116 冒険者Aさんと冒険者の心得
あらすじ:おっさんは面倒臭い相手の名前は、覚える気が無いらしいです。
視点:Eランク冒険者 ソーサラー Lv2 サーバクン・ミーソットさん
『』:アルファさん
「(ぴくっぴくっ)・・・おっと、向こうも始まってますね。
さて、そんな感じで、こういう場合は半包囲で良いんですのよ。
分かりましたか? サバミソ」
・・・えっと、半包囲にして、わざと相手の退路を空けておく。
すると、相手は{いつでも逃げれられる}と少し安心してしまうから
{初手で全員で脱出}はまず考えない。
そして、攻めてくる所に対して、中途半端に戦力を投入してくる。
この場合は、アルファさん達にだよね?
・・・これって、逆の立場になってみたら
包囲してる相手は攻撃してこないので
攻撃してくる相手にだけ反撃すれば良いと思っちゃう。
偵察が帰ってこなくて、包囲してる相手の人数分からないしね。
それで、うまく撃退できれば、逃げなくて済むし。
でも、万が一を考えたら、全員で撃退しに行くわけにもいかない。
だって、{いつでも逃げられる}のが見えてるんだもの・・・。
結局、そうやって、ずるずると戦力を無駄にしちゃって
気付いた時には・・・うわぁ・・・。
「(ぼそっ)・・・何か、追い込み漁みたい、うおっ」
「おっ!? 良い例えですね、サバミソ。
実際、似た様なモノなんですよ。
今回は、絶対殲滅させなきゃ駄目な訳でも無いので
残り僅かになって、逃げだした場合はですね?
そのまま、半包囲の穴から逃がしてあげるつもりなんですよ。
ですけど、完全に殲滅する場合なら
その穴を仕掛けの入り口にできるんですよ?」
「穴が仕掛けの入り口・・・あっ!? うおっ」
「おっ! 気付きましたね、良いですよ良いですよ~」
つまり、穴の先で包囲して待ってたら、逃げ場無し。
それって、本当に追い込み漁じゃないですかー。
・・・それにしても、ギリギリまで油断させておいて
警戒し始めた時には、もう手遅れの状態に先回り。
うーん・・・海の生物が獲物を獲る時に
疑似餌でおびき寄せたり、保護色や砂の中に隠れたり
そんな、待ち構える手段を使うのは、よく聞くけど。
わざと逃がした先で追い込むとか、あまり聞かないかな。
全く居ない訳でも無いけど。
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「(ぴくっぴくっ)さて、ご主人様達のおかげで
もう、残り3・4匹ってとこですね。
頃合としては、そろそろ逃げるかな?」
「結局、こちらへは全然来なかったですね、うおっ」
「まー、相手は元々手負いの群れでしたからねー。
危険も無く、楽勝で終わるならそれでいいんですよ」
「は、はい・・・そうですよね、うおっ」
う、うん・・・何だろう・・・物足りない?
それとも、がっかりしてる? ・・・のかな?
何かすっきりしない。
何でかな?
せっかく、アルさん達に訓練つけてもらったのに
あんまり発揮する機会が無かったから?
・・・・・・うーーーーーーーん?
「(げらげらげら)それはですね、サバミソ。
すっきりしないのは、達成感が無いからですよ」
「達成感・・・ですか? うおっ」
「そうですよ~?
だって、今回の{討伐クエスト}って
事前の調査からここまでの道程、作戦に至るまで
ミケとご主人様でやっちゃってますからねー。
他の皆さんの目的って、モンスターを討伐して
剥ぎ取りするぐらいしか無いんですわ」
「目的・・・・・・? うおっ」
「(ふふふっ)そうですよ~。
どうやら、あなたも{冒険の醍醐味}って言うのを
感じられる様になってきたって事ですよ」
「ぼ、冒険の・・・醍醐味・・・あっ!? うおっ!!」
あ・・・そ、そうだ・・・。
ボクとローさんだけで{採取クエスト}に行った時。
モブコさんも加わって{討伐クエスト}に行った時。
可能な限り、事前に調べて、聞いて、準備して。
クエスト中も、色々話し合って、迷って、失敗して。
そして、成功して、無事に帰ってこれた時の達成感。
ボク達はまだ、低い難易度のクエストしか受けれないけど
それでも、色々と、達成した実感って感じていたんだ。
「良い傾向ですわ、サバミソ。
これからも、その気持ちを忘れちゃ駄目ですよ~?
それを忘れない限り、【冒険者】を名乗っても
恥ずかしく無いですからねー」
「・・・え、えへへへ。
ぼ、ボクも【冒険者】になれたんですね!! うおっ」
「ぬっふっふっふ! ・・・まー、実際は?
ようやく【冒険者】の{ぼの字に踏み込んだ}って
程度なんですけどね!!」
「え、ええーーーっ!?」
「良いですかー? サバミソ。
内容に関わらず、冒険や旅の最中ってのは
一歩間違えるだけで、ポックリ逝っちゃうんです。
だから、慢心せずに、慎重さを忘れちゃ駄目ですよ!!」
「う、うん! 忘れない!! うおっ」
「この先、【冒険者】を続けていくなら
今回みたいな集団戦は、何度も経験する事になるでしょ。
まず、事前に、{対象の詳細}だけじゃなく
{集団の特性}も、可能な限り調べる事。
次は、その土地の{地形や特性}ね。
それらが分かるだけでも、作戦は立てられるから」
「う、うん・・・。
{対象と集団の情報}と{土地の情報}だね! うおっ」
「そうです!
どっかのバカ姉弟の様に、自分の能力を過信して
バカみたいに突っ込んでいくだけじゃ駄目ですよ~?
あと、相手の事情と状態まで知る事ができれば、さらに良いですね。
今回だったら{どこかで負けて落ち延びてきた}って事です。
でも、自分達で調べるのは無理な事も多いでしょ?」
「うん、ボクもローさんも
ミケ姉さんみたいに調べたりとかできないし、うおっ」
「そんな場合は、とりあえず【冒険者ギルド】に相談しなさい。
少なくとも、あのメガネさんは親身に相談乗ってくれるでしょうし
有料で調査依頼かけてもらう事もできますからねー。
例え、差額でクエスト報酬が僅かになったとしても
達成させる条件を、事前に少しでも多く揃えるんですよ?」
「はい! わかったよ、ミケ姉さん!
安全に! 確実に! だね? うおっ」
ううっ・・・嬉しいなっ!!(ぐすっ)
ミケ姉さんはボク達の事をこんなに考えてくれてるんだ!
アルさんにもずっとお世話になりっ放しだし・・・。
ボクはどうやったら恩返しできるかな。
何をすれば恩返しになるんだろう?
・・・・・・うーーーーん。
今はまだ、アルさん達に頼るしかないよね・・・。
それにしても、今日のミケ姉さん、特に格好良いなあ!
ベテランの風格っていうのかな!?
ボクもいつか、こんな風に・・・。
「ぬっふっふっふおっほーーーー!!!!!
そうでしょうそうでしょう!!
ミケの格の高さを再認識しちゃいましたか、サバミソぉ!!
さあ! 格好良いミケ姉さんと一緒に!
気合入れ直して、もう一頑張りしますわよぉおおお!!」
「うんっ!!! うおっ!!」




