140 冒険者Aさんと宴会2日目
あらすじ:市場の人達がお祝いさせろと押し寄せてきました。
視点:町長補佐 フォックスさん
『』:アルファさん
「(ごくん)・・・ふぁあ~。
これは良い香りのお酒ですねえ」
『せやろ?
おっと、フォックスくん、もうコップが空やんか。
樽で漬けたし、まだまだ有るから、どんどん飲んでなー?』
(トクトクトクトク)
「おっとっととおお~。
ありがとうございます、アルファさん」
(ワイワイワイ)
「(ぐびっぐびっぐびっ)・・・はぁあ~~。
このお酒美味しいですねえ。
口当たりは少し甘めですけど、飲んだ後の風味が凄い。
このお酒って有名な銘柄なんですかあ?」
『いや、これは、売りもんやのうて、自家製やな。
まー、今年は自分で漬けたやつじゃなくて
義妹に漬けさせたやつを送ってもらったんやけどなー。
せやせや(すっ)この塩漬けをおつまみに飲むと
さらに美味いんやで? オススメやわー』
「ほうほう、頂きますよお。
(サクサク、くぴくぴくぴ)・・・ほぉおおう!?」
おお!? お酒にも優しくて爽やかな風味が有りましたが
こっちの白っぽい漬物はさらに濃い風味がありますねえ。
この漬物は、多分花びらを塩に漬けた物だと思うんですが
・・・どこかで食べたような?
いや、どこかで、嗅いだ事のある香りなんですよねえ。
思い出せませんけどお。
「おおう、これは・・・。
何て言うか・・・{凄い合う}って感じですかあ?
極自然に風味が混じって濃くなったって感じがしますねえ。
・・・・・・うーーん?
ここまで合うとなると、ひょっとして
このお酒と、この漬物、原料が同じなんですかあ?」
『おっ!? 惜しい! いや、半分正解やな。
【フソウ】の春に咲く【関山】って桜を使っとるんやけど
お酒の方には葉っぱを、漬物には花の部分使ってるんやわ。
どっちも同じ樹から取ったもんやし、風味に違和感ないやろ?』
「ああ、なるほどお。
(サクサク、ぐびぐびぐび)・・・うんうん。
これは良いですねえ~~」
『わはは、気に入ってもらった様で何よりやわ。
まだ、たくさん有るから、帰りに瓶に詰めて持って帰ってなー。
漬物も、お湯漬けにしてお茶みたいに飲んでも美味いんやで?』
「ほおおお? それはありがたいですねえ。
ぜひ、試してみたいですねえ」
この花びらの漬物でお茶ですかあ。
ホッと落ち着けそうな感じで良いですねえ。
凄く休憩時間に飲むのにもってこいじゃないですかあ。
・・・まあ、風流すぎて
あの、メス豚ヤロウには合わないでしょうけどねえ。
『わははは。
今日の宴会は、場所の提供や器材の準備とか
フォックスくんには結構動いてもらっとるしなー。
まー、それはそうとして。
フォックスくんはストレス溜まり易い仕事しとるしな。
たまには、こういう息抜きもええやろ?』
「はは・・・そう思ってもらえるのが
何よりもありがたい事ですよお」
(すたすたすたすた)
「まー、あなたの場合、仕事柄と言うか立場上。
住民からの苦情や要望と言う名の無茶振りを聞かされ続け。
上司を働かせる為には、言葉だけじゃ無理だから
飴に鞭にと、色んな手段を使って上司の尻を叩き続け。
さらには、各所で折衝も勤めないとならないですしねー。
いやはや、本当、ご苦労様な事ですわ~~」
「ははは・・・」
「何より、あのお嬢ちゃんの手綱を握るのが
一番大変そうだけどな」
「(がばっ)でしょお!?
トウタロウさんも、そう思いますよねえ!!?
そう思ってもらえますよねえ!!!!」
「(びくっ)お、おう・・・」
(ぶつぶつ)全く、あのメス豚ヤロウは
(ぶつぶつ)見習いだって事も加味しても
(ぶつぶつ)物覚えは悪いわ、理解力は悪いわ。
(ぶつぶつ)そのくせ勘だけは良いから、余計性質が悪い。
(ぶつぶつ)基本無視して要領だけで生きてるタイプは
(ぶつぶつ)これだから、本当にもう・・・。
(ぶつぶつ)父親のパパズさんは理論派だったのに
(ぶつぶつ)あの人から、どうしてこんな脳筋体質の娘が
(ぶつぶつ)ああ、母親の方か、そうですよねえ。
(ぶつぶつ)この町の数少ない理論派を王都に連れ去りやがって
(ぶつぶつ)そのせいで、私がどんだけしんどい思いを
(ぶつぶつ)本当、あの女あの女あの女あの女あの女・・・。
「うわぁ・・・」
『わははは。
フォックスくんも大変やな~。
それはそうと、ミケ、向こうの方はもうええんか?』
「え? あ、はい、ご主人様。
私が下ごしらえしなくちゃいけないような食材はもう無いので
あとは、手配してもらった町の料理人の方々で大丈夫ですわ」
「俺んとこの、タツマキ号とタイフウ号も
色々食えて喜んでるしなぁ」
『市場の人達から、果物とか豆とか芋とか色々貰っとるし
思う存分食べてもらったらええけど
馬は胃が小さいから一度にたくさん食われへんからなー。
お土産に色々貰っていったらええんちゃうか』
「まあ、お馬さんも
いつも乾草だけじゃ飽きるでしょうしねえ。
何でしたら落下して売り物にならない果物とか
定期的に貰える様に手配しましょうかあ?」
『おっ、フォックスくん復活したみたいやな。
しかし、それええな。
手間や無かったならお願いしてええか?』
「おお? それはありがたいけどよぅ、いいのか?」
「ええ、トウタロウさんの所の馬車や
牛用の曳き車には町の皆がお世話になってますんでねえ。
お安い御用ですよお」
「そういえば、馬って、レタスは大丈夫なのに
キャベツは駄目なんですよね~」
「え? そうなんですかあ?
キャベツとレタスって似た様なものなんじゃあ?」
『いや、レタスとキャベツは別もんやで?
キャベツはアブラナのお仲間でな。
ブロッコリーとかアスパラなんかもそうやけど、あの系統って
お腹にガスが溜まり易くなるから、馬には良くないんや。
他に、消化の悪い野菜や果物の芯とか種とかもアカンっぽいで?
せやから、果物上げる時は芯抜いてからあげた方がええわ』
「あぁ、そりゃ駄目だ。
【疝痛】起こしやすくなんのはまずいなぁ。
じゃあ今度からは、そこら辺も気をつけてやらねえとなぁ」
「へえ・・・それは知りませんでしたねえ。
ちなみにレタスって何の仲間なんですかあ?」
『レタスはキクのお仲間やな。
最後まで育ててみたらわかるけど、小さいタンポポみたいな
可愛らしい黄色い花がたくさん咲くんやで。
んで、咲き終わったら綿毛になる』
「野菜の花って、素朴で可愛らしい系の花が多いですよねー。
まるでミケのような!! ミケのような!!!
ね!? ご主人様~~!!!(だきっ! すりすりすり)」
はは、相変わらず仲の良い主従ですねえ。
まあ・・・、ミケニャンさんも
どんな経緯があったかは知りませんけど
これ程の人が主人だったら仕え甲斐があるでしょうねえええ。
『わはは、離せ(がしっ、ぎりぎりぎりぎり)』
「ぐぬぬ、い~や~で~す~(ぎゅー、すりすりすり)」
「・・・・・・おやあ?」




