124 冒険者Aさんと一部で人気の缶詰
あらすじ:万能の不思議植物、薬草で全て解決です。
視点:タンゴの町 馬車工房 トウタロウさん
『』:アルファさん
(ガショーン、ガラガラガラガラ)
『ほいっ(ガッ、シュパーーーン)』
「はいっ(ガッ、ひょいっ)」
(ガショーン、ガラガラガラガラ)
『ほいっ(ガッ、シュパーーーン)』
「はいっ(ガッ、ひょいっ)」
(ガショーン、ガラガラガラガラ)
「・・・相変わらずの手際してやがんなぁ」
蓋をして【コモンスキル】の【閉封】で封をする。
そして、ポンポコ娘が持ち上げて馬車に積み込んでいく。
言葉にすりゃ、簡単そうだけどなぁ。
あの蓋の内側には、術式を刻んであるんだよなぁ。
しかも{保冷}{防腐}{防臭}の3つも組み込んでやがる。
俺も専門家じゃねえから、そこまで詳しくはねえけど
3つも【付与術】重ねた代物の上に
更に重ねてスキルで封をするってのが
どんだけ変態的な・・・げふんげふん。
あ~~~、いや、職人的な所業かぐらいは
さすがに分かるってもんだぜ。
(ガショーン、ガラガラガラガラ)
「(じろっ)・・・まさかとは思いますけど
今、ご主人様に対して不遜な考えを・・・」
「・・・何言ってやがんでぃ。
てぇしたもんだと感心してたんじゃねえか」
まったく・・・このポンポコ娘も油断ならねえなぁ。
能力なのか、只の直感なのかは分かんねえけど
たまに、見透かした様に心の中読んできやがる。
・・・にしても、相変わらずのバカ力してやがんなぁ。
子供の背丈程もある、でっけえ【聖鉄缶】に
あいつらが解体した残骸がたっぷり詰まってるんだぞ?
重さで言ったら大人2人・・・3人分ぐらいあるよな。
それを軽々と持ち上げて積み込んでやがる。
しかも、こいつにとっては朝飯前だからなぁ・・・。
へっ、さすがは【妖怪】を越えた【大妖怪】ってとこだな。
アルファの坊主に懐いてなかったらと思うと、ぞっとするぜ。
「むっふ~~~ん! そうでしょうそうでしょう!
ミケの凄さを改めて思い知りましたか!
そして、ミケのご主人様への忠誠は天元突破!!
いえ!? これこそまさに愛ですわ!!
とりゃっ(ぽいっ)」
(ガショーン、ガラガラガラガラ)
「でもお前ぇ、最初の頃って
いつも、坊主の寝首かこうとしてたよな?
何度か脱走もしてやがったし。
お前ぇらの喧嘩っていやぁ、町のちょっとした名物に・・・」
「は!? はあ~!? 何の事ですかあああ!?
ミケにはちいっとも覚えがありませんねええ!!!?
あなたの思い違いでやがりませんかねえ~~~!!!
・・・ふう、やれやれ~。(ぶんぶん)
これだから趣味に生きてる隠居じじぃは困りますわ~~~」
「ばっきゃろう! だれが隠居じじぃだ!?
俺はまだ、じじぃなんて呼ばれる程、老いちゃいねぇよ!」
「「ぐぬぬぬぬぬぬ!!!!」」
『ほれほれ、2人共そんくらいにしとき。
ミケも遊んどらんと、さっさと終わらせんでー?』
「(くるぅり)もちろんですよ! ご主人様!!
ミケに万事お任せ下さい!!」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
「あ、アルさん。
あの積み込んだ缶って商品なのかな?」
『おっ? ロバやんは商隊で働いとっただけに
さすがに気になるみたいやなー』
「あ、私も気になります。
あの缶の中身って、さっき剥ぎ取った残骸ですよね?
そんなのが商品になるんですか?」
ほう? 気にする奴が居たか。
・・・ま、普通は気になるわな。
残骸とか普通は廃棄する物だしな。
そんなもん、普通の商人は買い取ってくれねえし
ギルドだって、引き取ってくれねえ。
当たり前の話だよな、言っちまえばゴミだしな。
「それがですね、商品になるんですよ~。
【マモッシグラ】って聞いた事ないですか?
これが中々の人気商品なんですよ~?
予約で入荷待ちができるぐらいに」
「う、うーん? うおっ」
「ま、【マモッシグラ】・・・ですか?
私は聞いた事無いです」
「まも・・・ん・・・?
アタシ、何かで聞いた事あるような?
って言うか、どっかで、その名前見た事ある様な?」
「拙者は知らないでござる!!」
「せ、拙者もっ!!!」
「・・・まあ、あなた達、残念姉弟には期待してませんので」
「お、おでは少し聞いた事あるんだな。
た、確か、【冒険者ギルド】に需要があった気がするんだな。
後は、さ、サーカス団とかが欲しがってたような?」
「えっ、ギルド? そして、何故サーカス団?」
『おっ! すごいやんロバやん。
正解やで、よー覚えとったなー。
正式名称はな【魔物まっしぐら新鮮缶】ってゆーんやけど
【マモッシグラ】はその省略した呼び方やな』
「ま、魔物・・・まっしぐら・・・でござるか?」
「ギルド? ギルド・・・・・・あっ!!!」
「えっ!? ライス知ってるの?」
「ほら! 覚えてない? モブコ。
王都で、ギルド公認のアイテムショップ。
{魔物の滋養補給に最適! 魔物寄せにも使えます!}って
広告が貼ってあったじゃない。
うん、アタシ完全に思い出したわ。
あそこに、その大きい缶詰置いてたのも見たよ」
「えっ!? そ、そうだっけ?」
「そうだよ! それで、小袋に小分け販売もしてて。
あれ? 本当に覚えてない?」
「・・・・・・あっ!?
そうだ! そうだよ! 思い出したよ!
それで、その1杯分がアタシ達のご飯より高いって
皆で嘆いてたんだよ!」
「そうそう! あの時のアタシ達って
今と比べ物にならないほど、ド貧乏だったから
いつもおなか空かせてたわよねー! にひひひひ!」
「・・・な、何か切ない覚え方してますわね。
まあ、その割りに悲壮感が感じられませんのは
評価高いですけどねー」
「・・・・・・うん! やっぱり知らんでござる!
ふーむ、【冒険者ギルド】で見たござるか。
うんうん、ギルドならば【フソウ】に居た拙者達が
知らなくても仕方ないでござるな!」
「・・・あ、姉上。
拙者も今の話で思い出したでござるが。
その商品、【行者組合】でも売ってるでござる。
・・・売ってますよね? 母上」
「ええ、そうよ~。
・・・でもね、シゲちゃん?
{【行者組合】でも}じゃなくて、あっちが大元なのよ?
そもそも、【聖鉄缶】も、缶に使用してる【付与術】も
全部【フソウ】の技術なのよ~?」
「えっ!?」
「あははは! シゲちゃん! 精進が足りんでござるよ!」
「(ごごごごごごごご)あらあら、クニちゃん?
何、人事みたいに笑ってるの~?
あなたは色々足りなさ過ぎるわね~
お母さん心配なので、帰ったらお勉強で~~~す」
「が、ガーーーン・・・でござる(がっくり)」
・・・俺はユキ君しか面識が無ぇけど。
本当に、あの切れ者夫婦の娘・・・なんだよな?
何がとは言わねえけど、あまりもお粗末・・・。
ま、生まれがどうのよりも、育ちが大事って事だな。




