144 冒険者Aさんと町の台所が止まった日
あらすじ:わかり合ってしまったそうです。
視点:タンゴの町 衛兵長 ゴルフさん
『』:アルファさん
(チュンチュン、ピピピピピピ)
「あら? 今日は市場やってないのかしら?」
「ああ、見ての通りだ。
今日は臨時休業なんだよ」
「そうなの? 珍しいわね。
でも、そうなると、うーん・・・困ったわねぇ」
「野菜と肉に関しては、屋台広場の方で
【コンビ農園】さんの所が臨時出店してるから
そっちを見てくれ。
魚関係は港で露店を出してるそうだ」
「あら、それなら
そちらへ行ってみようかしら」
「ああ、それをお勧めするよ」
・・・ふむ。
町長補佐のフォックス君からの指示で
市場を町の衛兵隊で警備しているが
これで、案内したのは何人だったろうか?
まあ、今日はずっとこんな感じなんだろう。
何のお祝い事なのかまでは聞いていないが
働き者の市場の人達が、店を休んでまで
何か祝いたい事があったんだろう。
昨晩はずっと、大いに食べて大いに飲んで
存分に騒いで楽しんでいたようだしな。
「(ぷるぷる)も・・・もう飲めねえ・・・」
「(ぐでーん)う、うぷっ」
「(すやすや)うーん・・・うーーん・・・」
「(ごろごろ)ぬあああああああ」
(チュンチュン、チュンチュン)
・・・ちょっと楽しみすぎじゃないか?
まあ俺達も、交代でご相伴に預かったんだけどな。
さすがに酒は抜きだが・・・。
ん? ああ、今日は市場は臨時休業だ。
明日? ああ、大丈夫だ。
明日はやっている、今日だけだ。
ああ、行商の人か。
すまんな、昨晩、市場で宴会があってな。
今日は臨時休業なんだ。
それなら、この道を真っ直ぐ行った所に
雑貨屋があるから、そっちで聞いてみてくれ。
やれやれ、段々と人が増えてきたな。
・・・・・・それにしても、アレだな。
この町は、規模こそ王都より小さいが
行商人や水夫、冒険者と言うような
住民以外も結構来るものなんだな。
こちらへ赴任してくる前に聞いた話では
住民とそれ以外の間に溝が出来てるって事だったが。
この4ヶ月の間、見た感じだと
思っていたほどじゃないんだよな。
「あら、あんた!
夜勤だって言ってたけど、市場だったんだね!」
「!? お、おう。
フォックス君からの指示でな・・・」
「あーーー、そう言ったら
ギルド長のブラボーさんも、そんな事言ってたわね。
この事だったのね。
どれどれ? ・・・あはははは!
この様子だと、今日は市場は使えなさそうだねぇ!」
「そうだな。
今日は臨時休業で、その代わり・・・」
「じゃあ、あたしはもう行くからね!
あんたも無理しないで頑張んなさいよ!(ばんばんっ!)」
「ぐはっ! げふっ!
お、お前も・・・な」
・・・行ってしまった。
相変わらず、人の言う事を最後まで聞かない嫁だな。
ま、まあ。
あのパワフルさにいつも助けられてる訳だが。
・・・それにしても、あいつが言ってたが
以前は、ギルド職員も冒険者側と見られていたから
住民から敬遠気味で、中々職員も集まらなかったらしいな。
だが、ここ1・2年で住民感情が良くなって
町の住民から、職員も冒険者も増えたらしいとか何とか。
この町には、港の街道沿いの路上販売や、屋台広場。
【ビアー】みたいな、ギルド公認の複合施設もあるから
買い物や食事に困るほどでは無かったらしいが
それでも、市場を利用しやすくなったのは
どちらにも良い影響なのだろうな。
(ワイワイ、ザワザワ)
「あれー!? 今日市場やってないの!?」
「えっ! これは・・・困る」
「仕方ない、朝御飯は屋台広場行くかぁ」
「ふぉっふおっふおっ、ふお!?」
「おいおい、ミルクはどこで買えばいいんだよ」
ああ、ちょっと待ってくれよ。
ちゃんと案内はするからな。
・・・・・・まあ、利用者が増えたって事は
止まると、こういう影響もあるわけだ。
それにしても・・・。
「(がっふがっふ)はぐはぐ! ほにゃー!」
「(もぎゅもぎゅ)ほぉんぎゅ! もっぎゃ!?」
「も・・・もう無理・・・助けて・・・」
あの2人、いつまで食うつもりなんだ!?
夜通し食い続けてるんだが!!?




