102 冒険者Aさんと上同士の会話
あらすじ:丸1日看病してました
視点:冒険者ギルド 新サブギルドマスター マリ・ムトウさん
『』:アルファさん
「なるほどなるほど、それで予定を先延ばしにする代わりに
ミケニャン殿が偵察に出ているのでござるな?」
「おう、そうなんじゃ。
難易度としては{Dランク推奨}の{討伐クエスト}じゃし。
まだ発見だけで被害は出てないから緊急でも無いしのう」
「あらあら~。
まあ、そうね。
【ノール】って、大きいワンちゃんのモンスターだったかしら?
規模もそれほど大きくないみたいだし
それなら、それほど大事ではないのよね?」
「大きいワンちゃんて・・・ま、確かに見た目はでかい犬じゃな。
二本足で歩いて、武器も使ってくるがのう。
・・・元々、アルファのやつも、昨日の訓練前から
2・3日の習熟期間を取るかもとは言っておったしな。
偵察の結果次第ではあるんじゃが、ま、想定の範囲内じゃろ」
「それにしても、獣寄りのモンスターならば
扱いが面倒ではござらんか?
まだ、被害も出てないのでござろう?」
「いや、【ノール】は外見は獣寄りなんじゃが
生態は亜人寄りの【ゴブリン】や【オーク】とほぼ同じでな
駆除対象の方なんじゃわ」
「あら、そうなのね~」
それだったら、難易度が低目なのも納得かしら~?
獣寄りのモンスターは、警戒心も強いし
部族で完結してる事が多いから
人に対しても無害な事も多いのよね~。
場合によったら、友好的な種族も居るし
地域の生態系を担ってる事もあるし
それと知らずに絶滅危惧の植物を育ててたりもするから
単純に倒せば良いって訳じゃないものね。
それに、まだ被害が無いと言うなら
尚更、扱いが難しいし・・・。
それに比べて、亜人寄りのモンスターの場合は
敵愾心が強いし、積極的に人里とかを襲ってくるから
問答無用で討伐すれば良いので楽よね~。
「ふーむ・・・。
それにしても、アル殿も変わったでござるな。
丸くなったと言うか何と言うか」
「む? そう・・・なのか?
俺はこっちの大陸に出てからのあやつしか知らんのじゃが。
昔からあんな感じじゃったと思うぞ?」
「あら~、そうかしら?
私も最後に会ったのは、2年と半年ぐらい前ですけど
あまり変わった感じはしませんでしたわよ?
ミケちゃんともいつも通りで仲良さそうでしたし~」
「そうでござるか?
・・・・・・ん? え? 2年半前?
お、おい、マリ!?
拙者、それ聞いてないでござるが!?」
「それはそうよ、あなた~。
だって、私が会ったのは【行者組合】の関係で
【サッカイの港】に行った時に偶々ですし。
帰ってからその話をしようとしましたけど
あなた、出張の準備で忙しいって言って
全く聞いてくれなかったでしょ~?
聞いてないのは当たり前じゃなくて?
ねえ、違いまして?」
「え!? いや、その・・・」
「・・・キヘエさん、悪い事は言わんから
素直に奥さんに謝っといた方がよいぞ?
年寄りからの助言じゃわい」
「うふふ・・・そうよ、あなた?
この件は今夜にでもじっくりと・・・ね?」
「あ・・・は、はい」
でも、確かにそうかもしれないわね。
私はミケちゃんの【承認者】の件や
【行者組合】絡みもあって、接点が多かったし
個人的に【五十六商会】にお願いして
色々と取り寄せてもらってもいたから
平時のあの2人を見る機会多かったのよね。
ゲンゴロウは会うのも商会を利用するのも
お家や、仕事絡みでしかなかった訳だし
そう感じても、仕方が無いのかも・・・?
・・・・・・それにしても、懐かしいわね~。
アルファさんが【行者】をやっていた時には
まだ、ミケちゃんは【妖狸】で狸姿だったし
お風呂も苦手というか、嫌いだったから
傷だらけになって喧嘩しながらお風呂入れてたり
喧嘩しながら、ご飯の取り合いをしてたり
仕事内容の事で喧嘩してたり・・・。
かと思えば、木陰でミケちゃんを抱き枕にして
気持ち良さそうにお昼寝してるんだものね~。
しかも、ご近所の子供達まで面白がって
気軽に参加しちゃうものだから
当時は、ちょっとした名物になってたのよね~。
「まあ、それはともかくじゃ。
マリさんにはすまんが
ギルド内の強化、よろしく頼むわ。
俺ではここらが限界っぽいんじゃよなぁ」
「はは、何をおっしゃいますか
まだまだ、お若いでしょうに?」
「もちろんじゃ!
・・・いや、そういう事じゃなくてじゃな。
規模とノウハウの話なんじゃよ、問題は」
「・・・・・・そうですわね。
職員数も所属する冒険者数も、一定以上増えると
単純に手が足りなくなるだけでなく、それ以上に
指示系統や、求められる質も変わってきますからね~。
聞いていたお話ですと、その辺りに対応できるのが
現状でリマさんしか居ないようですし」
「そうなんじゃよ。
所属の冒険者数が急に増えてきたってのもあるんじゃが
とにかく、冒険者事情に詳しい中堅以上がおらんのじゃよ。
指示できるやつも他になぁ・・・困った事じゃわい。
今のままだと、リマの奴の負担が大きすぎるんじゃ」
「そういえば、アル殿も招致したと聞いておりますが
やはり、その目論見だったのでござるか?」
「うむ、半分ぐらいはそうじゃな。
アルファのやつも、色々と気にはかけてくれとるから
冒険者も職員も、一部はそれなりに育っとるな。
だが、どうしても冒険者の立場だと限度があるからのう。
個人的に他の用事も結構頼んでおるしな」
あ、あら~?
それなりと言うのが、どのぐらいかは分かりませんけど。
その辺りは実際に見てみるとしましょうか。
【冒険者ギルド】も【行者組合】も根本のシステムは
ほぼ同じですから、さほど問題は無いでしょうし。
・・・それにしても、私が言うのも何ですけど
こちらのギルド長は中々に大雑把な方のようね~。
ひょっとして、リマさんの負担が大きいのって・・・?
「そうですね~、ある程度の下地はできてそうですし
私は全体的に底上げしていけば良さそうですわね~」
「そうじゃな、そんな感じで、よろしく頼みますわい」
「それでは、今日はこの辺りでお開きでござるかな?
で、では、拙者は帰りに少し散策へ・・・」
「あらあら~・・・あ・な・た~?
先程伝えましたのに、もうお忘れになったんですの?
今夜はじっくりとお話がありますので」
「(がたがたがた)ひえっ!?」




