131 冒険者Aさんとここは宴会会場
あらすじ:餓えた獣は以下略。
視点:タンゴの町 町長 ゼーロさん
『』:アルファさん
「うるぁああああああああ!!!!
わたしのごはんはどこなのぉおおおおおお!!??」
「あー、はいはい。
あなた達、大食いさん達は別枠で用意してますからねー。
ほら、あっちのワンさんの前のテーブルがそうですわよー」
「ふぁああああああああ!!!!!!!」
(ドドドドドドドドドド)
「ぎゃーーーー!? 何か来たーーーー!!?」
・・・あやつは何をしとるんじゃ。
まったく、誰に似たんじゃろ・・・。
あ、いや、せがれの嫁じゃな。
あの自分の欲望に正直すぎる所とか
考えるまでも無く、あの騎士のお嬢ちゃんじゃわ。
(ザワザワザワ、ワイワイワイ)
「何のお祝いかわからないけど、かんぱーい!!」
「とにかくめでたいみたいだし、ばんざーい! かんぱーい!」
「おめでとー! ママー、何のお祝いなの?」
・・・ひょっとして、この会場におるやつらの大半は
何の祝いかわかっとらんのじゃないか?
いや、ワシはちゃんと何の祝いかぐらいは聞いとるぞ。
宴会の許可ついでに、ちゃんと招待された身じゃしな。
それにしても、アルファの坊主も、屋台広場を借りきって
出店しとるやつらを臨時で全員雇うとか豪気な事するのう。
まあ、今日の稼ぎ予定以上の賃金も払っとるみたいじゃし
手伝っとるやつらも納得しとるみたいじゃから
文句なんぞどこからも出んじゃろ。
何より、客は全員タダで飲み放題食い放題じゃものな。
・・・あ、いや、後日に今夜の事を知った他の奴らからは
文句出そうじゃな、特に市場の関係者とか。
あやつ、何だかんだと関わって、市場の連中と仲良いからのう。
(ザワッ、ドヨドヨドヨ)
「うわっ!? 何あれ! あれも食べれるの?」
「でけえ!! あれって・・・何の頭なんだ?」
「(ばっ!)はあーはっはっはーー!!
超小型ではありますけれど、これこそ、【ドラゴン】の頭ですわ!
さあ! お集まりの皆さん! 滅多に食べれない希少品!
ご主人様に感謝して食すと良いですわー!!!」
(ザワワワワワッ!!)
何じゃとっ!? 色々食材を放出するとは聞いたが
あやつ、そんな食材まで!?
幾らなんでも大盤振る舞いすぎるじゃろ!!!
・・・はっ!? いかん! ワシも並ばなくては!!
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
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▽
(ポンポン)ふい~、食ったのう。
さすがに、あのでかい頭の丸焼きも
これだけの人数で食ったらあっという間じゃったな。
・・・にしても、美味かったのう。
ただ単に【ドラゴン】の頭を丸焼きした物かと思ったんじゃが
幾ら【ドラゴン肉】にしても、肉が芳醇すぎるじゃろ。
多分、何かの酒とか、果物に漬け込んどったんじゃろうな。
口に入れる前から、匂いで涎が止まらんとか初めてじゃわい。
しかも齧り付いた瞬間、肉の脂と肉汁が口の中に溢れよる。
そのくせ、肉自体はしっかり肉としての味がしとったわ。
ワシも、超小型の物なら、開拓時代に1度食っとるが
あんなに美味くなかったぞ?
しっかり下準備して、調理した【ドラゴン肉】ってのは
あれほど美味かったんじゃなあ、知らんかったわ。
(ワイワイワイワイ)
「わあ! おいしかったね! お父さん、お母さん!」
「そうねえ、お母さんもあんなに美味しいお肉は初めてよ」
「お父さんも初めてだよ!
う~ん、それにしてもお肉も美味しかったけど
お父さんは、あのパリッとした歯ざわりも好きだな!」
「あ、そうだ、アルファさん。
あの表面に塗る方法って他の肉料理でもいけますか?」
『おー、いけるでー?
鶏でもええし、豚とかもよー合うなー。
せやな、ワンくんとこの材料まだあるやろ?
何やったら、豚肉の塊でやってみよか。
焼き方にちょっとコツがあんねんな』
「本当ですか!? やったぜい!!」
「むむ、今日は{肉がメイン}で動きそうにないですね。
残念ですが、僕は調理法だけでも糧にしますか」
・・・ああ、やっぱり表面に何か塗っとったんじゃな。
確かに、肉自体も肉から溢れる脂も汁も美味かった。
じゃが逆に、あれほどの脂や汁をどうやって閉じ込めたのか
それが不思議じゃったんじゃよな。
どれどれ! ワシも聞かせてもらおうじゃないか。
いや、ワシも、伊達に開拓時代を生き抜いとらんからのう。
何だかんだで、獲物の丸焼きには慣れ親しんどるんじゃが
その分、驚きじゃったんじゃよなあ。
・・・・・・ほう、そのタレを塗るのか?
ぬ? 砂糖と酢と酒を溶かしたもの?
それなら、普通に売ってる物で揃えられそうじゃな。
ふむ、肉の塊を二又に刺して、そこにタレを塗るのか?
『うんにゃ、タレの前になー。
(シュンシュンシュン)この熱々の沸騰したお湯を~
こうやっ!!(ブシャーーーーシュワワワ)』
「えっ!? 焼くのにお湯かけるんですかっ!?
わわわっ、しかもそんなたっぷりと!?」
「ん? 何かふわっと香りが・・・」
『お! ツーくん、正解や。
ちなみに、これには、ちょっとお酒入れとる。
その方が、香りもつくし、水分の蒸発も早いしな。
軽く湯通ししとくと、ぬめりやら、臭味やら余計な脂飛ばして
身がキュッと締まるから中の旨みとか汁気とか閉じ込められるんや。
これは、魚でも同じやから、ツーくんも試してみたらええ。
煮物とか、この一手間加えるだけで、結構違うもんやで?』
「湯通し・・・はい! 後で早速やってみます!」
ほほう・・・それは知らんかったのう。
ワシもやってみよう。
ふむ、熱湯ぶっかけた後に水分を拭いて
・・・おお! そこで塗るのか。
『後は、全体的に同じ感じに火が通る様に(ひょいひょい)
こんな風に弱火でくるくる回して焼くんや。
強火やないと中まで火が通らんとか勘違いしがちやけど
むしろ、逆やからな?
中まで火を通す為にも{弱火でじっくり!}が原則や。
表面の焼き目は最後だけ強火にすればええ。
そうすれば、中はしっとり、外はパリッとなるでー。
そしたら、焼くのは、後はワンくんに任せとくな』
「「なるほど!」」
・・・・・・そうか、逆じゃったか。
いや、弱火じゃと焼けてるか心配になるじゃろ?
・・・時間かかるし。
『そこら辺なー。
実は、どんな料理でも基本やねんけど。
{じっくりなんて待ってられへん!}って感じに
せっかちな人ほど強火にしたがるんやわー。
で、中は半生、外だけコゲコゲな残念料理に・・・』
「「なるほど!!!」」
「(むかっ)誰が残念料理じゃ!!」
「「『は?』」」
・・・おっと、いかんいかん。
つい口を挟んでしもうたわい。
ワシはせっかちじゃないから大丈夫。
うむ、大丈夫じゃ、残念料理じゃないぞ?
(すたすたすたすた)
「おお、やっとるのう!
ふむふむ、良い匂いがするな!」
「何じゃい、トロット。
お前、今頃来たのか?
一足遅かったのう、メインのご馳走はもう無いぞ?」
「ん? そうなのか?
今、目の前で美味そうなのを焼いとるじゃないか!
ほれ、小僧! 何作っとるのか知らんが
ワシの為にも頑張って焼いてくれよ!」
「あっ! 私も欲しい!」
「ぼくもぼくも!」
『わはは。
頑張ってなー、ワンくん』
「ういっす!!」
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(パキッ、バチッ、ボボボボボ)
「うーむ、食った食ったー。
こんだけ食ったのは、いつ振りじゃろうなあ。
ワシもまだまだ衰えておらんかったんじゃな」
「ふーむ、来ておった住民の大半も帰ったし。
そろそろ、丸焼きに使った焚き火も消すかのう。
アルファの坊主達も帰ったし、
今日はさすがにこれでお開きでいいじゃろ」
(がっふがっふがっふがっふ)
「おかわり!!」
「ええっ!? えぐえぐ、わ、わかりましたぁ」
「・・・・・・」
「・・・おい。
お前んとこの孫娘、まだ食っとるぞ。
どうなっとるんだ?
ワンの小僧が疲れて半泣きになっとるぞ」
「言うな。
ワシは何も見んかった。
お前も気にせんでいい」




