視点:Dランク冒険者 ファイターLv4 マイクさん
『』:アルファさん
・・・しかし、まずったなあ。
僕らがクエストから帰ってきた時
丁度、ギルドにモブコが居て。
報告書提出した後に、色々話してたんだけど
僕らが遠征してる間に
次から次へと羨ましい体験たくさんしてたのを聞いて
気付いた時には、3人共駆け出してたんだよね。
少し頭が冷えてきたけど、今思い返しても
何でそんな事になったのかは正直わからないんだよね。
「何って、ダンジョンですよダンジョン。
まあ、あなた方3バカは遠征に行ってたんですわよね?
遠征中ってのは不自由な事多いですから
きっと、疲れとストレス溜まってて暴発したんでしょ。
そういう事にしておきますわよ、ね? ご主人様」
『せやな。
そーゆー事は、よーある事やし。
モブ子ちゃんも気にせんでええからなー(なでなで)』
「あ、は、はい・・・」
う・・・モブコに迷惑かけちゃったな。
それにしても、ダンジョンって言ったよね?
ダンジョン? ・・・行くの?
『せやでー、ダンジョンや!
マイクくん、前に聞いた時にやな、Dランク推奨の
{洞窟ダンジョン}に行った事有るって、ゆーとったろ?』
「え? ええ、はい。
ケベックと一緒に、一階層だけですけど」
「あ、俺も別のパーティに居た時、1回だけ行った事有るぜ」
『うんうん。
ヤンキくんも経験有りかー。
それやったら、尚更丁度ええわ』
「だから、何が?」
「お、おい、ヤンキ」
・・・こ、こいつ。
前よりは、かなりマシにはなったけど
それでもたまに失礼な態度取るよな。
僕も言ってはいるんだけどなぁ・・・。
『わはは、今度なー。
素材の採取目的で、Cランク推奨とDランク推奨。
2箇所の{洞窟ダンジョン}に行くつもりなんやわー。
名目は{調査クエスト}やけどな?』
「はあ・・・2箇所・・・ですか?」
し、Cランク推奨!?
確かに、Dランク推奨の{洞窟ダンジョン}には行ったけど
僕ら2人じゃ、全然うまく探索が進まなかったんだよね。
実は、その事があったから、今後の冒険には
シーフとか探索向きの人員が必要だって気付かされて
リマさんに相談したんだ・・・。
「つまりお師様。
お師様とミケお姉様に、こちらの3人を加えて、Cランク推奨に。
私とサク、サバミソ君とロバートさんでDランク推奨に。
と言う風に、パーティを分けるという事ですね?
ちなみに、モブコさんは{洞窟ダンジョン}のご経験は?」
「あっ、私はありません。
ライスと2人だとさすがに危険と、リマさんに言われましたので」
「うーん、さすがメガネさんですわね。
じゃあ、モブ子さんはDランクの方ですね。
それでバランスも取れるでしょうし」
『っちゅー事や、マイクくん。
今、ユキとミケがゆーたけど、キミらが加わったら
そんな感じに2手に分かれて
両方の{洞窟ダンジョン}が同時に調査できるなーって訳や』
「え、えーっと、ちょ、ちょっとだけ待ってくれますか?
僕はまあ、大丈夫ですけど、返ってきたばかりですし
一応、ケベックとヤンキに確認を・・・」
「え? 僕はありがたい話だと思うけど?」
「俺は、問題ないぞ?
むしろ、こっちから頼みたいぐらいだろ?」
「あれっ? ・・・ああ。
いや、良いならいいんだけどな」
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▽ ▽ ▽
▽
「・・・それにしても。
必要な素材の為なら仕方ないと思いますけど
{洞窟ダンジョン}なんですね?」
『おっ?
マイクくんは{洞窟ダンジョン}は嫌いな方なんか?』
「えっと、嫌いと言うか、行ってみた感想としては
苦手な感じですね」
「僕もそう思ったよ、マイク。
暗いし狭いし、じめじめしてるし」
「いや、まあ、それも無くはないんだけど」
『あー、マイクくんの武器は剣やしな。
自然の洞窟やったらまだしも、ダンジョンやったら
確かに闘いにくいやろーなー』
あ、さすがにアルファさんは分かってくれてるんだ。
自然の洞窟だと主な敵は、蛇や猪とか熊みたいな獣系。
もしくは、【ゴブリン】や【オーク】みたいなモンスター。
どっちにしても、まだ、剣でも倒しやすい相手だ。
「あー、なるほど。
{洞窟ダンジョン}だと、出てくる敵って
【スケルトン】やら【ゾンビ】みたいなアンデット系か
【ガーゴイル】に【ゴーレム】に【スライム】とか
そんなのばっかりですしね。
確かに剣じゃ戦いにくいでしょ」
「・・・そう言えば、そうだったわ。
じゃあ、俺だったらもっと駄目じゃねえか」
動く骨の【スケルトン】は隙間だらけで攻撃が当てにくい上
骨って言うのは、意外と硬いから弾かれる事もよくある。
【ゾンビ】は腐った死体で、動きは鈍重だから
攻撃自体は当てやすい・・・だけど切っても手ごたえが無い。
それに、体が石の癖に、空まで飛ぶ【ガーゴイル】に
石だったり、木だったり、土だったりする【ゴーレム】に
消化液や毒素の塊みたいな【スライム】なんかもそう。
全部、【核】を壊さなければ死なないモンスターばかりだ。
鈍器なら、内部の【核】ごと叩き潰す事もできるだろうし
手足を破壊すれば、一時的にでも動けなくする事は可能だしね。
『あー、そこは安心しときー。
クエストに行く前に、キミらの使いやすい手頃な武器とか
必要なアイテムは用意しとくわー。
Dランク推奨の方はともかく、Cランク推奨の方は
油断するとあっさり死ぬからなー』
「「「(う、うーん・・・)」」」
「あ、あの、アルさん?
この町には{洞窟ダンジョン}の他にも
ダンジョンがあるんですか? うおっ」
『お? えー質問やな、サバミソ。
【タンゴの町】の周辺には、4箇所のダンジョンがあってな。
内2つは、CランクとDランク推奨{洞窟ダンジョン}や。
で、残りの2つはEランク推奨の{森ダンジョン}と
Dランク推奨の{大樹ダンジョン}があるんやわ』
「へえ・・・、{森}に{大樹}ですか。
アルファさん、推奨ランクの違いって
何が理由なんですか? モンスターの強さとかですか?」
「まー、それもありますけど。
そもそも{洞窟}の場合は
他と比べても別格なのですよ、モブ子ちゃん」
「別格?」
「ええ、{洞窟}の厄介な特徴を軽く挙げるとですね。
まず、真っ暗で通路が狭いんですよ。
ランタンとかの灯りが必須になって手も塞がります」
「ま、まあ、それだけでもかなり厄介ですね」
「で、次ですが。
さっきも言ってた通り、モンスターの種類です。
【核】を壊さない限り死なない敵ばっかり出てきます」
「う・・・、それはかなり面倒臭いですね」
「そして、最後になりますが。
中で、水はともかく、食料が調達できないんですよね
場合によっては、水も無理な場合があります」
・・・そう。
暗くて狭いや、モンスター云々もあるけど
僕らが挑んだ時も、一番難儀したのがそれ。
まあ、罠とかの問題もあったんだけど・・・。
「え? そうなんですか?
洞窟って言うと、湧き水ぐらいなら
ありそうなイメージがあるんですけど・・・」
『わははは、モブ子ちゃんー。
それはな? 自然の洞窟のイメージなんやわ。
まー、行ってみたら分かるけど。
ダンジョンの{洞窟}ってのはなー
{墳墓}とか{地下遺跡}みたいな感じやねん』
「・・・・・・あーーー、何となく想像できました。
確かに、水も食料も無理っぽいですよね」
『せやろ?
まー、探したら、食えるキノコとか食える苔とか
全くないこともないんやけどな。
特に美味くもないし、腹の足しにもならんしなー』
「そ、そういえば、おでの故郷で
た、食べれる苔なら、高山にあったけど
薬の材料で、食材ではなかったんだな」
「そうですね、ロバートさんが言われた様に
苔やキノコは薬の材料にもなりまして
今回、採取目的の一つになっています」
「な、なるほど・・・」
「まー、そんな感じで。
{洞窟ダンジョン}って言うのは
他と比べると冒険者に人気が無いんですよね。
特にこの町・・・と言うか
この国全体で・・・でしょうかね?」
「? ミケニャンさん、どう言うことです?」
「それはアレだよ、マイク。
洞窟で取れる素材って
この国ではあんまり必要とされてないからだよ」
えっ!? ケベックには分かるのか!?
必要とされてない???
「あーーー、そうかも。
鉄ならともかく。
取れるのが、特殊な鉱石や特殊な薬の材料ばっかりじゃ
この国では欲しがる人が少ないだろーなー」
ヤンキまで!?
・・・って、そうか、確かにそれなら分かるかな。
この町には港があるけど
この国って、基本的には田舎の農業国家だもんな。
工業とか開発とかって言葉とはかなり無縁だもんな。
薬も、薬草頼みだし、それ以上は神官頼みだし。
・・・それにしても、凄く今更だけど
ダンジョンって何なんだろうな。
人工物・・・なんだよな?
{ダンジョンの主}ってのが居るって、聞いた事あるし。
「・・・・・・?
ところで、アルさん。
同じ{洞窟ダンジョン}で、どうして推奨のランクに
違いがあるんですか? うおっ」
『ん? それはやなー。
・・・とゆーか、サバミソの場合。
多分、ダンジョンがそもそも何かって所から
話した方がええやろな。
丁度ええ機会やし、そっから説明しとこうかー』
おおっ!?
ナイス質問だよ! サバミソ君!!




