11 冒険者Aさんと腹ペコ神の擁護
あらすじ:ねだれ、泣き落とせ、さすれば与えられん
視点:紡食の神 フンガーさん
『』:アルファさん
僕は元【暴食の神】のフンガー。
今は【紡食の神】フンガーとして
【使徒】であるエッセン姉さんと共生してる。
僕は、多分300年ほど前に、【ドラント王国】にある
{とある森}で誕生というか発生した【豊食の神】という存在。
何で多分かと言うと・・・僕、当時の記憶無いんですよね。
エッセン姉さんのおかげで{神格昇華}した事によって
初めて僕は{自意識}や{知能}と呼べる物が身に備わり
そのおかげで、自分がどういう存在で
何でそうなったかを理解できたんだ。
(そわそわそわ)
・・・急激に流れ込んでくるこの感じは
姉さんがエサ・・・じゃなくて・・・。
{ご飯を前にして、もう待ちきれない}ってとこかな?
今の僕になってから、唯一の【使徒】である姉さんとは
常に少し繋がっている。
【フソウ】でいう{背後霊}や{守護霊}っていうのかな?
あれに近い感じだと思うんだよね。
姉さんからこちらへの一方通行だけど
強い感情や思考なんかは流れ込んでくるし
集中すれば{同調}しなくても、ある程度の会話だってできる。
そうやって、僕は14年もの間、姉さんに寄り添いながら
外の知識や考え方を学び、{自意識}を育ててきた。
だから、僕にとっては恩人であり
母というか育ての親のようなものでもあるんだけど。
(ふしゅー!ふしゅー!!)
・・・そ、そうなんだけど、どうも、母というよりは姉。
それも{少し頼りない姉}ポジションだよね絶対。
そのせいで、僕はずっと姉さんって呼んできたんだけど
本人も何か喜んでるみたいだし、別にいいよね?
(そういえばあの時は、ロクロウのおじーさんも~・・・)
ひ・・ひいっ・・・!!!
ロ・・ロクロウっておじいさんの事思い出してるっ!?
・・・イタイイタイコワイコワイヤメテヤメテ!?
ヤダヤダヤダヤダオイカケテコナイデ!!
カコマナイデ、イタイイタイ、ヤメテガタガタブルブル。
(・・・あれ、何だっけ? お腹減りすぎて頭ふらふらするー)
!!? はっ・・・うぅ・・
14年経ってもまだトラウマものだよぉ。
当時って、せいぜい虫ぐらい? の自我しか無かったのに
あの時の記憶っていうか感覚は魂レベルで覚えてる。
うううう、忘れたいよぉ。
・・・・・・そういえば【暴食の神】って
元々は食料が豊富な森とそこに住む生き物達の
食欲と満腹から生まれた存在だったらしいんだよね。
【豊食の神】という豊穣を司る概念的な存在の【亜神】
まあ、その記憶があるわけじゃないんですけどね。
・・・以前にアルファさん達から聞いた話だと
【フソウ】では{物}から生まれた【九十九神】に
{噂話}や{怪談}から生まれた【妖怪】でしたっけ?
概念から生まれた【亜神】と同格の存在が
そこら中にたくさん居るらしいんだよね。
で、そういう存在が信仰を得たりして{神格昇華}すると
【神】としての存在に生まれ変わるんだって・・・。
【八百萬の神】って言われる程に
【亜神】や【神】という存在がごろごろいるとか
聞けば聞くほど【フソウ】ってかなり特殊な土地ですよね。
今、目の前でお料理してるミケニャンさんも
元々は【妖狸】っていう{狸の妖怪}で
そこからさらに昇華した【大妖狸】という存在らしいです。
ミケニャンさんは【亜神】以上【神】未満~って
言ってたけど、実際はどうなのかな・・・?
(じゅわわー・・・ごくり・・・良い匂いしてきた!!!)
でも、そうだよね・・・。
森に動物やモンスターしか居ないから
信仰どころか存在すら気付いてもらえない。
概念から生まれた存在は、認識される事が力の源。
結局、飢餓にも似た苦しみを300年続けた挙句
【豊食の神】は狂ってしまったんだよね、多分。
(ぐるるぐるるんるんぎゃおおおんぎゃおおおん)
そして、エッセン姉さんのお腹も飢餓を覚えて
狂った音を立ててる・・・が、我慢だよ姉さん。
・・・狂った【豊食の神】は、飢餓や苦しみから
手当たり次第に暴れまくり喰い散らかした結果
討伐隊が組まれるぐらいの知名度を得たんだよね。
でも、そのせいで【豊食の神】という概念は
【暴食の神】という別の概念に変化したんだよね。
・・・まあ、狂っちゃって{意識}も{思考能力}も
虫程度になっちゃったから、全然覚えてないんだけど
【豊食の神】だった時ってどれだけ自意識あったんだろう?
今思うと、狂わざるを得なかったのかもしれない。
今の僕だったら絶対に耐えれないよね・・・。
「(じゅるる)ハッハッハッハッ!(きゅるるるるるる)」
や!!? やめてよ、姉さん!
いくらなんでもそれは恥ずかしくない!?
それこそ{意識}とか{思考能力}とか存在してないよね!?
い、犬じゃないんだから、そんな・・・。
「はやく!はやく!(ぱたぱたぱた)」
・・・ええと、姉さんがすみません、アルファさん。
悪い人・・・悪いドワーフじゃないんです!!
付き合いの長いアルファさんもミケさんだったら
当然分かってもらえてますよね!?
「はっ!? ボッボクはワンコなんかじゃないよ!!」
討伐されて、存在が消え行く間際に
少しだけ{自意識}が宿ったらしい僕の為に!
心から同情してくれただけでなく!
「ボク、肉汁トマトの!!」
世の中のおいしいものを食べ歩く旅へと!
楽しいものが色々あるよと!!
一緒に連れて行ってあげると誘ってくれたんですよ!?
優しい心の持ち主なん・・・。
「はやく! はやく!!」
・・・で、です・・・よ?
ド、ドワーフっていう種族は
{人間の1.5倍~2倍ぐらいの長命種族}で30才で成人。
ね・・・姉さんは35才!
人間でいうと大体20才ぐらいです! 成人です!!
見た目はドワーフにしても少し幼目かもしれませんが
精神はすっかり大人な・・・。
(大丈夫! ボクは待てができる大人だから大丈・・・)
んですよ?
そう、大丈・・・。
(まだかな! まだかな!! まだかな!!!)
ぶーーーーー!!!!!!!?
(ぐーーーーぎゃおおおおおおおおおおおおん)
おお、もう・・・ (´;ω;`)ブワッ
・・・あ、【紡食の神】って神名は
アルファさんが付けてくれました。
{紡ぐ}って良い言葉ですよね、僕気に入ってます。




