126 冒険者Aさんと素材鮮度のお話
あらすじ:魔物大好き、マモスキーという商品も販売してます。
視点:最近は普通に一緒のお風呂でご機嫌 ミケニャンさん
『』:アルファさん
(ザッパーーーーーーーーン)
「あ”あ”あ”あ”あ”~~~~~~」
『う”ぃ”い”い”い”~~~~~~』
「やれやれ、年寄りくせぇ主従だぜ。
・・・・・・あ”あ”あ”あ”あ”~~」
(ザバザバ)
「おやっさん、あなたも同じじゃないですか」
「へへっ、そうだな、違ぇねえや!
こいつぁ、思わず声が出ちまうぜ。
ふぃぃいいいい・・・染みるなぁ・・・・・・」
(バッシャバッシャ)
「きょ、今日のお風呂のお湯は色が付いてるんだな。
緑色で・・・少しとろみが付いてて・・・
何か入ってるんだか?」
「これは良いお湯ですね!(ぷかぷかー)
芯からじわっと温まる感じで・・・
まるで【フソウ】の温泉に入ってるみたいですよ!」
「(ジャブッ)・・・温泉・・・成分?(じーーー)」
「あれ、ユキさん?
お湯を眺めてどうしたんですか? うおっ」
・・・ふーむ・・・さすが調合関連は気になるみたいですね。
そうですよ? ユキさんが気になった通り。
このお湯に入れた入浴剤はちょっと特殊な物なんです。
『わははは。
まー、ユキにはやっぱ気になるかー。
それな、{モンスター素材由来の入浴剤}なんやわ』
「モンスター素材由来・・・ですか?
とろみは【グリーンスライム】のふんまちゅ・・・
・・・えっと、粉末ですよね?」
「・・・!!(かんだ兄上もかわいい!)」
「・・・!!(かんだユキちゃんもかわいい!)」
「えっ? 【グリーンスライム】って
近くの森にたまに湧くアレですか?
Fランクでも狩れる程度の強さの」
「アレって、他の【スライム】に比べたら
液体より個体って感じだったよね?
すっごいポヨンポヨン弾んでだの覚えてるよ」
『せやな、それやで。
実は【グリーンスライム】ってな、【スライム】の中やと
唯一・・・かどうかはともかく草食性やねんなー』
「確か、薬草や食用の野草とか山菜が好物なんですよね?
だから、たまに{E・Fランク推奨}として
{討伐クエスト}出てるんで、私も受けた事有りますよ」
「山菜等はともかく、薬草まで食べられると困るんですよね。
だから、適度に狩る必要があるわけなんですよ。
何より、味を占めて町まで近寄ってきたら
町で育ててる薬草や畑にまで被害出ますしねー」
(チャプン、チャプン、ザバーーー)
「・・・あれ? でもアルファさん。
【グリーンスライム】って、核を壊したら
直ぐにドロドロに溶けて、土に染み込んでしまうんじゃ?
壊した核だけが残るから、討伐の証として
核を回収して、ギルドに納品するんですよね?
粉末って、核を粉末にするんですか?」
「えっと、モブコさん。
実は材料になるのは、核ではなく溶けてしまう体の方なんですよ。
核を壊す前に、体を切り取って容器に保管するんです。
その状態なら、核を壊しても、切り取った部分が入手できます。
粘度の高い緑色の液体なんですけど
傷薬や中和剤の原料として結構需要があるんですよ?」
「おっ! さすがにユキさんは、その辺りちゃんと知ってましたか。
モブ子ちゃん、今度ギルドに行った時にでも
納品用リストを見せてもらったら良いですよ。
ちゃんと載ってるはずなので。
・・・ちなみに、なかなかの買取価格なんですよ?
実際、【ドラント王国】のギルドとかだと
小瓶1本で、1日の宿代とご飯代賄えるぐらいは貰えますから
{初心者の心強い味方!}とか{これで脱初心者!}って言う程
人気の納品素材になってるんです」
「・・・えええ!? し、知らなかったです!!
それ知ってたら、もっと楽に・・・うう・・・」
「ま、まあ、落ち込まないでよ、モブコ。
でも、そっか、それ知ってたらアタシも・・・」
『・・・・・・(ほほう?)』
おっと? ご主人様も気がつかれたご様子ですけど。
やはり、思った通りライスちゃん。
モブ子ちゃんのご活躍も見てるだけに
期待できるかも・・・ですわね?
「それで、お師様。
入浴剤の話に戻らせて頂きますけど
【グリーンスライムの粉末】以外は
どのような物が使われているのですか?」
『他かー? せやなー。
【ガーゴイルの塩】と【火竜の火炎袋液】が入っとるな。
その3つを軽く煮込んで冷ましたら出来上がりや。
出来上がった物って、カッチコッチの塊になるから
皮袋に入れて保存しとってなー。
そのまんまでもええんやけど、小型ハンマーで砕いて
粉にしてからお湯に溶かすと、よく溶け込むんやでー?』
(ザババッ!!!!)
「が、【ガーゴイル】の・・・し、塩? えっ!?」
「か、【火竜】!?
そ、そ、そ、それって・・・ド、【ドラゴン】!?
あの空の王者って言われてる!?
伝説級のモンスターの!!?」
「ほおー、何かしらねえけど、すごそうだなぁ!
それよりも姉ちゃん達、ちぃったぁ落ち着きなあー。
風呂はゆったり入るもんだぜぃ?」
「「あ、はい、ごめんなさい」」
(ジャブンジャブン、ザバーー)
「アルさん、ボクは図鑑でしか、よく知らないんですけど
【ガーゴイル】って、石のモンスターなんですよね?
ダンジョンとかの門番によく使われてるって
図鑑には書いてました、うおっ」
『せやでー・・・、あ! 丁度ええなー。
言いそびれとった、素材の{鮮度}にも関係しとるし
合わせて話とこっかー』
「え?{鮮度}?
【ガーゴイル】って石像ですよね?」
「そうですよー。
分類ではモンスター扱いされてますけど
アレって、実は人工物なんですよね。
ちなみに皆さん、見たり戦ったりしたご経験は?
あっ! チヨさん以外でですわよ?」
「さすがにないです」
「私は1度だけ」
「アタシは当然ないです」
「ボクはないです、うおっ」
「あ、あ、あの・・・小型の物なら・・・」
「お、おでは見た事はあるんだな」
「「ないでござる!」」
(ザバーーーーーー)
「(ポタポタ)ふむふむ!
ユキ君とサクちゃんは戦闘経験も有りで
見た事があるのが1名ですね!(ばよよよ~ん)
ちなみに、どのような状況で?」
「あ、あの、わ、わたしは里の訓練で
こ、小型の【傀儡石人形】と・・・」
「なるほどなるほど!(たわんたわわん)
確かに、【忍】の戦闘訓練では
【式神】や【傀儡】等はよく使われますからね!」
「私は母上に連れられて、悪霊退治に赴いた際に。
狛犬が変化した物と・・・」
「ああ! そういうのもありますね!(ぶるんぶるん)
悪霊や悪魔が憑依して動かすパターンですか!」
「(そわそわ)お、お、おでは、前に働いていた所が
そ、その、商隊だったんだな。
(そわそわ)んなもんで、金庫の夜番に使っていたのを
み、見た事があるんだな(あたふた)」
「おお! 本来の使い方ですね!
大事な物を守る為の守護者!(たっぷん)
なるほどなるほど!」
(ザブーーーン)
・・・チヨさん、何で急に立ち上がったんでしょうかね?
まあ、割と勢いで生きてるっぽい人ですし
深い意味は無いと思うんですけど。
もう、それだけで、ばいんばいんがたわんたわんしちゃって
どたぷんしちゃうもんですから、純朴なローなんて
真っ赤になって慌てふためいちゃってるじゃないですか。
やれやれですねー。
『ええかー? モンスターってのはなー。
大半は、死んだ直後から変質していくもんなんや。
例えば【グリーンスライム】やったら、溶けて消える。
【ガーゴイル】やったら、風化して塵芥になる。
【火竜】なんかは、体が燃えて、最後は炭化する』
「変わらないのも居ますけど、野生の獣とかと比べると
何かしらが急激な変質を起こすんですよ。
まあ、深く考えず、そういう性質なんだと思って下さいな」
「な、なるほど・・・えっと、ちなみになんですけど。
今回の【ノール】はどんな風に変わるんですか? うおっ」
『おっ! ええ質問やな、サバミソ。
【ノール】はな・・・縮む』
「ち、縮む? ・・・ですか? うおっ」
『せやでー。
段々と、皮も肉も骨も縮んでって、血までもが凝固する。
最終的には干からびたみたいにカッチコッチの死体ができる。
・・・ただし、30分以内に剥ぎ取りせんと
そのまま放置したら・・・の場合やけどなー』
「えっ? でも今日のは別に・・・」
「それはですね、皆さんが剥ぎ取りする前に
ご主人様とミケで、血抜きしておいたからです。
【ノール】が縮んで固まるのは血が原因なんですよ」
『ちなみに、血は血で使い道あるから保管してるんやけどなー。
ま、そんな感じで、【ガーゴイル】の場合やったら
核を壊す前に、腕でも足でもええから切り離しとくんやわ。
そうするとなー、核を壊した途端
切り離した部分が段々と塩の塊に変わってくねん』
「ほわー・・・そんな風になるんですか。
面白いですね! ボクすごく興味深いです! うおっ」
(ザバー!)
「(ぎゅっ!)でしょう!? 面白いですよね?
サバミソ君も調合の道を学んでみませんか!?
はは・・・私の周りには理解してくれる人が少なくて・・・」
「・・・え? 周りの人・・・(ちらっ)」
(ザッバーン)
「拙者にはよくわからないけど、凄いんでござるな兄上!
それはともかく、拙者もぎゅってしてほしいでござる!」
(ザッバーーーン!)
「なるほど! 不思議な事が起こったんでござるな!?
・・・ふっ、シゲちゃん。
そういうのは、この一言で解決でござるよー。
ユキちゃんユキちゃん、お姉ちゃんにもぎゅっと!!
さあ! 遠慮せずに!!!(はあはあ)」
「・・・あっ・・・はい、うおっ」
『ちなみに、塊状が石ころ状に、石ころ状が豆粒に
豆粒が砂粒にって感じで、時間と共にどんどん細かくなってな
最終的には小麦粉ぐらいの細かさまで細かくなってまうから
さっさと回収せんとアカンのやわー』
「その辺りがご主人様のおっしゃってた{鮮度}って事ですよ。
ちなみに【火竜の火炎袋液】とかも似た様な物でしてね。
元々が火を噴く為の燃料って事もあって、着火しやすい上に
高温で気化しちゃいますからねー。
死ぬと体が燃えだすって【火竜】の性質上
いかに早く、必要な素材を剥ぎ取れるかが勝負なのですよ」
実際の所、【ドラゴン】系ってすっごい面倒臭いんですよねー。
空飛ぶ上、バカみたいに防御力も体力も高いし。
しかも、無機物系みたいに核が無い奴がほとんどだから
死んだかどうだか、判断つきにくいんですよ。
特にちょっと長生きしてる奴なんかだと、無駄に小賢しくて
死んだ振りからの奇襲や逃亡とか平気でしますしねー。
『・・・てな感じやな。
素材狙いでモンスターを倒す時は
そこら辺の事前知識が大事っちゅう事や。
後は、倒す前に素材奪取する手順も話し合っておくんやで?
でないと、いつまで経っても素材入手できんと
無駄に何匹も倒さんとアカン~、みたいな事になるからな~』
(チャプンチャプン)
「・・・・・・モブコ」
「・・・うん、すごく身に覚えあるね、ライス」




