143 冒険者Aさんとお礼の理由
あらすじ:市場の人達は、会場の市場で酔い潰れてます。
視点:後片付けにも定評がある ミケニャンさん
『』:アルファさん
(グオー、グオー、リリリリリ、グオー、グオー)
「フォックスさん、片付けまで手伝って頂いて
ありがとうございます(カチャカチャ)」
「いえいえ、こちらもたっぷりと飲み食いして
十分ストレス解消させてもらいましたしねえ。
それに、この手の片付けは、慣れちまいましてねえ。
・・・あのメス豚ヤロウのせいで(カチャカチャ)」
「くすっ、それは大変ですね。(ジャブジャブ)
そういえば、1つお聞きしたいのですけど・・・?」
「なんですかい? ノブユキさん」
「いえ、今回、市場の皆さんが、{お祝い}とは別に
{お礼}ともおっしゃってましたけど。
それは、2年前、この町で乱暴狼藉を働いていた
{Bランク冒険者ドミテモクマー}とその【クラン】
【アイアンベアー】をお師様達が追い払った件ですか?」
!?
・・・そ、そりゃまあ、あなたの家だったら
お抱えの【忍】も居ますし、調べられるでしょうけど
まさか、その件まで知ってるとは・・・。
さすがは、ご主人様マニア。
「そうですねえ・・・いえ、それも大きいんですけど
それだけでも無いんですよお(シャカシャカ)」
「と、おっしゃいますと? (ザブザブッ)
もしかして、薬草の水耕栽培に成功して
薬草の安定供給ができるようになったからですか?」
「おっ? よくご存知でえ。
そう言えば、ノブユキさんはそっち方面で
アルファさんに弟子入りされたんですよねえ」
「はい、日夜、お師様に色々と教わっています。
本当は、2人きりでもっと深い所まで教われれば
ありがたいのですけどね(にこっ)」
「ははは、ノブユキさんは勉強熱心ですねえ」
・・・勉強熱心。
まー、確かにそうとも取れますね。
実際、勉強熱心ですし。
ですが、ミケの耳には、可愛いタヌキ耳には
別の意味に聞こえてしょうがないんですけど?
(ジャブジャブ、カチャカチャ)
「ちなみに、さっきのお話なんですけどねえ。
個人的には、その後の事で感謝してるんですよお。
いくら当時は、直ぐに手が出なかったといっても
無法者とその一党の排除だけであれば
ギルドで指名手配してもらうなり
王都から軍隊を派遣して貰えば何とかなりますしねえ」
「ええ、そうですね。
・・・すると、お師様が町の人達と冒険者の間にできた
壁と言いますか、溝を埋めた事でしょうか?
感情と物流の両方の面で(にこっ)」
「えっ? ええ、その通りですよお。
本当、よくご存知ですねえ、さすがお弟子さんだ。
もしかして、既にアルファさん達から聞かれたんですかあ?」
「いえいえ、少し調べた際に耳に入っただけですよ。
恐らくそれは【ビアー】ができてから
徐々に発生してきた問題なんじゃないですか?」
嘘つけっ!!!?
少しどころじゃない!!
あなた、絶対に少しどころじゃないでしょ!?
・・・本当に、どこまで調べてるんでしょうね、この子。
「ええ、実はそうなんですよねえ。
【ビアー】ができて、ギルドには冒険者も増えてきて
市場が活性化するかと思いきや、停滞どころか
むしろ衰退化してきたんですよねえ・・・」
「【ビアー】が宿泊だけではなく
総合施設というのが問題なんですね。
食料品・衣料品・雑貨に材料・資源と
市場に入る物流の大半が、あちらに吸い取られたせいで
市場が衰退化してしまったのですよね?
買取価格はあちらの方が高いでしょうし」
「ええ、これまた、よくご存知で。
・・・そうなんですよねえ。
ギルドに収集の依頼をしても、同じ依頼であれば
値段の高い向こうの方を優先して受けますからねえ。
まあ、ギルドの職員さんの中には、その辺りに気を使って
調整してくれている方も居ましたけど。
それでも、やはり、限度はあるんですよねえ・・・」
(カチャカチャ、ジャバー)
「そして、冒険者ギルドも大きくなるにつれて
冒険者も、町の発展の為に、という意識は薄れ。
お金や栄達、地位や求道の様に
自分の目的の為に効率化を図る様になってしまい
ますます、町とは疎遠になってしまったんですね?」
「・・・やっぱりそういう事だったんでしょうねえ。
その頃から、冒険者の人達は
市場や町中の店舗に来なくなりましてねえ。
冒険者達と【ビアー】は潤っているのに
町の市場には物も金もあまり入ってこない。
結果、町民と冒険者の間で、住み分けの雰囲気が出来て
壁と言うか、溝が出来てしまったんですよねえ。
そして、あの事件でしょ? 本当に困りましたよお」
「(きらきらきら)そこに、お師様が現れた訳ですね!」
あっ・・・、まずいですわ!?
アレは語りだしたら止まらないパターンです!!
この間も、思い出話が切っ掛けで
ご主人様の偉業を語りだしたかと思ったら
一晩中どころか、次の日の昼まで語ってましたわ!!!
しかも、色々と美辞麗句も混じってくるから
妙にまだるっこいと言うか、長ったらしいと言うか!!
これだからマニアは本当、もうっ!!!
ちょっと、フォックスさん。
相槌打たないで下さいよ!? スルー推奨ですわよ!?
「え、ええ、そうですねえ」
あっ、コラっ!?
「(ぺらぺら)そこへ、お師様が颯爽と格好良く登場。
皆さんを困らせていた、悪党達を華麗に排除した上。
素適なお師様は自ら率先して、町からの依頼をこなし
(ぺらぺら)さらに、通常は時間がかかる納品を
市場での買い物ついでに行うお師様、格好良い!
しかも、知的でお優しいお師様は、その際
周辺で採取可能なのに、まだ町では採取されていなかった
資源や素材だけではなく、素材の別の活用方法や
新商品のヒント、その他にも様々な情報を伝え
双方が損をしない様にとの寛大なお心から
【ビアー】と利益が被らない様にする流れを作り。
(ぺらぺら)また、深い考えをお持ちのお師様は
食を中心とした新たな産業のタネを、数多く取り寄せ
決して自分の利益とはしようとせず、皆さんに伝え広めて
皆で幸せを享受しようと言う、器の大きさが垣間見られる
行為を好意で行われて、まさに私も師と仰ぐなら
このお方しか居ないと再決心させられ、敬愛する
お師様に全身全霊をかけて身も心も尽くそうと誓い。
そして、市場を中心としたその新たな流れは
冒険者も町も良い方へ循環させつつあり、お互いの溝も
少しづつ埋まってきているので、お師様凄い!
・・・と、言う事ですよね!? (ふんすふんすふんす)」
「ぽかーん (゜Д゜ )」
ああっ!? やっぱり恐れていた事がっ!?
本当、あのご主人様マニア、ご主人様の事となると
何であんなに早口でスラスラと畳み掛けるように
言葉が出てくるんですかね!?
いえ、ミケもあの子以上に、ご主人様を敬愛してますので
愛情の深さなら負けてませんけど?
それよりも、怖い、怖すぎますよ!!
あなた、その時【フソウ】に居たはずなのに
何でそんな細かに、見続けたかの様に知ってるんですか!?
はっきり言って、ミケでもドン引きですわよ!
本当、この子、色んな意味で【妖怪】よりも怖いですわ!?
ほ、ほら! フォックスさんも
今のあなたの怪現象を目の当たりにして
頭真っ白になって、言葉を失ってるじゃないですか!!!
「・・・(゜Д゜ )
・・・( ゜Д゜ )」
いや、こっち見んな。
いえ、見てもミケにはどうにもできませんわよ!?
「・・・素晴らしい(ぼそっ)」
・・・・・・はあ?
(がっしーーーーーん!!!)
「(ぶんぶん)感動しましたよお! ノブユキさんんん!!
あなたこそ、まさに弟子の鑑ですよおおおおお!!!
これからも、その道を邁進してくださああああい!!!」
「(ぶんぶん)ありがとうございます! フォックスさん!
ええ、ええ!! 私も自信を持って、今以上に
お師様への敬愛を貫いて精進していきます!!!!!」
・・・ええっ・・・な、何です? アレ。
分かり合っちゃったぽいんですけど。
 




